【年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず】還暦の記念植樹は生涯の思い出となった
渾身の努力を続けていると、思いもよらないことが起きるものだ。サラリーマン生活の三割強を中国で過ごしたのだが、その中で生涯の思い出が…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
花甲之年
- 中国語:花甲之年 [ huā jiǎ zhī nián ]
- 出典:唐诗纪事
- 意味:人が六十歳に到達したこと。「耳順之年」ともいう。
九死一生
- 中国語:九死一生 [ jiǔ sǐ yī shēng ]
- 出典:戦国・楚・屈原(离骚)
- 意味:最大の危機を切り抜ける例え。きわどいところで命拾いすること。
年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず
- 中国語:年年岁岁花相似,岁岁年年人不同 [ nián nián suì suì huā xiāng sì ]
- 出典:唐・刘希夷语
- 意味:毎年花は同じ姿であるが、毎年(それを見る)人の姿は変わっていく、との意。
百花斉放(ひゃっかせいほう)
- 中国語:百花齐放 [ bǎi huā qí fang ]
- 出典:镜花缘
- 意味:色々な花が一斉に開くこと。
没歯忘れ難し
- 中国語:没齿难忘 [ mò chǐ nán wàng ]
- 出典:为汝南公华州贺赦表
- 意味:生涯忘れることができない、との意。「没歯」とは、よわいを没す、つまり「死ぬまで」の意。
六十にして耳順(したが)う
- 中国語:六十而耳顺 [ liù shí ér ěr shun ]
- 出典:論語
- 原文:吾十有五,而志于学。三十而立。四十而不惑。五十而知天命。六十而耳顺。七十而从心所欲,不逾矩。
- 意味:六十歳になればどのような意見にも素直に聞くことができる。ここから、六十歳のことを「耳順」という。
記事:【年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず】還暦の記念植樹は生涯の思い出となった
予想だにしなかった
こんな晴れがましい誕生日があるのだろうか。中国で「花甲之年」の誕生日を迎え、現地で知り合った友人などが集って、お祝いの食事会を開催していただいたのです。全くもって予想だにしなかったこと。
六十歳で定年に達したわけですが、そのまま継続雇用となり、現地会社の総経理(社長)職務も継続となることが早くから決定していたため、表面的な変化は何もありませんでした。還暦を通過したことは頭では理解できても、実感は何もないという不思議な感覚でした。
しかし、祝いの席では、ちゃんちゃんこの替わりに赤いゴルフ帽子もいただきました。友人の方々のお心遣いには、感謝の念で一杯です。
耳順とともに
「六十にして耳 順う」とは論語にある格言です。六十歳になれば、どのような意見にも素直に耳を傾けることができる。自身もそんな年齢になったのだから、これからの人生を大切にしなければ、なんて殊勝なことを思うようになりました。
それまでは地位やお金などを手に入れたいという欲求ばかりの人生でした。が、還暦を機に社会や会社、人のためになることで、人生の「お返し」をしたいと考えるようになったのもその頃。
感謝の心
思えば、四十九歳で上海に赴任、その後五十歳で大連へ。そして十年が経ち還暦を経験しました。「十年、六十歳」といういずれもとても切りのよい数字、不思議な目繰り合わせを感じました。
大連四年目に狭心症発病というアクシデントにも遭遇しましたが、「九死一生」、危機を乗り越えることができ、その後は毎日が以前にも増して充実、業績も極めて順調に発展。それらに対する感謝と、還暦以降の人世で為すべきことへの思いを、何らかの形に表したいとの考えが芽生えました。
閃いた桜
その「記念」すべき年の、長い冬が過ぎると、大連は「百花斉放」のすばらしい季節が到来します。四月下旬には桜が開花、五月後半にはアカシアが街のそこかしこで満開となります。
寒い冬を耐え、乗り越えてこそ、時が来たら見事な花を咲かせる。そして人に感動や喜びを与える。そんなことを思ったとき、脳裏に閃いた! そうだ、桜を植樹しよう!
例え社命で帰国しても、季節になれば花が咲き、誰かが見に来てくれるかもしれません。桜の花を見ながら、昔話でもしてくれたら最高じゃないか。大連で頑張っていたという証を残すのにはこれ以上の方法はありません。
協力を得て
しかし、大連の街中では、植わっている木を切ることはおろか、勝手に植えることも条例で禁止されていることがわかりました。
どうしたものか、思案をしていた時、懇意にしていた中国人のある総経理(社長)さんに、自分の思いと計画を話したところ賛同をいただき、さっそく人脈を通じて旅順の植物園を紹介していただきました。
総経理さんに同行をいただき、植物園園長に面会し趣旨を説明したところ「それは素晴らしい考えだ」と快諾をいただき、桜を植樹するという願いが実現することになりました。
「年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず」、自分は年年老いていきますが、春になれば桜は変わらず咲いてくれます。願いが叶いそうになり心が躍る思いがしました。
遂に実現
大連市内から車で四十分余り、旅順中路沿いにある植物園がその場所。2010年四月一日に遂に桜を植樹することができました。植物園園長が少し成長した桜を用意してくれました。濃いピンクの花をつける桜です。
紹介してくれた総経理さんの提案で、植樹した桜の名前を「成功の樹」と命名、還暦と大連在住十年を記念すると刻した小さな碑も作りました。
思いつきから始まった手作りの植樹ですが、生涯の思い出になりました。友人である社長、植物園園長など実現にご支援をいただいた方々のおかげで「没歯忘れ難し」の一年となりました。大感謝です。
いずれ大連にはいなくなるでありましょうが、その桜を通して往時を偲んでくれたらこんなうれしいことはありません。そう思いを深くしました。