【細行を矜まざれば終に大徳を累わす】黒酢と醤油 機内の天井から水ポタ…
中国赴任後、初めて見聞きする驚きや不思議。何これ、と言いたくなる出来事にいくつも遭遇しました。あれから二十年以上経った今もそうなのだろうか…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
渇すれど盗泉の水を飲まず
- 中国語:渴不饮盗泉水 [ kě bù yǐn dào quán shuǐ ]
- 原文:渴不饮盗泉水,热不息恶木阴(渇すれど盗泉の水を飲まず、熱けれども悪木の陰に息わず)
- 出典:陸機(猛虎行)
- 意味:どんなに喉が渇いても、「盗」の名がよくないので、「盗泉」の水は飲まない。暑くても「悪木」と呼ばれる木の陰では休まない。その故事から、どんなに困窮していても不正に組して財貨を蓄えたりしない、ということの例え。
権宜之計
- 中国語:权宜之计 [ quán yí zhī jì ]
- 出典:後漢書(王允传)
- 意味:便宜的なやり方のこと。一時しのぎ。
細行を矜(つつし)まざれば終に大徳を累(わずら)わす
- 中国語:不矜细行,终累大德 [ bú jīn xì xíng ,zhōng lèi dà dé ]
- 出典:書経(旅獒)
- 意味:ちょっとした些細なことをおろそかにしていると、やがては大きな徳にも悪影響を及ぼすことになる。
馬馬虎虎(まーまーふーふー)
- 中国語:马马虎虎 [ mǎ mǎ hǔ hǔ ]
- 出典:茅盾(子夜)
- 意味:いいかげん。おおざっぱ。でたらめ。不真面目であることを形容した言葉。
- 語源:宋の末期、ある画家が虎の頭を画き終わった頃に、ある人が馬の絵を欲しいと訪ねて来ました。画家は何を思ったのか、その出来上がった虎の頭に馬の胴体を画きました。訪ねてきた人が「これは馬ですかそれとも虎ですか」と尋ねたところ、画家は「馬馬虎虎!」と答えました。訪ねてきた人は訳が分からないので帰ってしまいました。 今度は画家の長男が「これは馬ですかそれとも虎ですか」と質問。画家は「馬だ」と答えました。次男も「これは馬ですかそれとも虎ですか」と画家に質問し、画家は「虎だ」と答えました。 その後、ある日長男が狩に出掛け、遠くから一頭の馬が駆け寄ってきたので、これは虎だと思い込み、矢を放ちました。馬は死んでしまい、結局、馬の所有者に弁償する羽目にあいました。 今度は次男が野外で遊んだときに、突然一頭の虎が現れました。この次男は馬だと思い乗ろうとしました。あえなく次男は虎の餌食となってしまいました。画家は後悔し、この馬虎絵を火で燃やしてしまいました。
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自分でやれば~
会社の車両担当の社員が修理工場に出かけて帰ってこない! 朝、修理工場へ車を持ち込んでいるのだから、いくら何でもお昼には帰社するはず。それが、夕方になってやっと帰ってきました。何をしていたのかと咎めると、彼は怪訝そうな顔で、「気に入らなければ、以後は総経理がご自分で行かれますか…?」。ん?
車の修理や点検を修理工場に頼むと、考えもしないことが起きる可能性がある、と彼は訴えるのです。
詳しく聞いてみるとこうです。例えばブレーキ部品の交換を依頼したら、中古の部品を使われる可能性がある。それに、ややもすると、交換する必要のない部品まで、中古部品に替えられてしまう。すると、その部分が近いうちに故障するから、また修理に行くことになる。
それを防ぐには、修理工場で車の横にずっと張り付いて監視しておかねばならない。だから、(会社のために)夕方に帰社することになった。それを咎めるのであれば、次から自分で行ってくれ。と、それが彼の言い分。
その自動車修理工場はそんなズルいやり方をしていたようでした。結果としては、彼は会社のことを思って一所懸命に現場で頑張っていたことになります。(そう信じたい)
「渇すれど盗泉の水は飲まず」と言われますが、現実の社会ではそうでも無いこともあるよです。
しかし、正直そうに見えるその社員、修理工場からキックバックを貰っていないことを信じたいと思います。
おしぼりで
1998年上海に赴任、その半年後、一人で北京へ出張しました。まだ中国語もよくしゃべれないころのことです。当時の上海の虹橋空港という小さな空港で、北京行に搭乗してしばらくした時のこと。私のすぐ前の席の頭上から水がぽたぽた落ちているではないですか。
おそらく、空調の排水がうまくいかず、漏れているのだと思いましたが、飛行機の中でそんなことがあるのか、初めて見る信じられない光景でした。
その席の乗客がCAさんにそのことを指摘していました。すると、あろうことか、そのCAさんは水で漏れている天井板の隙間に、やおらおしぼりを詰め込み、OKですと立ち去りました。
しかし、所詮それは「権宜之計」。しばらくすると同じ場所から再び「ぽたぽた」が始まりました。その席の乗客は怒り出すのかと思いきや、黙って立ち上がり、さっきのおしぼりを抜き取るや、その場で絞ったのです。ジャーとばかり床に水が落ちたのは言うまでもありません。そしてその乗客は水漏れの隙間に絞ったおしぼりを再び詰めていました。
当時は、乗客とCAがよく口喧嘩をしていた時代。とても乗客ファーストではありませんでした。真後ろでその光景を見ていると、中国流に妙に納得していました。
馬か虎か
とある中華レストランで。
テーブルに黒い色の調味料が二つ置いてある。黒酢と醤油であることは見てわかります。服務員(ウエイトレス)に「黒酢はどっち?」と尋ねたら、何と「醤油ではない方が黒酢です」との答え。
サービスを売りにする飲食業で、そんなの有りかと思いつつ、遠くから訪ねて来てくれた中国人の友人と、顔を見合わせて呆れかえりました。
間違いではないが正しくもない、親しい友達同士の会話の中の冗談のような珍回答。これが現場で顧客に対して行われているかもしれない「馬馬虎虎」な対応実態です。
他愛のない戯言ということで済めばいいのだが。我が社の社員がお客に向かってこんなことを言ってないことを望むばかりです。
小さな事なのだが
総経理(社長)や部下を持つリーダーとしては、そんなことがないように、問題の原因を究明し改善策を共有する。それで大きく変わるはず…
と、思うのはまだまだ中国初心者。ここは、そんな柔い社会ではありません。
機内で飲み物サービスのジュースに氷を入れてくれるように頼んでも、往路の便で使ってしまったので今はない、と平然と言われたことがありました。それなら、復路の便が出発する前になぜ補充しないのかと思いますが、同じ中国人同士では「あ、そう」で終わってしまう、同胞意識がはたらいているのでしょうか。
いずれも小さなことばかりですが、「細行を矜まざれば終に大徳を累わす」と、手に負えない状態に至る可能性があります。
だからこそ、現場ではそんなことが日常的に行われているという前提で、総経理は自衛の術を編み出し、駆使しなければなりません。