現地会社で【術而御之】の統治は効果少なし ツボを心得た術を駆使するべし
会社内の自分の立場を利用して不当に個人的利益を得る行為。いわば他人の褌で相撲を取るようなもの。もしそんなことが自社の中で行われているとしたら…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
術なくしてこれを御せば、身瘁臞(すいく)すと雖も、猶お未だ益あらず
- 中国語:无术而御之,身虽瘁臞,犹未有益也 [ wú shù ér yù zhī, shēn suī cuì qú, yóu wèi yǒu yì yě ]
- 出典:韓非子(外儲説)
- 意味:"術" をわきまえずに経営すれば、身は疲れ果てやつれるばかりで、その割に効果はあがらない。瘁臞とはやつれ (瘁) やせる (臞)こと。
小事を軽んずる勿れ、小隙は舟を沈む
- 中国語:勿轻小事,小隙沉舟 [ wù qīng xiǎo shì, xiǎo xì chén zhōu ]
- 原文:勿轻小事,小隙沉舟;勿轻小物,小虫毒身(小事を軽んずる勿れ、小隙は舟を沈む。小物を軽んずる勿れ、小虫は身を毒す)
- 出典:吴尹子·九药
- 意味:小さな隙間が船を沈めることになり、小さな虫が体を害することもある。些細なことを軽視してはならないとの意。
其の事無きが若し(若無其事)
- 中国語:若无其事 [ ruò wú qí shì ]
- 出典:叶圣陶(线下・潘先生在难中)
- 意味:まるで何事もなかったかのようであることを形容した言葉。
花を借り仏に献(ささげ)る(借花献佛)
- 中国語:借花献佛 [ jiè huā xiàn fó ]
- 出典:刘鄂(老残游记)
- 意味:花を借りて仏に供えること。他人の物で義理を果たす。他人のふんどしで相撲を取る。
不可思議
- 中国語:不可思议 [ bù kě sī yì ]
- 出典:杨炫之(洛阳伽蓝记·城内永宁寺)
- 意味:神秘的で奥深いこと。想像できない、理解しがたいこと。
枚挙に勝(た)へず(不勝枚挙)
- 中国語:不胜枚举 [ bù shèng méi jǔ ]
- 出典:王楙(野客丛书·俗语有所自)
- 意味:(数が多くて)いちいち数えきれないこと。数量がたいへん多いことの形容。枚挙にいとまがない。
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受験料
「この会社の面接代はいくらですか?」
ある時、中途採用面接で応募者から発せられた質問がこれ。
業容拡大に伴い現業部門の社員を増強することになり、思うところがあって、面接に立ち会ったときのことです。当時の日系企業は現地の人達には結構な人気で、応募者が多数であったため、数人ずつ面接を行った際、ある応募者からの「不可思議」な質問に、一瞬その意味が理解できませんでした。
どうも彼は、あちらこちらの日系企業の面接を受けた際に、面接費を払わされたらしいのです。
想像するに、人事担当の現地社員が、上司には内緒で応募者からいわば受験料として、面接代を徴収していた会社が少なからずあったようです。
もちろん「わが社ではそんな費用は不要です」と答えました。
人の褌
当時は、自らの立場を利用して、私利を得ようと策を巡らす社員がどの会社にもいたものです。
「借花献仏」の域を出ない悪巧みですが、よくもまあ色々な方法を思いつくものです。もし、日本でそんなことをやろうものなら一発退場ですが、当地ではうまくやると「あの人はなかなかのやり手」だとの評価を得ることも。
それにしても、もしかしたら自分の会社にもそんな臆面が無い不届き社員がいるかもしれないと思うとぞっとします。
正義感だけでは
実は、自分の立場を利用して出入り業者からリベートを要求したりするなどの不正行為は「不勝枚挙」。
いずれも不埒な行為ではありますが、長い長い歴史というバックグラウンドがあってのことでありましょう。昨日今日中国に来たばかりの外国人社長が、逆立ちして不正は許さんと叫んでみても変わるとも思えません。
面倒なのは総経理の周辺にいるのはすべてが中国人社員達であることです。正義感で一喝しても、むしろ社員の協力を得られなくなるばかりか、全員を敵に回すことになってしまいかねません。
小事とはいえ
テレビや新聞で報道される巨悪に比べればこの手の不正は小さな悪事。しかし、だからと言ってそれを是認することは決してできません。これをどう捌くかが老練な総経理(社長)の腕にかかります。
「小隙は舟を沈む、小虫は身を毒す」とあるように、小事を軽く見てはならないのです。
もし、「小さなことだから…」とその対応を放置すると、瞬く間に“成功事例”として社内に伝わり、総経理は何も知らない虚け者と思われ、社員にやりたい放題される会社になってしまう可能性すらあります。
妙に気になる
例えば、ある社員が自分の携帯電話を最新型に変更したことが妙に気になる等、日頃から社員を観察していると「何か」を感じる時があります。そんな匂いを感じた時には上手に人事異動を行うのも一法です。
本人に後ろめたいことがあれば、特に問い詰めなくても、それだけでばれていたことに気がつくはずです。
但し、それで反省するようなことは無く、たいていは、何もなかったように新しい部署で仕事をしています。ですから、こちらもそんなに気を遣うことは必要ありません。サラッとやればよいのです。「若無其事」とばかりに。
術を持って
常に安閑とはしていられないのが総経理(社長)。大切な組織を預かり発展させるというミッションを託されているのですから。また、自ら立ち上げた事業体であればなおさらです。そこで必要となるのが「術而御之」。つまり「術」を以て統治することが現地流。
「術」とは、総経理として社員をマネジメントするノウハウであり、ツボを心得ることです。正面からの取り組みだけでは、疲れるばかりで、効果は限定的。
会社内には「小さな悪事」を働く社員は、ある意味で付き物。そんな社員を見逃さず、勤務評価で総経理としての意思を示すこと。悪事を働けばどうなるか、身をもって知らしめるのがよい。
そのためには、総経理として人事や金などの権力をしっかりと握り、組織の隅っこまで常に自分の目でよく観察し掌握しておくことが肝要であることはもちろんです。