【機は失するべからず】 スピード感が無くては大きな成功を掴むべくもない
チャンスを目の前にして逡巡していはいられない。しかし、現実はどうであろうか。決めきれないと、成功をものにすることは難しいのだが…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
華而して実らず(華而不実)
- 中国語:华而不实 [ huá ér bù shí ]
- 出典:左傳(文公五年)
- 意味:花は咲くが実がならないこと。外見は立派だが中身はない、見かけ倒しであることの例え。
機は失するべからず、時は再び来たらず
- 中国語:机不可失,时不再来 [ jī bù kě shī,shí bù zài lái ]
- 出典:旧五代史·晋书·安重荣传
- 意味:チャンスは得難いもの、取り逃がしてはならない。好機逸すべからず。
棋を挙げるも定まらず(挙棋不定)
- 中国語:举棋不定 [ jǔ qí bù ding ]
- 出典:左傳(襄公二十五年)
- 意味:碁石を手に持ったまま打つのをためらうこと。ためらって態度を決めかねる。
虎頭蛇尾(ことうだび)
- 中国語:虎头蛇尾 [ hǔ tóu shé wěi ]
- 出典:李逵负棘
- 意味:頭は虎の如く大きく、尾は蛇の如く細い。始めは気勢が極めて大きいが、その後、意欲はたいへん小さくなることの例え。竜頭蛇尾。
直截了当(ちょくせつりょうとう)
- 中国語:直截了当 [ zhí jié liǎo dàng ]
- 出典:清·李汝珍(镜花缘)
- 意味:前置きなどを省きすぐに本題に入ること。回りくどくない。単刀直入であること。「直截」はずばりと言うこと。「了当」は、はっきりしていること。
記事:【機は失するべからず】 スピード感が無くては大きな成功を掴むべくもない
直入の勧め
ある時、本社から「早期にシェアを拡大するためにはM&Aも一法だ」との話があった。よっしゃー、やりまっせぇ。本社が言うのなら願ってもない事。
買収が成功すれば一気にシェアが拡大するのですから。中国現地のマーケットを開拓することを任務とする身とすれば、やってみたくもなります。
そこで、ある先発の同業の会社に狙いを定め、その会社の総経理(社長)に「会社を売る気はないか?」と、直接尋ねたことがありました。
総経理からは「馬鹿なことは言うな。俺が心血を注いで育てた会社だぞ!」とでも言われるのかと思いきや、彼は「いくらなら買うのか?」と、びっくりするひと言が。
何の衒いも無く「直截了当」に尋ねた言葉に対して、相手の返答もまた「直截了当」。そう、中国では、何も気にすることなくズバッと言う方がスピード感もあって良いのです。
尻すぼみ
条件次第では会社を売ってもよいという会社の存在を本社に報告。早速、本社の担当者が現地に入り調査を行った。相手方の財務諸表を基に資産状況などを調べたのですが、残念なことに中国の規模の大きくない会社ではさほど細かく財務処理をしている訳ではありません。結局、「よくわからない会社」を買うのは割が合わないということになり、「虎頭蛇尾」で終わってしまった。
とにかく、まずは買収し自分の掌に乗せ、余分なものは取り除き、必要なものを残す。そう大きな買い物ではないのですから、すべて織り込み済みで買うというのが成功する中国式。
本社は、M&Aも辞さないという最初の態度であったものの、結局は決断を遠ざけたいような雰囲気になってしまった。うまく行かなかったときの責任を負わされるリスクを取りたくなかったのかもしれません…
決められない
海外での仕事に慣れてくると、日本のスピード感の遅さには愕然とします。加えて、現地会社を代表する「総経理」という立場であっても、主だった権限が無いことにも疑問を感じます。
何をやるにも日本本社にお伺いを立て、承認や指示をもらわねばならない。地方政府や顧客と相対した際に、相手方は当方の申し入れに大抵は即決をしますが、相手方からの申し入れには、持ち帰り日本本社に伺いを立てたのちに回答する、そんな風になります。
求められるのはスピードであるのに、「挙棋不定」の態度では大きな発展は望むべくもありません。
見かけ倒しの愚
チャンスを目の前にして逡巡していては、いつになっても大きな成功を手にすることなどできるわけがありません。
現地の責任者である総経理だけでなく、本社サイドにおいても「機は失するべからず」との格言を心すべきではないでしょうか。
さもなければ、ポロシャツで仕事をしている相手方に比べ、日本人はスーツ、ネクタイで外面はきちんとしているが、実は「華而して実らず」ではないかと陰口を叩かれそうです。