【金石の交わり】 変化する世の中にあって 市場で共に闘った朋友とは
長く駐在した中国・大連。久しぶりに訪れると、そこにはびっくりするような変化が。他方、何も変わっていない状況に溜息が出そうに。あれこれギュッと詰まっているのが第二の故郷。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
依然故態
- 中国語:依然故态 [ yī rán gù tài ]
- 出典:宋·刘克庄(后村全集)
- 意味:人の考え方や生活のやり方が何も変わっていないこと。旧態依然。
客鳥故林を思う
- 中国語:客鸟思故林 [ kè niǎo sī gù lín ]
- 原文:人情怀旧乡,客鸟思故林(人情 旧郷を懐い、客鳥 故林を思う)
- 出典:晋 王赞 (杂诗)
- 意味:人の情として故郷を懐かしむ。巣を離れた鳥が元居た林を思う。
風の耳を過ぐるが如し(如風過耳)
- 中国語:如风过耳 [ rú fēng guò ěr ]
- 出典:赵晔(吴越春秋·吴王寿梦传)
- 意味:何の関心も示さないこと。どこ吹く風。
金石の交わり
- 中国語:金石之交 [ jīn shí zhī jiāo ]
- 出典:漢書(淮阴侯传)
- 意味:どれだけの時間がたっても変わることの無い固い友情のこと。「金石」は非常に硬いということから、永遠に変わらないものの象徴。
大驚失色(たいきょうしっしょく)
- 中国語:大惊失色 [ dà jīng shī sè ]
- 出典:漢書(霍光传)
- 意味:びっくり仰天し、顔色を失うこと。驚愕すること。
朋有り遠方より来る、亦(また)楽しからずや
- 中国語:有朋自远方来,不亦乐乎 [ yǒu péng zì yuǎn fāng lái, bù yì lè hū ]
- 出典:論語
- 意味:道を同じくする友人が遠くからやって来た、また楽しい事ではないか。(論語にある名言)
記事:【金石の交わり】 変化する世の中にあって 市場で共に闘った朋友とは
懐かしい「故郷」
中国の東北エリヤの都会である大連市で、12年余りにわたって仕事に奮闘。期間が長かっただけではなく、その中身の濃さからは「第二の故郷」と称するに相応しいと思える。
その駐在期間を終え帰国してからも、毎年のように現地を訪ねた。まるで「客鳥故林を思う」渡り鳥のように。
そして、時間をおいて見た光景は駐在中と違って時として衝撃的に映る。
ほんまかいな
時は2017年11月。大連で久しぶりの街歩き。多くの車や人が行きかう大通り。賑やかさは相変わらず。信号機のない横断歩道を渡ろうと、流れる車の切れ目を見つけ、タイミングを計り一歩二歩進みかけたところで、走ってきた車が止まった! ええ~っ! しかも、運転手は、先にどうぞとばかりに手で合図をしているではないか。ほんまかいな!
以前は、行きかう車の間をすり抜けて、幅の広い道路を渡るテクニックに、生活感を感じたものです。横断歩道は「車が来ないときに渡る場所」という感覚。横断する人を見かけて止まる車は皆無でした。自家用車やタクシーはもちろん、路線バス、警察車両ですら止まってはくれませんでした。
テレビでは「交通ルールを守りましょう」と公共広告が流され、法律上でも歩行者優先がうたわれていましたが、現実は大人が小さな子供の手を引いて乱横断するのが普通の社会。
10年以上に亘って暮らしていた大連では、一度として見かけなかった光景を目の前にして、その驚きと言ったら「大驚失色」。少々大袈裟かもしれないが、衝撃的でした。
どこ吹く風
驚きつつ道路を渡って商業ゾーンを外れ庶民の生活エリヤに入ると、そこではペットの小犬を連れて散歩する人々の姿が、以前とは比べものにならないほど多く見かけるようになりました。
可愛い小型犬を散歩させているのは、多くは中年から高齢の人達。子供たちが独立し、苦労して買ったマンションでの夫婦二人暮らし。そんな日々にペットの小犬を可愛がる生活ぶりを勝手に想像してしまいます。
しかし、よく見ると、子犬の散歩をしている人のほとんどが手ぶら。ということは、犬が用を足した後の始末はほったらかし…
また、リードが使われていません。いくら自分では可愛く思っても、通りを歩く人の中には犬が苦手に人もいるはずなのに「風の耳を過ぐるが如し」。決して安くはない子犬を買い放し飼いで散歩させることで、裕福さをアピールをしたいのかもしれないと、勘ぐりたくなります。
溜息が出そう
街中での意外にも大きな変化を発見した一方で、「依然故態」の事も。
溢れる車の駐車もそのひとつ。市中心部ではひとつ裏通りに入ると、歩道は車の駐車場と化していて歩くことができません。中には歩道上に堂々と駐車用の白線を書いて車の整理(?)をしているケースも。そんな状態は以前とはちっとも変っていないようです。
永遠に変わらない
約12年にわたって現地会社の運営に全力投球。共に市場開拓に奮闘した仲間たちは、「朋有り遠方より来る、亦楽しからずや」と歓迎してくれました。少しばかり歳を取ったこと以外は何も変わっていませんでした。
会った途端に当時の苦しかったこと、楽しかった出来事が蘇ってきます。中国の膨大なマーケットで共に戦ったいわば戦友同士。同時に生涯の朋友でもあります。
これこそが「金石の交わり」。固い友情は時を経ても何ら変わるところなく、そしてまた永遠に変わることはない、心の財産でありましょう。大きな感動を与えてくれたのです。