【兵の形は水に象る】 あの手この手で未収金に対応 正攻法を含め柔軟に

音楽に合わせて吹き上がる水(2015年9月大連・東港音楽噴泉広場)

仕事をしていると、時には「間尺に合わない」ことをしなければならないことがあります。中国での売掛金未回収への対応もそのひとつ。とにかく簡単ではありません。

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

一言千金

  • 中国語:一言千金   [ yī yán qiān jīn ]
  • 出典:越绝书(外传纪策考)
  • 意味:値千金の一言。

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奇談怪論

  • 中国語:奇谈怪论   [ qí tán guài lùn ]
  • 出典:履园丛话
  • 意味:怪しげな理屈のこと。荒唐で人情にも理屈にもかなっていないこと。

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視若無睹

  • 中国語:视若无睹   [ shì ruò wú dǔ ]
  • 出典:应科目时与人书
  • 意味:見ていながら無視すること。看過するとの意。

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兵の形は水に象る(兵形象水)

  • 中国語:兵形象水   [ bīng xíng xiàng shuǐ ]
  • 出典:孫子(虚実篇)
  • 意味:刻々と変化する状況に応じて、水のように変幻自在に変化していくこと。水は大きなエネルギーを持っているが、柔軟そのものである、との意。孫子の兵法。

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本を舎てて末を逐(お)う(舍本逐末)

  • 中国語:舍本逐末   [ shě běn zhú mò ]
  • 出典:吕不韦(吕氏春秋・上农)
  • 意味:事を成す時に根本には注意を払わず、末節にとらわれることの例え。本末転倒。

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裏を感じる

 ある時、現地の社員から「顧客を接待したいので許可が欲しい」という申し出がありました。接待の理由を尋ねると「未収金を回収するため」だというのです。ん、何かおかしい…

 会社がサービス業務を顧客に提供し、その対価としてお金をいただく。ところがどういう訳かそれをお支払いいただいていない。更にそれを支払ってもらうために担当者を接待するのだという。何か裏のある「奇談怪論」のように思えたのです。

 

看過できない

 約定の通りに顧客から支払いを得ることが当然でありますが、中国ではそうでもないことが現実に存在するようです。「売掛金の回収」は会社経営上の課題のひとつなのです。

 キャッシュフロー経営が重要な昨今、せっかくの売上金が回収できないとなれば大問題です。

 まして、社員達が汗を流して顧客にサービス提供をした対価なのですから、総経理(社長)として「視若無睹」のようなぬるい対応はできません。

 

驚きの事態に

 こんなこともありました。

 とある地元重要顧客が長期に亘って支払いを遅らせ、未収金がかなりの額となっているとの報告が担当の社員からあった。

 誰でも知っている著名企業でもあり、まあいいかと思っている間にどんどん未収金がたまっていったようです。報告を受け、社員の汗の結晶を簡単に損金処理するわけにもいかず、頭を抱えてしまいました。

 どう対応するか考えあぐねた結果、懇意にしていた地元の中国人経営者を尋ね、事の次第を相談、アドバイスを仰ぎました。

 そして、数日後、連絡があり共に食事をしようとのお誘いを受け、指定のレストランに行くと、そこには、何と件の「未収金顧客」のトップが同席しているではないですか!

 さらに驚くことに、その場で会社の財務担当者に電話し、「すぐに支払うように」との指示を出してくれたのです。お陰で全額を一発で回収することができました。正に「一言千金」を目の当たりにして、人脈の大切さがよくわかりました。

 

金払いの悪さ

 それにしても、何でこうも金払いが悪いのでしょうか。別にお金がないわけでもないようですが。

 責任者が出張中で支払い決裁がされないなど、何だかんだと理由をつけては支払いを先送りするのは常。会社の経理担当者は少しでも支払いを先に延ばすと、上司から評価されるという不思議な話しも聞きました。

 そんな状況の中で、現地会社を運営する総経理(社長)にとって、何よりも大事なのは、未収金に対する取り組み姿勢ではないでしょうか。もしも、多少の未回収金の発生は止むを得ないと総経理が考えると、そういう風潮が社内に緩みとして蔓延してきます。

 ですから、例え少額の未収金でも断固として回収するという、毅然とした姿勢が総経理には求められます。時には、未収金額以上のお金をかけて法的対応をすることだって必要だと考えます。計算上では割が合いませんが、会社としての未回収金に対する強い姿勢を知らしめることはたいへん重要であると思います。

 しかし、「そんな間尺に合わないことをしてどうするんだ」という言葉が、本社辺りから聞こえてきそうです。それは、現場を知らない本社の人のいうことで、「本を舎てて末を逐う」と、言わざるを得ません。残念なことです。

 

硬軟両様

 兵の形は水に象る」とは何も戦場だけの話ではありません。中国の売上金の回収のためには、状況に応じた硬軟両様の対応が不可欠です。

 例えば、先方が「先延ばし」を評価するのであれば、こちらは回収担当者を配置し、回収金額や回収率を評価することも有りです。

 いずれにしても、中国で売上金の回収は一筋縄では行かない、最も苦労をする問題のひとつなのです。

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