【人の性は悪】というではないか 中国では性悪説が嵌る そして社員を守る

大連にも菖蒲の花(労働公園2019年5月)

 

会社内で起きたほんの些細な出来事。しかし、これをただやり過ごしてしまうと、後々、大変なことになりかねませんぞ。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

君子は小損を重んじる

  • 中国語:君子重小损   [ jūn zǐ zhòng xiǎo sǔn ]
  • 出典:呻吟語
  • 原文:君子重小损矝细行防微敝(君子は小損、細行を矜み、微敝を防ぐ)
  • 意味:優れた人は小さな損失を重視し、些細なことでも慎重に行動し少しの綻びも防ぐ、との意。「これくらいはいいだろう」という緩みがやがては大事になるとの警鐘。

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神乎其神

  • 中国語:神乎其神   [ shén hū qí shén ]
  • 出典:镜花缘
  • 意味:はなはだ奇妙であること。摩訶不思議であること。

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其の数 計れず(不計其数)

  • 中国語:不计其数   [ bù jì qí shù ]
  • 出典:魏了翁(奏措京湖诸郡)
  • 意味:数えきれないほど多いこと。

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人の性は悪、その善なるは偽なり

  • 中国語:人之性恶,其善者伪也   [ Rén zhī xìng è, qí shàn zhě wěi yě]
  • 出典:荀子(性恶篇)
  • 意味:人の本性は悪であり、それが善であることは、後になって身に着けた人為によるものである。(人間の本性は悪である。しかし、弛みのない努力・修養によって善の状態に達することができるとする説)

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記事:【人の性は悪】というではないか 中国では性悪説が嵌る そして社員を守る

些細なことこそ

 それは一巻きのトイレットペーパーから始まった。会社備品の無断持ち帰りは最初はごく小さな物ばかり。それが徐々に頻度が増し量が増え、対象物がパソコンや自社製品に広がり、結局、手が付けられなくなってしまったのです。

 「これくらいは大したことはない」という安易な会社の姿勢が遠因となった事案です。

 しかし、「君子は小損を重んじる」とあるように、小さなことをおろそかにするとやがては大事につながると警鐘を鳴らしています。

 トイレットペーパーくらいはと高を括って放置していると、社員からは管理のぬるい会社だと見られることになります。その結果、場合によっては経営に致命的な影響を及ぼすことになりかねないことを総経理(社長)は知るべきです。

 

昔も今も

 昨今ではUSBメモリーなどの媒体を使ったデーターの持ち出しという事案も増えているようです。

 一般的に社内の財物が不法に持ち出される例としては、休日や夜間にこっそりと侵入し盗み出す事が考えられます。しかし、ここではむしろ、内部から流出する事案の方が多いといえます。

 例えば、製造工場では原料の持ち出しや製品の横流しなどの不正行為は、「其の数 計れず」と枚挙に暇がありません。中には警備員と結託して製品を大量に持ち出すような不正も決して珍しくはないのです。

 オフィス系の職場でも、社員が出入り業者からリベートを受け取ったりすることも少なくありません。

 そういう内部事案は実はどの企業も多かれ少なかれ発生し、そして昔も今も変わらない総経理の悩み事なのです。

 

怪訝な顔をされても

 日本は島国であることが影響しているのかもしれませんが、普通は「性善説」によって運営されてきました。人を信頼するところからが出発点でありました。

 こんなことがありました。

 ある初めて中国に進出する著名日系企業の担当者に、セキュリティ対策は、「外部からの侵入対策」と同時に「内部の不正防止対策」の両面で考える必要がある、と現地における経験値からの説明をしました。

 その企業の担当者は、「神乎其神」の面持ちで、「自社の社員は信頼するのが当然。勿論、悪いことをするわけが無い。よって内部対策は不要である」と。

 それは、言わば性善説であり、日本人としてはそうありたいものですが、中国ではそうも言っていられないのが現実です。

 日本とは価値観が異なり、さらに会社への帰属意識も薄いこともあり、自社の社員といえども100%信頼するのはいかがなものか。

 中国企業では、経理部門は総経理(社長)の親族で固めていることが多くあります。自社の社員はそう簡単には信用しないぞ、という声が聞こえてきそうな気がします。

 

社員を救うのは

 「性善説」で考えるとどうしても脇が甘くなり、時として足元をすくわれてしまいます。会社備品の持ち帰りや、製品の横流しなど、不正事案が発覚すれば企業として対応せざるを得ません。つまり規定に照らして免職などの懲戒処分を下さざるを得ないことになります。その結果は、その社員はもとより、家族まで巻き込んでしまいます。

 性善説では結果として社員は守れないのです。そんなことを繰り返していては、残念ながら中国現地の会社としての順調な発展は難しいと言わざるを得ません。

 一般的には、現地社員の会社に対する帰属意識はたいへん薄く、自分の利益度合を物事の判断基準としている社員が多い現実を見ると、会社を運営している立場からは、「人の性は悪、その善なるは偽なり」というを「性悪説」にならざるを得ないと言えます。

 しかし、社員なくして会社は成立しませんし、まして社員はある意味で仲間ですから、疑っているだけではとても寂しいことです。この二律背反の中でどうすべきなのか。悩ましい問題ですが、総経理はこれに向き合わなければなりません。

 性善説と性悪説の使い分け、いわばバランスよくマネジメントすることが必須。勿論、些細なことも忽せにせずに。

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