【五指のこもごも弾つは捲手の一挃に若かず】 目指せ異体同心 どうせならとことん
旧正月を間近に控えて、ホテルの宴会場を借り切って年会を開催。社員によるコントや歌、ダンス等、出し物が披露されている。食事をしながら、少々お酒も飲みつつ、年会を楽しむ社員達。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
一不做二不休
- 中国語:一不做二不休 [ yī bù zuò èr bù xiū ]
- 出典:唐・赵元一(奉天录)
- 意味:やるのであればいっそのこととことんやる。毒を食らわば皿まで。乗り掛かった舟。
五指の更(こもごも)弾つは捲手(けんしゅ)の一挃(いっちつ)に若かず
- 中国語:五指之更弹,不若捲手之一挃 [ wǔ zhǐ zhī gèng dàn, bù ruò juǎn shǒu zhī yī zhì ]
- 出典:淮南子・兵略訓
- 原文:五指之更弹,不若捲手之一挃、万人之更进,不如百人之俱至也。[ 五指の更(こもごも)弾つは捲手(けんしゅ)の一挃(いっちつ)に若かず、万人の更進むは、百人の倶(とも)に至るに如かざるなり ]
- 意味:五本の指で交互にたたくことは、拳の一撃に及ばないし、万人が交互に突進することは、百人が一緒に突撃するに及ばない。「更」とは「かわるがわる、入れかわって」の意。
接二連三
- 中国語:接二连三 [ jiē èr lián sān ]
- 出典:紅楼夢
- 意味:次から次へ。続けさまに。ひっきりなしに、との意。
蟷螂轍を拒む(蟷螂拒轍)
- 中国語:螳螂拒辙 [ táng láng jù zhé ]
- 出典:史通(载文)
- 意味:蟷螂(かまきり)が轍(車)を拒む、との意。到底できない能力しか無い、必ず失敗することの例え。
庸庸碌碌
- 中国語:庸庸碌碌 [ yōng yōng lù lù ]
- 出典:典故纪闻
- 意味:平々凡々である。のらくらして成すところがないこと。
記事:【五指のこもごも弾つは捲手の一挃に若かず】 目指せ異体同心 どうせならとことん
盛り上がる年会
年間を通して最大のイベントである春節を直前に控えて、約300名の社員が一堂に会した年会。会社上げての忘年会と言ったところでしょうか。
呼び物のひとつが、各部門、各事業所などを単位とした出し物の数々。1か月ほども前から終業後に、それぞれのチームがこっそりと練習を繰り返し、年会の場で発表するのです。
会場代や食事代、飲み物などかなりの費用がかかりますが、春節に向かって一年の奮闘を労い、新しい年の頑張りに期待していることを会社として社員の皆さんに表明する絶好の機会です。社員も楽しみにしている年に一度のイベント。「ここぞ!」という時であり、会社としても「一不做二不休」、ケチなことは言わずにどうせならとことんやって盛り上げるべきなのです。
ど素人の挑戦
ところで、大連の長い冬が終わり、新緑が芽吹くすばらしい季節に開催される「大連国際マラソン大会」。(開催時期は当時のもの)
この大会は1987年に始まった公式マラソン競技で、フルマラソンの他にも、車いすマラソンや駅伝も同時開催され、中国で数多く開かれるマラソン大会の中でも古くからの伝統を誇ります。
本格的な大会ですが、自由にエントリーできると言うことで、会社として駅伝チームを作り参戦することを幹部社員達に提案。目を輝かせた彼らの手で早速チーム作りが始まりました。
「螳螂轍を拒む」とのことわざを聞くまでも無く、ど素人チームが通用するなんてとても思えませんが、駅伝の持つ力を借りて社員達の団結心を醸成する一助になればとの思いからの参戦です。
パッとしない社員にも
社員でチームを構成し42.195キロのコースを、タスキをつなぎ走り抜くというイベント。
しかし、会社には、マラソンや陸上経験者はゼロ。そこで、事前に社内予選会を行い、足の速い社員を選び、「選手」は土日の休みに練習を重ね、本番に臨みました。
選ばれたのは、総務や営業、業務といったそれぞれの部門の一般社員です。中には日頃の仕事では「庸庸碌碌」、ぱっとしない社員も。
駅伝参戦は、そういった社員にもスポットライトを当てることにもなります。以後の仕事に対するモチベーションも上げてくれことも期待できそうです。
当日は、選手以外の社員は主要リレーポイントで応援に参加。さらに希望する社員はミニマラソンに参加したり、できるだけみんなが参画できる機会を増やすように考えました。
仕事のときとは違って社員達とも直接コミュニケーションをとることができる雰囲気がいいですよね。
力をひとつに
年会や駅伝の他にも、全社員参加の10キロ・ウオーキング大会、夏にはビーチでのレクリエーション、秋には工会(労働組合)主催の一泊旅行などを開催。
実務上では、年初に「年度会社方針発表会」、適宜「セールスコンテスト」「実技コンテスト」など、「接二連三」、一年中いつも何かをやっている、という感じにしました。
ビジョンによって近い将来の夢を持たせ、その実現を目指した、足元の具体行動である業務上のイベントは「縦糸」のようなもの。そして並行して開催する各種レクリエーションは組織に潤いを持たせる「横糸」、といったイメージでしょうか。
目指すは異体同心
日系企業がアウエーで勝ち抜くには、どうしても社内の団結が必要。だからと言って「団結しよう!」と呼びかけだけで実現できるのであれば苦労はない。まして、個人主義の国である。
団結心はそれなりの時間をかけてしか醸成できないもの。ならばどうすればいいのか。
淮南子には「五指の更弾つは捲手の一挃に若かず」と古来、力をひとつにすることの重要さを訴えています。様々な「仕掛け」を準備して、異体同心に心がけるのです。
残念なことですが、「リクレーション如きに、会社の大事な金を使うのか!」、という声が日本から発せられるかもしれませんね。しかし、現場を知らないバカのそんな寂しい一言は無視すればよいのです。