【勃然変色】とばかりに叱責するのはNG 失敗から学ぶ中国叱りの術
緊張感を欠いた態度やテキトーな仕事をする社員を目の当たりにすると、我慢がならずつい…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
狗急にして墻(かき)を跳ぶ(狗急跳墙)
- 中国語:狗急跳墙 [ gǒu jí tiào qiáng ]
- 出典:敦煌变文集(燕子赋)
- 意味:追い詰められた犬は塀を飛び越える。転じて悪人は追い詰められると捨てばちな行動に出る。窮鼠猫をかむの意。
泰然と之に処す
中国語:泰然处之 [ tài rán chǔ zhī ]
出典:袁宏(三国名臣序赞)
意味:沈着に対処すること。ベースは根気。
人を責むるには含蓄せんことを要す
- 中国語:责人要含蓄 [ zé rén yào hán xù ]
- 出典:呻吟語
- 意味:人を責めるときは控えめに。直線的ではなく婉曲な言い方で。露骨ではなく譬えでも引いて指摘するのがよい。というのが原文の大意。要は言いたいことのすべてを言わない方がよいとの意。
勃然変色
- 中国語:勃然变色 [ bó rán biàn sè ]
- 出典:孟子(万章下)
- 意味:さっと顔色が変わること。突然顔色を変えて怒り出すこと。
蒙混過関
- 中国語:蒙混过关 [ méng hùn guò guān ]
- 出典:林予(雁飞塞北)
- 意味:騙しの手段を使って、審査などをごまかし突破、凌ぐこと。
職場暴力(パワハラ)
- 中国語:职场暴力 [ zhí chǎng bào lì ]
- 意味:パワハラ。中国での定義は職場の中で正当な業務範囲を超えて他人に精神的肉体的苦痛を伴う行為を与えること、とあります。
記事:【勃然変色】とばかりに叱責するのはNG 失敗から学ぶ中国叱りの術
つい声を荒げる
朝礼中、訓示中の総経理(社長)の目の前で、並んでいる社員の内の一人が気怠そうにあくびをした。思わず「やる気が無いのならこの場から出ていけ!」と言ってしまった。「勃然変色」であった。
また、ある時には、高い能力を持っているにもかかわらず、実力の6割程度の仕事をしている営業員がいました。月末が近づくと手を抜き、そこそこの実績しか出そうとしない。「蒙混過関」、お茶を濁したような態度に我慢ができず、つい「こんな成績でどうするんだ!」と皆の前で大声を上げてしまったこともありました。
大声の叱責に牙
実はこれ、失敗の見本。
大きな声で皆の前で叱責し、本人ばかりか組織全体に奮起を促すという、日本でやっていた時と同じような感覚での対応は、中国においては誤ったマネジメントです。
人前で叱責することは、彼らの面子を潰してしまうことに他ならないからです。
「狗急跳墙」という格言は、言わば窮鼠猫を噛むといったところか。
普段、従順に見えていた部下社員ですが、面子を潰された。それも外国人上司から叱責され面子を無くしたような場合に、突如牙をむいて、向かってくるのです。
そしてそれと同時に、総経理(社長)は、周囲の全員を敵に回すことになりかねません。如何にタテ社会の中国とはいえ、上からの指示が絶対的ではない場合もあるのです。
更に深刻
中国では頭ごなしに人の面前で叱りつけることは何も得がありません。下手をすると「職場暴力(パワハラ)」だと、訴えられかねません。もしこれがストライキなどに発展すれば最悪です。
しかしながら、そんな社員から逆襲されることを恐れるあまり、総経理として何も言わないでいると、ますます彼らをのさばらすことになり、最終的には制御不能の組織になってしまいます。
叱責の作法
例え叱責されて当然であったとしても、指摘された人が恥ずかしい思いをしたり、反発するようでは、結果的に叱責の効果はなく、ただ叱っただけに終わってしまいます。
「人を責むるには含蓄せんことを要す」との格言を肝に銘ずる必要がありそうです。つまり、叱責するときには、十のすべてを言うのではなく、相手の立場も考えて、七か八ぐらいで止めるのがよいと。
さらに婉曲な言い方をして、相手が叱責を受け入れやすいように配慮するのが肝要であるといえます。
完膚なきまでに叱るのではなく、相手の立場になって叱責することが中国では特に重要です。
冷静な叱り
失敗をしでかした社員であっても、叱責をするときには、瞬間湯沸かし器のように総経理が自らカッカしてはならないのです。
先ずは冷静に対応することが絶対条件です。「泰然と之に処す」とあるように、“根気強く冷静に”、という態度が最も重要であると考えます。
言ってみれば、怒鳴っている自分を眺めているもう一人の冷静な自分がいたのなら、対応はずいぶん変わってきます。