【遠交近攻】 これぞ中国で成功を目指す総経理の必須の策略
「何でもあり」の中国市場で、コンプライアンスの遵守を追い求めていて、成功拡大は得られるのであろうか。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
孜孜汲汲(ししきゅうきゅう)
- 中国語:孜孜汲汲 [ zī zī jí jí ]
- 出典:论关中事宜状
- 意味:あくせくと追い求めること。一生懸命に努める様子。
心甘情愿
- 中国語:心甘情愿 [ xīn gān qíng yuàn ]
- 出典:宋・王明清(摭青杂说·项四郎)
- 意味:無理なく、心から願うこと。
生殺与奪
- 中国語:生杀予夺 [ shēng shā yǔ duó ]
- 出典:韓非子(三守)
- 意味:支配者は生死賞罰の大きな権利を持っていることの例え。生かしたり殺したり与えたり奪い取ったりと、どのようにでも思いのままにすること。
遠きに交わり近きを攻む(遠交近攻)
- 中国語:远交近攻 [yuǎn jiāo jìn gong ]
- 出典:兵法三十六計(第二十三計)
- 意味:遠い国と親しくして、近くの国を攻め取る策。
- 故事:范雎は魏の国に仕えたが、異心があると疑われて、秦の国に逃れ、昭襄王に対して「遠交近攻」を説きました。すなわち、遠い国と同盟を組んだうえで、隣接した国を攻めれば、その国を滅ぼして領地としても、本国から近いので守り通すことが容易である。この方策に感銘を受けた昭襄王は范雎を宰相にして国政を任せました。遠い斉や楚と同盟し、近い韓、魏、趙を攻めた秦は膨張を続け、やがて六国を平定して大陸の統一を成し遂げることになりました。
便宜行事
- 中国語:便宜行事 [ biàn yí xíng shì ]
- 出典:漢書(魏相传)
- 意味:指示を仰がず自分で判断して適宜に処置する。臨機応変に処理すること。
記事:【遠交近攻】 これぞ中国で成功を目指す総経理の必須の策略
何でも有りの環境で
中国都市部の片側三車線の道路の交差点。赤信号で停車中の車列に少しの隙間を見つけ後続車が割り込んできて四列に並ぶことがあります。
そして青信号になり、用意ドンでスタート。後から来た車が先頭を切った。そんな光景に遭遇すると、この環境で真面目に競争して勝ち切ることはできるのであろうかと、素朴な疑問が湧いてきます。
例えば、いつのころからか重要課題として、強く求められるようになったコンプライアンスの問題です。
どこにあっても法令は遵守しなければならないのは当然です。ただ、日本とは大きく異なる環境にある中国現地子会社に対しても、日本国内とまったく同じレベルでコンプライアンスの遵守を要求するのはどうなんだろうか。
ひとつ事が起きると、経営者が記者会見を行い、深々と頭を下げ謝罪するようなことは避けたいと考えるのも理解できます。しかし、何でもありの中国で、「孜孜汲汲」とコンプライアンスを追い求めていては、勝負に勝てっこありません。
日本標準のルールを厳格に守っていては、会社発展の邪魔にさえなると。
悩む駐在員
日本と同様のコンプライアンスを実行することは、現法にとって何の意義があるのか、と言っても本社と連結関係にある中国現法として、それを否定することはできません。
如何に現法発展のためと言っても、日本本社からのコンプライアンスを遵守せよとの指示を無視することは、サラリーマン生命を奪われることになりかねないからです。
日本本社からの派遣出向社員にとっては、本社は「生殺与奪」の大きな権限を持った怖~い存在なのです。
ということで、現地会社を大きく発展させることに重きを置いている駐在社員は。現地の環境と日本本社の狭間で悩んでいるのです。もっとも、駐在期間を無難に過ごして帰国することだけを考えている人にはそんな悩みは無縁ですが。
背後から撃たれないように
では、眼前に広がる現地の膨大なマーケットの開拓という難題との間で、どのようなスタンスで臨めばよいのか。
戦いの現場は中国ですから、「遠きに交わり近きを攻む」との策略がヒントです。
背後(日本本社)から鉄砲の玉が飛んできたらひとたまりもありません。そんなことにならないように、日本本社とは適度なコミュニケーションを保ち、後顧の憂いを減らして、目の前にある中国マーケットを攻めるという戦略です。
日本本社は、現法に勝手なことをされてはたいへんだと心配しています。そこで、現地に送り出した総経理(社長)にもコンプライアンスの厳守を求めてくる。
まずは、そこと良い関係を作っておくことです。
自ら判断する総経理に
本社から派遣され総経理を張っていても所詮はサラリーマン。どんなに大口をたたいたとしても、そんなに無茶なことをする度胸はありません。
「何でもあり」の中国であっても、超えてはならない一線を超えてしまうと、国内企業と何ら変わらないことになり、外資企業としてのアイデンティティはなくなってしまうことは理解しています。
本社が要求するコンプライアンスを念頭に置き、目の前のことに対して正否を判断する基準を肌感覚で理解しています。担当する地域で自分の実力と、自分が持つ人脈との見合いで、どの程度までなら自身で対処できるか、という基準を持っています。
大きな問題を発生させて、日本の本社の偉い方に謝罪会見をさせるわけにはいかないのですから、大それたことはできません。
つまり、本社はそう心配することはないのです。本社が自ら現地に派遣した社員を信頼する勇気を持て、と強く言いたいと思います。
そして現地会社におけるコンプライアンスの運用は、「便宜行事」、本社に伺いを立てることなく、自分で判断し適宜に処置をすればよい。
腹をくくることから始まる
担当する現法としてのすべての責任を総経理が持ち、腹をくくって現場のマーケットを見据えて、現地の仲間社員と一緒に努力をすることこそが成功の要点です。
今までの経験と中国という環境の中で自分が身につけた、言わば「行動規範」こそが、事業拡大の秘訣であると信じます。
そうであるならば、海外現地で市場を拡大し成功発展させるための肝は日本の本社ではなく、現地の責任者にあるといえます。
本社から現法責任者として派遣された総経理は、「心甘情愿」、進んで運営のすべてに腹をくくって臨むべし。これが成功に向かう「是」です。