【千里の行は足下に始まる】 自分にとっての偉業達成の第一歩は足元に

勝利広場から臨むビル群(大連市2013年5月)
中国に駐在して現地会社の運営を行い、業績を拡大させるという使命を果たすために、まずは自身の居を何処に構えるかが大きな問題。つまり何事も足元から始まる。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
兎起ち鳧(ふ)挙がる(兎起鳧挙)
- 中国語:兔起凫举 [ tǔ qǐ fú jǔ ]
- 出典:吕氏春秋(论威)
- 意味:兎が巣から素早く飛び出したり、鳧(野鴨)が飛び上がる様子。並外れて素早いことのたとえ。
牛の如く重きを負う(如牛負重)
- 中国語:如牛负重 [ rú niú fù zhòng ]
- 出典:中国社会各阶级的分析
- 意味:牛のように重い荷物を負って黙々と歩むこと。負担が非常に重いことの例え。
各好む所有り(各有所好)
- 中国語:各有所好 [ gè yǒu suǒ hào ]
- 出典:仰答韦司业垂访五首
- 意味:人それぞれに好みがある、との意。
言 猶(なお)耳に在り
- 中国語:言犹在耳 [ yán yóu zài ěr ]
- 出典:左傳(文公七年)
- 意味:人の言った言葉がまだ耳に残っていること。
千里の行(こう)は足下に始まる
- 中国語:千里之行,始于足下 [ qiān lǐ zhī xíng, shǐ yú zú xià ]
- 出典:老子(道德经)
- 原文:九层之台,起于垒土;千里之行,始于足下(九層の台は塁土に起こり、千里の行は足下に始まる)
- 意味:千里を行くのも一歩から始まる。ゼロからスタートして、一歩一歩進めていくこと。千里の道も一歩から。
記事:【千里の行は足下に始まる】 自分にとっての偉業達成の第一歩は足元に
日本人村は住みやすい?
2000年4月に大連に赴任した際に、居住者が100%日本人というヴィラに住むことにした。現地の様子が分かっていないため、そこなら安心であろうという単純な思いで決めたのです。しかし、住んでみると分かったことは…
日本人向けヴィラというだけあって、レセプションは日本語ですべてが事足ります。敷地周囲はフェンスで囲まれ、ゲートセキュリティが配置されているので安心できます。
そんなことで、居住する人の多くは家族帯同の駐在社員で、小さな子供さんがいても、心配なく外遊びができます。
一方、言ってみればそこは「日本人村」。夜遅く帰ったりすると、翌日には奥様方に知れ渡ることとなり、日本人の目を気にしなくてはなりません。日本人村は、単身者にとっては少々息苦しいところがあるのです。「各有所好」、日本人村であるが故にそこを好む人も、そうではない人もいるのです。
変わり身の速い事
件の「日本人村」に1年間居住しましたが、赴任2年目は会社から車で5分程度のサービスアパートメントに転居することにしました。
現地の様子が少し分かりかけてきたことに加えて、会社の責任者として何が起きても24時間いつでも直ちに対応できるようにするためには、会社の至近距離に住するのがよいとの思いからです。
その物件はワールドワイドの著名ホテルチェーンがマネジメントするアパートメント。セキュリティもまあまあ。日常生活にも特には問題がなかったのですが、住んで3年を過ぎたころに大問題が勃発。
物件を所有する中国人オーナーとホテルチェーンが意見の不一致を起こしたのです。その結果、ホテルチェーンが突然撤退してしまったのです。住人へ何の説明もなく、マネジメントの担当者達は「兎起鳧挙」、一夜にしてどこかに消えてしまいました。
同時にオーナーは国内のマネジメント会社を導入。それにより、アパートメントは一気にローカル色に包まれることになったのです。
すると、同じように住んでいた多くの日本人が、その後のアパート運営の質の劣化を心配し、あっという間に退去して行きました。
突然退去を
何が起こるかわからないこの社会の中で、一人取り残される訳にもいかず、再び転居を模索。近くに格好の新築マンションを見つけました。既にほぼ竣工していたので、第一号入居者となりました。
水や電気のインフラの他にもテレビの国際放送もあって十分な設備が整っています。が、入居して、その一つひとつを見ると問題が…
シャワーの最中にお湯が止まったこともありました。建物の大きなボイラーから各戸に給湯するシステムでしたが、何らかのトラブルがあったのでしょう。
他にも多くの修理、調整が必要な個所を見つけては、フロントに通報することになりました。俺は設備サービス担当員ではないのだけれど…
なんだかんだと約4年間住みましたが、インフラ設備は安定する気配は特には感じられませんでした。
そんなことで、他のマンションに移ることを考え、その旨を管理会社に伝えました。すると「そんなこと言わずに、続けて住んでほしい」と管理会社から請われ、結局、同意の上で賃貸契約を更新しました。
ところが、その約1か月後、突然、退去を求める通知が届きました。ついこの前、懇願されたばかりなのに、一体何が…
説明を求めると、賃貸をやめて全戸分譲にすることになったので、出て貰わなければなりませんと。
「言猶耳に在り」の中での予想だにしない出来事に、あきれてものが言えませんでした。
ストレスの少ない住居
仕事上では大きなストレスを抱え、また緊張を強いられ、やっとの思いで仕事を終え住まいに帰ってきたら、住居でもストレスが待っていた。そんなことでは身体が持ちません。
「如牛負重」との状態からしばしの安らぎを得られる住まいのはずなのですが…
言葉の問題も含め日本とは大きく違う環境の中で生活していると、オフで家に居るときくらいは、ストレスができるだけ少ない住居を選ぶ必要があります。決して家賃の高い高級物件を選ぶのがよいということで無いことはもちろんです。
コストだけではない
「千里の行は足下に始まる」という言葉のように、会社の業績を向上させる第一歩は駐在員の住環境を整えることにあるといえます。
自分が住むのにも関わらず、日本本社の偉い方々と同じようにコストという一面だけで安直に決めてしまうのはのよくないと言えます。
15年間の駐在中の最後の4年間住んだ4か所目のアパートメントが、建物は新しくはありませんが、ホスピタリティが頭抜けていて最も快適でした。日本人の生粋のホテルマンが総経理を務めていたこともあり、非常に安定していたことで充実した生活を送ることができました。
そのお陰もあって、気持よく仕事をすることができ、業績面でも充実の成果を出すことができたことは言うまでもありません。