【忠言耳に逆らう】というが 実はモノ言う人材の活用がモノを言う
中国ビジネスを持続的に発展させるには、日本人総経理(社長)の取り巻きが重要。一人二人の「モノ言う」幹部社員を配置することにより、総経理の経験に現地事情が加わり、現実にマッチした施策・戦略が組まれる。それに総経理が「裸の王様」にならないためにも有用です。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
胳膊 扭るに大腿には過ぎず
- 中国語:胳膊扭不过大腿 [ gē bo niǔ bù guò dà tuǐ ]
- 出典:我这一辈子
- 意味:腕では太腿を捻じ曲げることはできない、との意。弱者が力比べをしても強者の常用程度にも及ばないことの例え。長いものには巻かれろ。
忠言耳に逆らう
- 中国語:忠言逆耳 [ zhōng yán nì ěr ]
- 出典:韓非子(外储说左上)
- 意味:忠告の言葉は、聞く者にとっては耳が痛いから、素直に受け入れられにくいと、との意。良薬は口に苦し。
- 「儿子家·六本」には、“孔子曰:‘良药苦口而利于病;忠言逆于耳而利于行。’”(孔子曰く、良薬は口に苦けれども、病に利あり。忠言は耳に逆らえども行いに利あり)とあります。
我に諂諛する者は吾が賊なり
- 中国語:谄谀我者,吾贼也 [ chǎn yú wǒ zhě, wú zéi yě ]
- 出典:荀子
- 意味:自分におべっかを使い、甘い言葉で近づいてくるような人間は賊と思っていた方が良い、との意。「諂諛(てんゆ)」とはこびへつらうこと。「賊」とは物を奪い取ったり、謀反を起こす人のこと。
我を非として当る者は吾が師なり
- 中国語:非我而当者,吾師也 [ fēi wǒ ér dāng zhě, wú shī yě ]
- 出典:荀子
- 意味:自分を非として指摘してくれる人は、自分にとっては師であると考え大切にした方がよい、との意。
記事:【忠言耳に逆らう】というが 実はモノ言う人材の活用がモノを言う
皇帝のよう
中国の現地会社の総経理(社長)は、地元の社員にとっては雲の上の人であり。言ってみれば絶対権力者である皇帝のようなものだ。そんなことを言う人がいます。
なるほど、総経理が自分で考えた施策や戦術等に反論する社員は一人もいない…ようだ。
それをもって、社員たちは指示通りに仕事が進めているはずだと考えるのは、少しばかり早とちり。「胳膊 扭るに大腿には過ぎず」という中国古来のことわざにあるように、一般的には、目上の人とは争わないで、従った方が得策だと考えることが多い。縦社会の中にあって、言わば、「長い物には巻かれろ」であって、総経理の言うことを理解、納得した訳ではないのです。
特に中国現地の経験が少ない総経理が考えた施策・戦略は、日本での自分の成功体験をベースにしたものならざるを得ず、そこには中国現地事情の視点からの考慮が欠落していることが考えられます。
最も懸念すべきは、自分がそのことに気がつかないこと。加えて、それを指摘する部下社員もいないとき、結果として総経理はピント外れなことをやってしまうことになってしまうのです。
仲良しクラブでは
荀子は「我に諂諛する者は吾が賊なり」との言葉を残しています。おべっかを使い、甘い言葉を弄し、権力者のところには、人が寄ってくる。というのが世の常。それは、小さな会社の総経理であっても同じことなのです。
考えなければならないことは、総経理が自ら「イエスマン」で周りを固めることの是非。総経理に対し諂諛する彼らは、総経理が言うことにことごとく「ハイハイ」と追従する。総経理にとっては、耳触りが心地よく、それだけで仕事が進み、会社が前進しているように思ってしまう。
しかし、イエスマンが幅を利かすようになると、遅からず総経理は「裸の王様」になってしまい、結果的にノーコン状態に陥るのが関の山。
だからこそ、荀子は媚び諂ってくる人は「賊」である、と警告しているのです。中国ビジネスを健全に発展させるには、「仲良しクラブ」のような緩々でぬるい組織から脱却し、緊張感が漂う会社にすることが不可欠と言えます。
モノ言う社員
「忠言耳に逆らう」と言われるように、「雲の上」にいる総経理にとって部下社員の忠言や意見に耳を傾けることは少しばかり抵抗があります。
しかし、総経理自身の言うことに異を唱える社員など、モノ言う部下の存在がとても重要。
仕事の経験は長じている総経理ではあるが、現地事情や習慣等は社員達には敵わない。より良い会社運営のためには、現地をよく知る地元社員達の意見をよく聞かざるを得ない。
さらに、モノ言う社員、異を唱える社員達、言わば「抵抗勢力」と正面から向き合って、意見交換を行う中で、施策・戦術などを整え、実行することは間違いなく会社業績の底上げに貢献し、総経理自らの成長にも直結すると言えます。
吾が師とは
また、荀子は更に「我を非として当る者は吾が師なり」と言っています。意見を述べ、異を唱える社員はむしろ必要不可欠な存在と言えます。確かに、総経理は、自分になびいてくれる幹部社員達に囲まれていては、総経理が誤った判断をした時や暴走した時に、諫めてくれる人がなく、結果的には会社運営がうまく行かなくなってしまいます。
中国ビジネスの持続的発展を望むなら、物を言う幹部社員を総経理の周辺に置き、意見に耳を傾け、自らを「裸の王様」にしないこと。それらは、総経理が自分の努力でできることです。とはいっても、自分の周りは反対意見を言ってくれる人ばかりでは、しんどいですぞ。