【小人は険を行いて以て幸を徼む】 これではアウエーでの成功は無理

植樹して5年後の桜(2015年5月大連)
日本発が中国に進出。しかし、成功するとは限らない。それどころか、時には、こっ酷い謗りを受けることも…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
胆大にして天を包む(胆大包天)
- 中国語:胆大包天 [ dǎn dà bāo tiān ]
- 出典:吟风阁杂剧·黄石婆授计逃关
- 意味:極めて大胆であること。度胸がある。大胆不敵である。
小人は険を行いて以て幸を徼む
- 中国語:小人行险以徼幸 [ xiǎo rén xíng xiǎn yǐ jiǎo xìng ]
- 出典:中庸
- 原文:君子居易以俟命,小人行险以徼幸(君子は易に居て以て命を俟ち、小人は険を行いて以て幸を徼む)
- 意味:君子は無理のない所にとどまり、天命を待つ。小人は険しい行為によってあてにならない幸福を求める。
徒労無益
- 中国語:徒劳无益 [ tú láo wú yì ]
- 出典:伐武冈林守进治要札子
- 意味:労働を行っても、何一つ利益やよい事が無いこと。
融会貫通(ゆうかいかんつう)
- 中国語:融会贯通 [ róng huì guàn tōng ]
- 出典:朱熹(答姜叔权)
- 意味:多方面の知識や道理を融合して理解を得ること。
冷嘲熱諷(れいちょうねっぷう)
- 中国語:冷嘲热讽 [ lěng cháo rè fěng ]
- 出典:袁枚(牍外余言)
- 意味:「冷嘲」は冷ややかに嘲笑すること。「熱諷」は熱烈な風刺や皮肉を言うこと。辛辣な嘲笑や風刺。素っ気なく鼻で笑い激しく皮肉ること。
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美味かった日本料理とは
日系企業の中国進出が右肩上がりで増加していた2000年頃、更なる促進を図るため中国から東京にやってきた当局者が日本側と会食の後、「今日の日本料理はとても美味しかった!」と。
しかし、日本側が招待したのは「高級中華料理店」だったのだそう。そんな話を人伝に聞いた。
日本人の味覚に合わせた中華料理は、件の中国人にとっては自国の料理とはとても思えないものであったのであろうか。そこで「冷嘲熱諷」になったのかも知れません。
中国に乗り込んだ
日本の、とある中華料理チェーン店大手が中国に乗り込んできたという話。それは2005年のこと。日本国内で多店舗展開を行っているとはいえ、中華料理の本家本元の中国に進出するとは何たる「胆大包天」、はてさて…
勤務先が近くであったこともあり、何度か食事に行きましたが、とにかく味が一定していなかった。察するに、月一で日本から社長が視察にやって来た時には、美味くなるが、暫くすると再び不味くなってしまう。その繰り返しであったように感じ、いつしか足が遠退いてしまった。
そして、10年持たずして中国から撤退の憂き目に遭うことになった。
現地では「日本発の中華料理」ということで、色眼鏡で見られたとしても、美味しければそれなりに繁盛すると思うのですが、残念でなりません。
繁盛店では
実は、日本の拙宅の近くに、中国・遼寧省瀋陽市出身のご夫婦が営む中国料理店があります。「中国・東北地方の家庭料理」というコンセプトで、オープンして既に10年以上。料理人も中国人ですが、日本人好みの味付けで美味い。ボリュームもなかなかのもの。地域の秋祭りにも参加するなど、「融会貫通」で日本に馴染んでいる街の人気店です。いつも多くの客で賑わっています。
日本発の中華料理店が中国に行くのと、中国発の中華料理店が日本に来るのと違いはありますが、事の成否のポイントは現地理解にあるというのが共通点ではなかろうか。
通用しなかった日本式
日本の某家電量販の雄が、瀋陽市に進出したのは2010年。オープン直後に現地に行ってみて驚いた。店内は照明がとても明るく、何より、商品陳列が日本式であった。各メーカーのテレビがずらりと並んでいるのだ。
というのも、中国の家電量販店では、商品単位ではなくメーカー単位にテレビや冷蔵庫などを陳列するのが普通。しかし、そこは商品種別に陳列していたのです。
当時の現地の人々は、例えば、テレビを買いたいときには、まずこの店に行き、映り具合や色合いなど品定めをし、その後、他の既存の国内量販店で少しでも安く買う。
消費者にとっては、そんな上手い利用方法が取れる。しかし、それでは顧客を横取りされるだけで「徒労無益」に終わるではないか。
案の定、その後も「明るい店内」は従業員ばかりが目立ち、お客は多くない状態が続きました。その後、2013年には「中国式」の陳列に改めたそうですが、結局、オープンして10年後、撤退することとなったようです。
アンラーンと勝算
業種は違えど、日本で成功した方式が、中国など習慣や考え方も異なる国外において、受け入れられるかわからない。まして、日本式を現地に押し付けることは論外です。
日本での成功体験は、時として邪魔にさえなる。そんなことにしがみついて離れられないのであれば、成功体験は失敗要因にすらなり得る。「アンラーン」が叫ばれる時代なのですから。
かと言って、現地に迎合する必要は無い。まずは、違いを乗り越えることに力点を置くべきだと考えます。現地理解を十分に行い、勝算を手にしておくことが成功の必要条件。
それを軽んじ、突き進むことは、「小人は険を行って以て幸を徼む」と、博打まがいのことに手を出すようなもので、「小人」の謗りを受けかねません。