【蓬も麻中に生えれば扶けずして直し】 競争原理が働かない時のひとひねり
社内の友人を失くしてしまうような競争なんてできない… 社員同士の競争に及び腰の彼等。容認して「なあなあ」の組織にするわけには行かない。それでは業容拡大が覚束ないからだ。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
怨みは深浅を期せず、其れ心を傷(そこな)うに於いてす
- 中国語:怨不期深浅,其于伤心 [ yuàn bu qī shēn qiǎn, qí yú shāng xīn ]
- 出典:戦国策
- 意味:些細な怨みであっても、相手のプライドを傷つけると手ひどい報いを受けることになる、との意。
- 故事:戦国時代の「中山」という小国の王が酒宴を開いた。招待のうちの一人である「司馬子期」のところまで羊のスープが回ってこなかった。彼は激怒し大国の「楚」に走り、楚王をけしかけて「中山」に攻め込み、中山の王を追っ払った。国を追われた王は「怨みは深浅を期せず、其れ心を傷うに於いてす。吾、一杯の羊スープをもって国を失う」と述懐した。
興味索然
- 中国語:兴味索然 [ xìng wèi suǒ rán ]
- 出典:瀛壖杂志
- 意味:面白味が無い事。興覚めする。
積むれば少 多と成る(積少成多)
- 中国語:积少成多 [ jī shǎo chéng duō ]
- 出典:李商隐(杂纂)
- 意味:絶え間なく積み重ねていけば、少ないものが多くなる。塵も積もれば山となる。
脳汁絞り尽す(絞尽脳汁)
- 中国語:绞尽脑汁 [ jiǎo jìn nǎo zhī ]
- 出典:老舍(四世同堂·偷生)
- 意味:ありったけの知恵を絞ること。「脳汁」は脳みそのこと。
蚍蜉(ひふ)大樹を撼(うご)かす
- 中国語:蚍蜉撼大树 [ pí fú hàn dà shù ]
- 出典:韓愈(调张籍)
- 意味:自分の力量をわきまえず、大それたことを企むことの例え。「蚍蜉」は、大蟻のこと。
蓬(ほう)も麻中(まちゅう)に生えれば、扶(たす)けずして直し
- 中国語:蓬生麻中,不扶而直 [ péng shēng má zhōng, bù fú ér zhí ]
- 出典:荀子(劝学)
- 意味:蓬は普通は地面に沿うように生えている。しかしまっすぐ上に伸びる麻の中に植えると、支えがなくともまっすぐに育つ。良好な環境が人にプラスの影響を与えることの例え。
記事:【蓬も麻中に生えれば扶けずして直し】 競争原理が働かない時のひとひねり
ぬるま湯組織では
競争原理が働いていない組織はぬるま湯でしかなく、会社の一層の活性化は望めません。しかし、同僚同士で競争したくないという社員。市場経済に移行したのが1978年とはいえ、競争社会の中で十分に揉まれ育っているとは言い難い現実があります。加えて、同僚との人間関係を壊しかねないと、なかなか思うようには乗っては来ません。
そんな社員達にも「競争」を受け入れてもらわないと、業容拡大の加速は困難です。そこで、総経理(社長)としては、自らの経験と現地事情に応じて「绞尽脑汁」、知恵を絞らねばなりません。
優秀賞の弊害
日系企業では、時にセールスキャンペーンを実施。「キックオフ集会」を開き、最優秀社員賞や敢闘賞、努力賞などの会社としても大盤振る舞いをすることを宣言。
実は、この種のやり方では、賞をもらえるのは多くの営業社員の中でせいぜい二人か三人。すると、結果が見えてきた頃には、大半の社員が選外を自覚し「興味索然」状態に。
途中で努力をあきらめ白けた社員達が多くては、結果としてトータルの成果伸長は、あまり期待できません。むしろ、個人目標を達成した社員全員に何らかの「賞」が行きわたる仕組みの方が、全体としての効果が上がるように思います。
負けた者へ
そして、勝利を手にした社員はたとえ放っておいても気持ちよく仕事を続けるでしょうが、問題は競争に負けた社員。
「怨みは深浅を期せず」とあるように、些細なことだと思うかもしれませんが、場合によっては、社内に不協和音を生じさせかねません。
こういった競争の中では、負けた社員へのフォローにこそ重きを置き、彼の面子を潰すことの無いような配慮をすべきであることを忘れてはなりません。
無謀な挑戦
そして、そんな競争の中で極めつけは、「上海のグループ会社に勝とう」という戦略です。
大連とは市場規模が大きく違う上海に挑むというのは、「蚍蜉(ひふ)大樹を撼(うご)かす」ことに他なりません。
しかし、もし、大連が上海を上回る成果を出したらどうなるか。これは誰もが驚くはず。上海は大連に負けたくないですから更に頑張ることでしょう。するとグループ全体としての成果は大きく伸びます。
この「無謀な競争」は勝てはしませんでしたが、上海を脅かすところまで詰め寄りました。大連側のもう一重の底上げはできたものと自己評価ができたのです。
競争環境の中で
最初は真似事のような競争であっても、「積少成多」の格言のように、様々な競争シーンにおける小さな成功体験が、やがては大きな成功を勝ち取る因と成ることは間違いありません。社員達にも自信がついたと思います。
人は、多くの素質を持っていなくても、「麻の中の蓬」の如く、環境によっては能力が開花し成長することも大いに期待できます。環境や良い交友関係に恵まれれば、それに感化されて立派な人間に育つのだと考えたい。
競争の仕組みを作り、楽しく実行した環境の中で、努力し大きく成長した社員たちを見ることの喜び。彼らにとって最初はなじめなかった「競争環境」ですが、結果は待遇面の改善を自らの努力で勝ち取り、仕事や人生に自信を持てるようになったことだと思います。