【一葉蔽目】 ちぐはぐな施策では中国現場の役には立たないどころか邪魔…

旅順駅風景(2016年10月)

 

現代社会では、仕事上でもネットワークを駆使するのは当たり前。しかし、そこには、ウイルス感染というリスクも存在する。さて、どうする。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

一葉蔽目

  • 中国語:一叶蔽目   [ yī yè bì mù ]
  • 出典:鹖冠子(天则)
  • 原文:一叶蔽目,不见太(通“泰”)山;两豆塞耳,不闻雷霆。「一葉目を蔽えば太(泰)山を見ず、両豆耳を塞げば雷霆(てい)を聞かず」
  • 意味:一枚の葉で目を覆うと高い泰山すら見えない。目の前の一部の現象に惑わされて物事の本質を見ないことの例え。泰山とは山東省の中央部に位置し平原にそびえ立つ世界遺産。

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虎穴に入らずんば虎子を得ず

  • 中国語:不入虎穴,焉得虎子   [ bù rù hǔ xué,yān dé hǔ zǐ ]
  • 出典:後漢書(班超传)
  • 意味:困難や危険を冒さなければ何事も成功しないことの例え。危険を冒さなければ、大きなことをやり遂げることはできない。

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多管閑事

  • 中国語:多管闲事   [ duō guǎn xián shì ]
  • 出典:三侠五义
  • 意味:必要でないのに人のことに手を出す。余計なお世話。

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張冠李戴

  • 中国語:张冠李戴   [ zhāng guān lǐ dài ]
  • 出典:田艺蘅(留青日札)
  • 意味:姓が張の帽子を姓が李の頭にかぶせること。相手や対象を間違えた、ちぐはぐなことの例え。

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南轅北轍(なんえんほくてつ)

  • 中国語:南辕北辙   [ nán yuán běi zhé ]
  • 出典:战国策(魏策四)
  • 意味:車の轅(ながえ)は南に向いているのに、車自体は北へ走ろうとする。行動と目的が相反していることの例え。(「轅」とは、馬車や牛車の前方に長く突き出ている棒のこと)

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記事:【一葉蔽目】 ちぐはぐな施策では中国現場の役には立たないどころか邪魔…

アクセス遮断

 ある時、日本本社からパソコンから中国へのネット接続ができなくなりました。聞けば、全中国からのアクセスを無条件で遮断したとのこと。その結果、中国内の現地会社からは、本社のホームページすらアクセス閲覧できなくなったのです。

 ウイルス感染を予防することが目的です。日本本社のネットワークがウイルスに感染しては一大事、であることはわかりますが、何か変です。

 会社の上層部は、口を開けば中国市場の更なる開拓を、と声高に叫んでいるのに、一方ではアクセスを遮断する。これでは「南轅北轍」ではないか。事業の司令塔である本社がこんなことでいいのであろうか?

 ネットワークを管理する部門はウイルスの侵入を予防するという責任を有することは理解できます。しかし、だからと言って中国との間のアクセスを遮断するということが、中国事業を積極展開する企業にとって正しいのでしょうか。しかも、その事に誰も何の疑問も持たなかったことに呆れます。

 

塀を高くして

 自分の周囲に高い壁を築いて外敵の侵入を防ぐのはよい方法かもしれませんが、それでは得るものは何もありません。高い塀の内側から中国マーケットを展望などできっこありません。いずれ崩壊してしまいます。

 虎穴に入らずんば虎子を得ず」、外に打って出ることもしないで、自らの手を汚そうともせず虎の子を手に入れるなんて、そんなうまい方法はないのです。

 日本本社の関係者はこのことわざを何と読むのでしょうか。

 

大きなお世話

 座して虎の子を得ようとしたかと思えばこんなこともありました。

 日本本社が中国各社の人事制度を統一すると言ってきたのです。現地で会社が設立されて何年も経っているのですから、それなりの人事制度はあるのです。そりゃ形は不格好かもしれませんが…

 それに、各社とも広大な中国に在って立地の地域が異なり、各社それぞれ実情に合った制度を作っているのです。

 それを統一するなんて「多管閑事」、有難迷惑、大きなお世話もいいところ。本社では手助けのつもりかもしれませんが、かえって邪魔になる、というのです。

 

ちぐはぐ

 実は当時の現地で必要なものは人事制度ではなく、社内教育のノウハウでした。それも専門的な知識や技術は社内でもなんとかなりますが、中堅幹部に対するマネジメントやリーダーシップなどの研修がほぼ手付かずの状態でありました。

 本社のやっていることは現場のニーズには合致せず、「張冠李戴」の状態。高い塀を築いて自己保身を図り、一方では、知見のある範囲で口を出したりと、どうも楽な方に向いているように見えてなりません。本当に、中国での勝負に興味を持っているとは思えないのです。

 

本末転倒いつまで

 悲しいかな人間は「一葉蔽目」、たった一枚の小さな葉で目を覆われると何も見えなくなる。物事の本質が見えていない本社というのは、毎日、現場で戦っている現地の会社にとっては、誠に厄介な存在です。邪魔になっても助けにはならないのです。

 その後、何回となく社内で訴えようやく社内ネットワークとは別にスタンドアロンのパソコンが配置され、日本本社から中国へのアクセスができるようになったそうです。それでも、中国から日本へのアクセスは叶いませんでした。

 これでは、中国ビジネスへの取り組みの本気度が疑われます。覚悟が足りないということでしょうか。こんなアホな本末転倒をいつまで続ける?

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