【終身の計は人を樹うるに如くは莫し】 一条龍の思いが人材を育てる
企業を支えるのは社員などの人材。たとえ、業績が好調に推移してるとしても、日常の人材育成を怠ると、いずれジリ貧に陥ってしまいかねない。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
賢に任じて弐(じ)すること勿く、邪を去って疑うこと勿れ
- 中国語:任贤勿贰、去邪勿疑 [ rèn xián wù èr ]
- 出典:尚書(書経)
- 原文:儆戒无虞,罔失法度。罔游于逸,罔淫于乐。 任贤勿贰,去邪勿疑。疑谋勿成,百志惟熙。:虞(はか)るなきに儆戒(けいかい)し、法度を失うなく、逸に遊ぶなく、楽に淫するなく、賢に任じて弐するなく、邪を去って疑うなく、疑謀は成すなかれ。
- 意味:優秀な人材を登用し、二心無く信頼して仕事を任せるのがよい。また、よこしまな臣下を退けるのに迷ってはならない。
終身の計は人を樹(う)うるに如(し)くは莫(な)し
- 中国語:终身之计莫如树人 [ zhōng shēn zhī jì mò rú shù rén ]
- 出典:管子
- 原文:一年之计莫如树毂,十年之计莫如树木,终身之计莫如树人(一年の計は穀を樹うるに如くは莫く、十年の計は木を樹うるに如くは莫く、終身の計は人を樹うるに如くは莫し)
- 意味:一生の計画であれば人を育てる以上のことはない。人を育てると一生の実りが期待できる。
前を承(う)け後ろを启(ひら)く
- 中国語:承前启后 [ chéng qián qǐ hòu ]
- 出典:明・朱国祯(涌幢小品·曾有菴赠文)
- 意味:前人の事業を継承し、もって後世の人が道を切り開く。前のものを受け継ぎ後ろのものを導き出すこと。
用兵攻戦の本は、民を壱にするに在り
- 中国語:用兵攻战之本,在乎壹民 [ yòng bīng gōng zhàn zhī běn, zài hū yī mín ]
- 出典:荀子
- 意味:用兵の基本は自国の民の心を一つにまとめることにある、との意。例えば、六頭立ての馬車を走らせるのに、馬の足並みが揃っていなければ、どんな名馭者であっても遠くまで走らせることはできない。
一条龍
- 中国語:一条龙 [ yī tiáo lóng ]
- 出典:张平(抉择)
- 意味:物事の首尾が繋がっていることの例え。緊密に結びつき一貫していること。
記事:【終身の計は人を樹うるに如くは莫し】 一条龍の思いが人材を育てる
会社と新幹線
新幹線型の高速鉄道が開通以来僅か10年ほどで、その総延長が全世界の高速鉄道の総延長の約3分の2に相当する25,000 kmに達した中国。
列車の先頭に座る運転手がノッチを入れると、それぞれの車両ではモーターが一斉に回転を始める。だから高铁は速く走れる。
それ以前の長距離鉄道は、機関車が多くの客車を引っ張るという方式。その頃、社内の幹部会議で、「会社も同様で、総経理(社長)が会社組織を牽引するのは、経済発展が著しい時代にはそぐわない。むしろ、各モーター(リーダー)が運転手(総経理)の指揮のもと、呼吸を合わせて全力を尽くすことで、ものすごいスピードで列車(会社)は走ることができる」と訴えた。
「用兵攻戦の本は、民を壱にするに在り」と、総経理は社員の支持を高め、リーダーや一般社員達の心をとらえて、一丸となった組織とすること、つまり戦いに勝利するには心をひとつにすることが大切なのです。
枯渇する人材
当時は急激な経済発展の真っ最中。会社も業容の拡大に伴い会社組織も、部長、課長などの中・上級の幹部はさておき、数名の小グループ責任者といった班長レベルの人材が枯渇状態になった。
人材育成が追いつかず、「賢に任じて弐すること勿く、邪を去って疑うこと勿れ」とはいうものの、そうもできない状態が現出してきたのです。
対応策として外部から人材を招聘することも考えられますが、専門性のある現場業務を経験しないままで、マネジメントをうまくやることはかなり無理があります。部下との共通点もなく、表面的なマネジメントに終わってしまうとしか思えません。
一生の大仕事
如何に、嬉しい悲鳴にも似た人材不足であったとはいえ、日頃からの人材育成に対しては十分な努力がなされていたとは言い難いものがあります。
「終身の計は人を樹(う)うるに如(し)くは莫(な)し」とあるように、人を育てるというのは一生をかけてやる大仕事。人材が足りなくなってから始めたのでは間に合うわけはありません。
中国現地会社の責任者としての総経理は、日常のマネジメントと並行して、人材育成にも腐心しなければなりません。
最も大事なこと
しかし、総経理がどんなに人材育成に傾注し、その結果社員が育ってきたとしても、いずれ駐在が終了し帰国することになります。後任の総経理は「前を承け後ろを启く」と事業を継承するのですが、実はその主眼は人材育成にある。
総経理は、地元経営幹部と共に人材育成に取り組むことが、会社の持続的発展の元を為すということを弁えたいものです。
つまり、会社にとっては「一条龍」の課題なのです。好調な業績であっても、これを怠ると、いずれジリ貧に陥ってしまいかねないのです。