【患いは忽せにする所より生ず】 魔は天界に住むというではないか
大連は中国の中でも比較的「こなれた街」です。そんな大連の繁華街を歩くと時にはびっくりするような出来事に出くわすことも…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
及鋒一試
- 中国語:及锋一试 [ jí fēng yī shì ]
- 出典:曾朴(孽海花)
- 意味:機に乗じて事を為すことの例え。
智者も千慮に必ず一失有り
- 中国語:智者千虑,必有一失 [ zhì zhě qiān lǜ,bì yǒu yì shī ]
- 出典:晏婴(晏子春秋·杂下)
- 意味:どんなに聡明な人でもたまには失敗がある。「千慮の一失」。
肥猪拱門(ひちょきょうもん)
- 中国語:肥猪拱门 [ féi zhū gǒng mén ]
- 出典:兒女英雄傳
- 意味:太った豚が(アーチ型の)門を押しのける、との意。カモがネギを背負って来ること。
不出所料
- 中国語:不出所料 [ bù chū suǒ liào ]
- 出典:孽海花
- 意味:予想通りであること。案の定。
患(わずら)いは忽(ゆるが)せにする所より生じ、禍(わざわい)は細微より起こる
- 中国語:患生于所忽,祸发于细微 [ huàn shēng yú suǒ hū, huò fā yú xì wéi ]
- 出典:说苑(敬慎)
- 意味:患いは、物事をいいかげんにするところから起こる。禍は些細なことから起こる。気のゆるみと問題の対応についての戒めの言葉。
記事:【患いは忽せにする所より生ず】 魔は天界に住むというではないか
携帯返せ!
2000年に入り大連でも急ピッチに経済が発展していることを実感できました。そんな頃の大連中心地の商業街での目撃談。
前を歩く若い中国人カップルが何やら慌てている。男性が携帯電話を取り出し、どこかに電話をかけている。すると、数メートル前方で呼び出し音が聞こえた。
二人でそこに駆け寄り、「携帯を返せ!」と叫んだところ、悪びれることなく呼び出し音が流れている携帯を差し出した。それを受け取ったカップルは、何事も無かったように肩を寄せ合って歩いて行きました。
どうやら女性のバッグから携帯をすり取ったのであろうが、すぐにばれて「犯人」はすぐに返した、という一幕。すり取った方は素直に返したところを見ると、「及鋒一試」でやったのでしょうか。
「被害者」の彼女も、デートに夢中で自分のバッグに注意が及んでいなかったのかもしれません。
ついでながら、ショルダーバッグ斜め掛けで出かけるときには、「身体の前」に置くのが中国流。日本のように身体の後ろに回すのは危ないですぞ! 何しろ、「敵」は鵜の目鷹の目で獲物を探しているのですから…
ベテランでも
そんな獲物を探す不埒者にとって、お尻ポケットの長財布は「肥猪拱門」であり、言わば「さあどうぞ」と言っているようなもの。ここは性善説の日本ではないのに…
とある中国駐在ベテラン日本人が、うっかりお尻ポケットに長財布を入れたまま繁華街を歩き、見事に摺られた。彼にとってはそれくらいのことはわかっているはずだが、「千慮の一失」といったところでしょうか。
案の定
大連から瀋陽へ出張する際に、高速バスを利用したことが何度かあった。その都度、社員から、「長距離バスの乗客の半分以上は泥棒である。だから目的地に着くまで寝込んではならない」とのアドバイスをくれたことを覚えています。
そういうふうに言われると、気になって眠る事もできません。車内は意外と静かなのに…
また、大連・開発区の日系企業に赴任して間もない日本人駐在員が、「俺はタクシーではなく、路線バスに乗って市内へ行く」と。40キロほど離れた大連市内へ揚揚と出かけたのはよかったのだが、「不出所料」、財布をすられてしょんぼりと帰ってきました。
現地を見くびったり軽く見ては碌なことがありません。
危ない有頂天
日本では会社組織の中の小さな歯車でしかなかった。にもかかわらず、中国に赴任して以来、総経理(社長)、総経理と持ち上げられ、その心地よさと共に心のどこかに気の緩みができても無理からぬことです。
しかし、ちょっとしたその気の緩みで大きな事故が起こるし、些細なことから大きな問題につながるというもの。心の隙間に入り込む「魔」。「魔は天界に住む」というではないか。有頂天の状態が実は最も危ない。
リーダーたる者は「患いは忽せにする所より生じ、禍は細微より起こる」を銘記したいものです。現地会社の規模の大小を問わず、物事の成否は結局自身の振る舞いにある。