【人主の逆鱗に嬰る】 本社を上手に無視するのが良い もうひとつは…

喉の下にある逆鱗に触れたら… (2013年5月瀋陽・故宮)

 

「人主の逆鱗に嬰る」とは韓非子の言葉。逆鱗に触れないでいられるならば成功に近い、と。日本本社に生殺与奪を握られているからと言って、本社の言いなりでは成功しない。眼前の中国現場を睨み、覚悟を決めて取り組むことが求められる。とはいうものの、決して触れてはならないのが…

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

驥は一日にして千里なるも、駑馬も十駕すれば、即ちまたこれに及ぶ

  • 中国語:骥一日而千里,驽马十驾则亦及之矣   [ jì yī rì ér qiān lǐ, númǎ shí jià zé yì jí zhī yǐ ]
  • 出典:荀子
  • 意味:足の遅い馬であっても、十日間も走り続ければ、一日に千里も走る足の速い名馬に追いつくことができる。

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人主の逆鱗に嬰(ふ)るるなくんば、則ち幾(ちか)し

  • 中国語:无婴人住之逆鳞,则几矣   [ wú yīng rén zhǔ zhī nì lín, zé jǐ yǐ ]
  • 出典:韓非子
  • 意味:君主の逆鱗に触れないでいられるならば、成功に近いといえる、との意。龍は普段はおとなしいが、喉の下に鱗が逆さまに生えていて、これに触れたら人を噛み殺す。人間にも、トップにも、このような逆鱗がある。これに触れないように心がけることが大事。

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軽心を以て掉う(掉以軽心)

  • 中国語:掉以轻心   [ diào yǐ qīng xīn ]
  • 出典:答韦中立论师道书
  • 意味:軽視し、たかをくくること。

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無時無刻

  • 中国語:无时无刻   [ wú shí wú kè ]
  • 出典:初刻拍案惊奇
  • 意味:絶え間なく、との意。

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記事:【人主の逆鱗に嬰る】 本社を上手に無視するのが良い もうひとつは…

能天気の総経理

 日本本社から中国に派遣された駐在社員としての総経理(社長)。日本での経歴やバックグラウンドなどの違いはあるものの、中には「掉以軽心」とばかりに自分の職務を軽視し高を括る、いわゆる能天気な人がいます。

 彼らは、概して駐在期間を無難に過ごせばいいと考えているようです。いずれ日本に帰国し、相応の職位が与えられるのだから、下手に力んで業容を拡大しようとリスキーなことをするよりも、現状を維持する方が得策。そう考えるのは容易に想像できます。その結果、ある人はカラオケ(といっても接待を伴うラウンジのような形態)、土日はゴルフと「楽しい」駐在員生活を満喫しているのです。

 しかし、彼を支えている部下社員達のことは一顧だにせず、自分のことだけを考えているのは如何なものでしょうか。

 

日夜努力する総経理

 一方で、自らの使命を自覚し、任された事業を拡大しようと日夜努力している日本人駐在員。さながら「無時無刻」。夢の中でも仕事のことを考えているのです。

 中国現地での事業が成功する可能性の高いのはもちろん後者。但し、四六時中の努力をしたからと言って、必ずしも成功するとは限らないのが中国事業の簡単ではないところです。

 与えられたミッションである現地企業の業容を拡大することを実現するために、責任者であり経営者である総経理(社長)は、目の前にある市場に目を向け、人材とお金を投入しマーケットを開拓するわけですが、実は、その総経理の上には本社のお偉い方々が鎮座しているのです。

 その方々から、あれをやれ、これをやれと言ってきますが、失礼ながら多くはピント外れ。たまに出張で現地に入っただけで中国がわかるわけは無いのですから、やむを得ないことです。

 現地マーケットをわかっていない日本本社が言うとおりに、総経理が実行して成功できるわけがないのです。また、現地社員の目からすると、本社の言いなりになっているとしか映らず、大きな支持協力は期待できません。

 

駑馬も勝てる

 懸命の努力をするにしても、本社の言うことを聞いていたのでは大きな業績拡大は望めません。遠く離れた日本本社よりも、現地のマーケットを目の前にしている総経理の方がはるかにわかっています。成功のソリューションは本社ではなく、総経理自身の眼前にあるのです。

 現地に根ざした懸命の努力をすれば業績は上がります。将来を約束されたサラブレッドではなくとも、実績によって大きな評価を得ることになります。

 中国・戦国時代の思想家である荀子が残した「驥は一日にして千里なるも、駑馬も十駕すれば、即ちまたこれに及ぶ」との言葉は、並の人間でも生き残ることができる原理として勇気づけられます。

 しかし、本社から見れば、「言うことを聞かない総経理」となりかねません。上から好かれる「愛い奴」ではないのです。そもそも日本本社を向いていないのですから、まずはその覚悟が必要です。

人主の逆鱗

 覚悟を決めた後は、本社のことは上手くあしらい、ただ現場を見て、ひたすら懸命の努力を続ける。部下社員達の力を結集し、本社から有無を言わせないほどの現地会社としての業績を上げ、勝ち取った高評価。何とも気持ちの良いものです。

 但し、ここにもひとつだけ条件があります。如何に本社の言うことを聞かないといっても、駐在している総経理は所詮雇われの身、お偉い方々の逆鱗には決して触れてはなりません。

 韓非子には「人主の逆鱗に嬰るるなくんば、則ち幾し」とあります。それをやってしまうと味方が無くなり自分のサラリーマン生命を失うことにならないとも限りません。

 日本国内、中国と、どこにいても大きな竜との闘いは続くということです。現代のサラリーマンには気の休まる場所は希少です。

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