【相安んじ事無し】 ハングル溢れる丹東の街 鴨緑江を臨み何を思う
大連から北東へ約300キロに位置する遼寧省丹東市。街中にはハングル文字の看板が目立ちます。それもそのはず、すぐそこを流れる鴨緑江は中朝国境。川の向こう側は北朝鮮なのです。街には朝鮮人参などの朝鮮食材専門店や朝鮮レストランもあり独特の雰囲気が漂っています。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
相安んじ事無し(相安無事)
- 中国語:相安无事 [ xiāng ān wú shì ]
- 出典:伯牙琴・吏道
- 意味:お互いに何のもめ事も無く平和に暮らすこと。
朝に発ち夕には至る(朝発夕至)
- 中国語:朝发夕至 [ zhāo fā xī zhì ]
- 出典:屈原(离骚)
- 意味:朝に出発し夜には着く。路程が遠くない、交通が便利であることの例え。
牽衣頓足(けんいとんそく)
- 中国語:牵衣顿足 [ qiān yī dùn zú ]
- 出典:杜甫(兵車行)
- 意味:非常につらい別れを惜しむことを形容した言葉。元は出征する兵士の家族が、兵士の服にすがり引き留め、足をばたばたさせて別れを悲しむとの意。
彰明較著(しょうめいこうちょ)
- 中国語:彰明较著 [ zhāng míng jiào zhù ]
- 出典:史记(伯夷列传)
- 意味:極めて明白である。顕著である。容易に読み取ることができる、との意。
龍行虎歩(りゅうこうこほ)
- 中国語:龙行虎步 [ lóng xíng hǔ bù ]
- 出典:宋書(武帝纪上)
- 意味:将軍の雄々しい姿のこと。立ち居振る舞いに威厳があって力強いことの例え。
記事:【相安んじ事無し】 ハングル溢れる丹東の街 鴨緑江を臨み何を思う
国境の街
大連から高速道路を飛ばして丹東まで約4時間。しかし、2015年に「高鉄(新幹線型の高速鉄道)」が開通し、旅程は2時間半となり随分便利になったものです。
遼寧省丹東市。国境の街・丹東の市街地人口は100万に満たない、中国の中では比較的小ぶりな都市です。
丹東駅に降り立つと駅前では巨大な毛沢東像が出迎えてくれます。「龍行虎歩」とも言うべきその姿。右手を上げているポーズですが、出征する兵士を激励をする姿であると、どこかで聞いたことがありますが定かではありません。
鴨緑江断橋と中朝友誼橋
鴨緑江断橋は1911年10月に完成した鉄道橋で、橋の中央部は船舶が通行できるように旋回する可動橋でした。朝鮮戦争中の1950年11月、米軍による爆撃によって橋梁の中央部から北朝鮮側が破壊されましたが、歴史的遺産として「丹東断橋」と称しそのまま保存されています。
中国側の橋上は遊歩道として整備されていて、鴨緑江の中ほどまで歩いて行くことができます。そして、断橋の先端には鉄橋の破壊痕が生々しく保存されています。
橋上には「抗美援朝」(米国に反撃し朝鮮を援助しよう!)などと書かれたボードが掲示されています。今では、多くの中国人が訪れる観光スポットとなっています。
そして、鴨緑江断橋の上流側に鴨緑江第二橋梁(全長約940m)が1943年に完成し、その後、名称が中朝友誼橋と定められました。
中国の丹東市と北朝鮮の新義州市を結んでいます。下流側を鉄道、上流側を道路が通る鉄道道路併用橋です。
両市は国境の川を挟んでいるとはいえ「朝発夕至」、とても近いのです。
ということで、丹東は中朝貿易最大の物流拠点。物資の7割以上がここを通過するそうです。ただ、北朝鮮を取り巻く情勢の変化によって中朝国境の往来が大きくぶれるようです。北朝鮮の最高指導者が中国を訪問する際にも列車でこの橋を渡ります。
鴨緑江燕窟鉄路橋跡
1951年に建設された全長500メートルの木製の橋です。すぐそこに見える対岸が北朝鮮です。朝鮮戦争(1950年 - 1953年)のときに、支援する中国人民志願軍の兵士がここから北朝鮮に渡ったそうです。
記念碑には、対岸で行われている戦争に向かう兵士と肉親の別れの心情が滲んでいて、「牽衣頓足」の心が胸に沁みます。
くっきりと
断橋の先端に立ち、或は遊覧船に乗り鴨緑江の中ほどから両岸を眺めると愕然とさせられます。中国側は高層ビルが建ち、車が行きかっていますが、一方北朝鮮側はまるで時が止まったような感じさえします。
「血の同盟」と言われた両岸の関係ですが、断橋観光の人々は対岸の様子を眺めてどんな感想を持つのでしょうか。
鴨緑江の両岸の風景は夜ともなると更に「彰明較著」、丹東市側はネオンなどの街の明かりが灯り「動いている」と感じさせます。一方の対岸は真っ暗。両岸を結ぶ中朝友誼橋も、ライトアップされているのは鴨緑江の中程から中国側だけ。
鴨緑江両岸のあまりにもくっきりとしたコントラストが印象的でした。
争いのない世界
ところで、丹東市街地から少し山側に行ったところに本格的なゴルフコースがあります。自然が魅力の18ホール国際標準のコースです。一度だけ、このラウンドしたことがありますが、鴨緑江を挟んでいるとはいえ北朝鮮からすぐのところでゴルフ…? 何か不思議な感覚だったことを覚えています。
戦火が絶えないこの地球。それぞれの主義主張を乗越えた地球民族主義という考え方が醸成できればどんなに麗しいことか。国境の街・丹東で「相安んじ事無し」、世界中が何事もなく平和に暮らせるようになることを願うのみです。