【孤掌鳴らし難し】どんなに優秀でも一人でできることは高が知れている
日本での自らが認める経験を引っ提げて中国に赴任。社内の心地よさに、いつの間にか始まる自惚れという大きな誤解。さて、これでは成功など無理なのだが…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
孤掌鳴らし難し(孤掌難鳴)
- 中国語:孤掌难鸣 [ gū zhǎng nán míng ]
- 日本語表記:孤掌難鳴(こしょうなんめい)
- 出典:韓非子(功名)
- 意味:片方の手のひらだけでは拍手して音を鳴らすことができないように、何事も一人の力だけでは成し遂げるのが難しいということの例え。
紙上兵を談ず(紙上談兵)
- 中国語:纸上谈兵 [ zhǐ shàng tán bīng ]
- 出典:史记(廉颇蔺相如列传)
- 意味:紙の上で兵の動かし方を議論すること。机上の空論。
沾沾(てんてん)自喜
- 中国語:沾沾自喜 [ zhān zhān zì xǐ ]
- 出典:史記(魏其武安侯列传)
- 意味:実力以上に自分が優れていると思い得意になること。自惚れること。自分で得意になって喜ぶ。いい気になる。
二人 心を同じくすれば、その利 金を断つ
- 中国語:二人同心,其利断金 [ èr rén tóng xīn,qí lì duàn jīn ]
- 出典:易経(系辞上)
- 意味:二人が心を合わせて協力すれば、金属でも断ち切るような力を発揮するとの意。
記事:【孤掌鳴らし難し】優秀人材でも一人で できることは高が知れている
自惚れの始まり
日本本社の命を受け中国に赴任した人達のことを、所詮Bクラス人材だ、と揶揄されることがあります。エース級であれば本社中枢に配属されているのでしょうから、中国に派遣される社員はAクラスではないのかもしれません。
しかしながら、中国に派遣される人の共通点は、日本では役職や経験は様々であっても、皆それなりに実績を上げてきているということです。「問題児」を高い経費をかけて「飛ばす」場所ではないことくらいは誰にでもわかります。
いずれにしても「選ばれた人材」。中国では、会社からは運転手がついた車をあてがわれ、社員からは総経理(社長)と言われ、いつの間にか「沾沾自喜」、つい自惚れた意識を持ってしまうことも。自認する日本での実績と現地での待遇がもたらす自惚れという訳です。
しかし、自ら喜ぶことが体に染みてくると、他人には鼻につくというものです。
邪魔な体験
赴任当初はやる気満々であったはずですが、途中から雲行きが怪しくなってきます。日本での成功体験が邪魔をしてか、現地事情に目を向けようとせず、日本国内での経験やノウハウだけで運営しがちに陥る。
結果的には、言わば机上の空論。「紙上談兵」と、紙の上で兵を談じるようなものです。日本では優秀な人材だと評価されていたとしても、現地事情を軽く見て途中で挫折し、敢え無く撃沈したケースがどれだけあったことか。
如何に秀でた能力を持ち合わせていたとしても、中国で自身が一人でできることはたかが知れたものです。実は、現地事情がわかっていないという、言わばその日本人にとってのハンディを補ってくれるのが現地社員、スタッフであることに気づくべきです。信頼できる中国人スタッフの支えは中国での事業を成功させるためには、必要にして不可欠なのです。
相互協力
易経にある「二人 心を同じくすれば、その利 金を断つ」と言う言葉は、中国に限らず何処にあっても通じる格言です。理解ある協力者を得ることが事業成功の重大なポイントであると言えます。できれば複数の協力者を見つけ出し、育て社内の要所に配置すれば強力な布陣が出来上がります。
特に中国においては、日本人にとって理解しがたい現地の事情など、自分の不足する所は現地社員らの協力に委ね、彼らに足りないマネジメント分野などは自分が補う。相互の協力関係を実現させることこそ総経理(社長)としての大きな仕事です。
志を同じくする仲間が団結すれば、大きな勢力とも十分に戦えることになります。
中国で成功を勝ち取るには、業種、規模等を問わず、責任者の燃え上がるような情熱、努力・工夫、それらの基礎には自身の人間力が必要であることは言うまでもありません。
人は一人では
中国は日本人にとっては異国の地であり、政治体制を始め習慣や考え方など日本とは大きく異なります。その違いがわからないまま、事業や会社運営を進めようとしてもうまく行くわけがありません。
そもそも、仮に中国で5年、10年生活し現地理解が進んだとしても、地元で生まれ育った中国人にはかないっこないのは明白です。ましてや、中国に来てしばらく経っただけで、「中国がわかったよ」と言う日本人に至っては、何をかいわんや、です。
中国に派遣された、或は中国の現地で起業した人など、中国で業績を上げようとする日本人にとっては肝に銘ずべきことわざのひとつが、「孤掌鳴らし難し」という言葉。
人間は一人きりでは生きられないし、何もすることが出来ないということ例えた言葉ですが、現地社員の力を出してもらわなければ成功は難しいと心得なければなりません。結局、成功に導く肝は総経理自身にあるということです。