【戮力同心】を実現したいが にわかにはできるはずがない

大連・労働公園 サッカーボールのオブジェ(2016年10月)

 

「戮力同心」とは、力を合わせて心をひとつにすること。会社の拡大発展には、社員の団結心を醸成しなければ、と誰もが思うこと。しかし、にわかには実現しないこともまた事実。「元気」や「好き」だけではうまくいかないのです。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

怨気天を衝く

  • 中国語:怨气冲天   [ yuàn qì chōng tiān ]
  • 出典:東周列国志
  • 意味:怨み憤りの気持が天を衝く。激しい憎しみを形容した言葉。

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歳月は人を饒(ゆる)さず

  • 中国語:岁月不饶人   [ suì yuè bù ráo rén ]
  • 出典:梁实秋(中年)
  • 意味:歳月には情実は無く、常に人を老化させる。歳月は人を容赦しない。(古代中国ではなく現代中国の文学者である梁实秋が残した成語)

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陣に臨みて槍を磨く

  • 中国語:临阵磨枪   [ lín zhèn mó qiāng ]
  • 出典:紅楼夢
  • 意味:戦の陣場で作戦を立てる際にやっと槍を磨くこと。危機や災難が降りかかってから準備をすることの例え。にわか作り。

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戮力(りくりょく)同心

  • 中国語:戮力同心   [ lù lì tóng xīn ]
  • 出典:左傳(成公十三年)
  • 意味:力を合わせて心をひとつにすること。一致団結。

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記事:【戮力同心】を実現したいが にわかにはできるはずがない

サッカー試合はド迫力

 生で見るサッカーの試合はド迫力。覇権のかからない親善試合でも同じ。ある時、大連のスタジアムで大連と日本のプロチームの親善試合が行われた。人気スポーツであるサッカーの試合とあって大観衆。中国人ファンで埋め尽くされています。

 いよいよキックオフ。大連のチームがチャンスを迎えると、スタジアム全体に地鳴りのような声援が沸き起こります。一方、日本のチームがチャンスのときには、静まり返っている、と思いきや、聞くに堪えない激しい憎しみの言葉(勿論中国語)が叫ばれ、飛び交って来ました。正に、「怨気衝天」と天まで届きそうな激しい憎しみの気持ということでしょうか。

 アウエーですから当然と言えばそれまでですが、あまりの酷さに負け、遂に居たたまれず前半が終わったところでスタジアムを後にしました。日本人であるとわかると危害を加えられそうな感じすらしたのです。

 

求めたい団結

 それにしても、中国人は無類のサッカー好きです。ある日、そんな社員達に「サッカーチームを作ろうか」と社内でつぶやいたところ、これが大反響! サッカー好きの彼らに異論があるわけは無くさっそく準備。メンバーの募集、会社のロゴをあしらったユニフォーム等々取り揃えて意気揚々の結団をしたのです。

 当時、会社としては大きな目標を掲げ、その達成のために時には辛辣なことを言い、前進することを社員に強力に促すというプレッシャーの強いマネジメントをしていました。

 ただそれだけでは潤いのない無味乾燥で、ギスギスした組織になってしまいかねません。

 それに個人主義の色濃い社員達を、「戮力同心」と一致団結させるために少しでも役立てば、との思いがあったからです。

 

思いもよらない失敗

 そんな背景もあって発足した社内の「サッカー部」。土日には借りたグラウンドで練習を開始。真新しいユニフォームのロゴマークが躍っています。練習だけでは飽き足らなくなって、自社でサッカーチームを持っている顧客に申し込んで試合も行いました。みんな生き生きと動き声を出し、チームを作ってよかったと実感させる光景でした。

 しかし、その喜びもつかの間、怪我をする社員が続出。「サッカーが好き」ということだけで構成したチームで、メンバーは若手社員だけでなく中年社員も多数いました。中年のメンバーは普段の運動不足も影響し体がついていかないことが原因。

 例え中年おじさんであったとしても、頭ではそう思っていません。しかし「歳月は人を饒さず」という中国のことわざのように、歳月は容赦なく体力を奪っていくのです。

 中年社員は仕事上でも中堅でありリーダーとして活躍している社員もいます。中には試合中に転んで骨折し長期休暇を余儀なくされたというようなことも起こり、仕事への影響が懸念される状況になってしまったのです。これは考えもしなかったことでした。

 

にわかの結果

 社員のみんなから大好評であった目玉施策であったのに、こんなに脆くも崩れてしまうとは…

 元気いっぱいスタートしたサッカーチームであったが、現実には指揮官不在、もちろん組織だっていない等々、「臨陣磨槍」ということわざのように、にわか作りの謗りは免れません。万全の準備やきちんとした体制ができていなかったのですから、当然の結果だといえます。

 チームにあったものはカッコいいユニフォームだけ。もちろん、社内にスポーツチームを作ることを否定するわけではありませんが、好きだからということで成功するとは限らない。何事も準備を十分にしておかねばならないということです。けが人を出さないようにするためにも…

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