【囲師には必ず闕く】 厳しい叱責で士気は上がるか 完璧主義は似合わない

大連・労働公園の銀杏の大木(2017年11月)

 

目標を達成できなかった部下社員に対して、「何だこりゃあ!」「どうなってんだ!」とやったとしたら…。 しかも他の社員達の面前での叱責はアウト!

 

成功のヒント 中国ことわざ・格言

囲師には必ず闕(か)き、窮寇には迫ること勿れ

  • 中国語:围师必阙,穷寇勿迫   [ wéi shī bì quē, qióng kòu wù pò ]
  • 出典:孫子
  • 意味:敵を追い詰めても、必ず逃げ道を開けておくこと、窮地に追い込んだ敵には攻撃をしかけてはならない。という意味の孫子の兵法のひとつです。数に劣る敵軍を包囲したとしても、「窮鼠猫をかむ」と言われるように、死を覚悟した相手は死に物狂いに反撃してくる恐れがあるので、敵の逃げ道を作っておけとの意。「寇」とは敵のこと。

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含糊其辞

  • 中国語:含糊其辞   [ hán hú qí cí ]
  • 出典:宋・袁燮(絜斋集)
  • 意味:気掛かりがあり、率直に言葉に出したくないことの形容。言葉を曖昧にすること。

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再衰三竭

  • 中国語:再衰三竭   [ zài shuāi sān jié ]
  • 出典:左傳(·庄公十年)
  • 意味:軍隊において戦いが始まった時の鋭気が徐々に喪失し、戦闘力がますます弱くなることの例え。精根尽き果てること。

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寛宏大量

  • 中国語:宽宏大量   [ kuān hóng dà liàng ]
  • 出典:元・无名氏(鱼樵记)
  • 意味:度量が大きく、寛大な心で対応すること。

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人の悪を攻むるには、太(はなは)だ厳なること勿れ

  • 中国語:攻人之恶勿太严   [ gōng rén zhī è wù tài yán ]
  • 出典:菜根谭
  • 意味:人を叱るときにはあまり厳しい態度で臨んではならない、との意。厳しすぎるとかえって相手やその周囲からの反発を招くし、効果もあまり期待できない。大声で怒鳴ったりするのは最悪である。

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計画的な仕事

 「今月の業績は予定通りうまくいっているかい?」と中国現法の営業会議で尋ねると、「まあ、大体ね」と何とも「含糊其辞」の反応が。

 どうも、現地社員達は計画的な仕事が苦手で不慣れなよう。頑張っているとはいえ、運否天賦の域を脱していない。これでは、月々の業績がどうなるかは、終わってみないことにはさっぱりわからない。

 そこで、ホワイトボードに「PDCAサイクル」の絵を書いて、計画を立てて目標達成に向かって努力することの重要性を訴えるのですが、実際には、計画通りに仕事を進めるのは簡単ではありません。

 

衰える士気

 いつ聞いても「まあ、大体ね…」では、埒もあかず、いらつきのあまり、つい社員達の前で「どうなってんだよっ!」と声を荒げてしまうと、そこで一巻の終わり。

 社員の皆の前で面子を潰されたことを、「なにくそ!」と発奮材料にするような人は、そこにはいません。

 むしろ、その事で、他の社員達の士気も低下し、つまるところ「再衰三竭」、組織としての気力は下がり、成果の拡大どころでは無くなってしまいます。

 

自ら敵を作る

 仮に、「何故、達成できなかったんだ!」と攻め立てたとしたら、最後は社員自身の努力が足りなかったというところに行きつきます。しかし、それを理解していても、周りの目がありますからそれを認めようとはしません。他の社員達もわかっているので、そこまで攻めなくてもいいではないかと思うようになります。その結果、総経理(社長)にとっては周りの社員達のみんなを敵に回すことになってしまいます。

 ということで、社員をゴリゴリ攻め立てることは中国ではうまくありません。

 孫子の言う「囲師には必ず闕き、窮寇には迫ることなかれ」との兵法を用いるべきなのです。理由はどうあれ、窮地に追い込んではならない。窮鼠猫を噛むの例えのとおり思わぬ反撃を食らうことになってしまいます。

 

緻密と寛大

 また、「人の悪を攻むるには、太だ厳なること勿れ」ともあります。例え、努力不足が原因で目標を達成できなかった社員であったとしても、あまり厳しい態度で臨んではならないというのです。社員の今後の向上のためにと、思いきり叱ることが日本ではありますが、中国では厳格すぎるのはよくないのです。

 仕事を始めるに際して、立てる計画は緻密でないと話になりません。そして実行に際しては厳格に、結果に対しては寛大に。この繰り返しが会社組織としての力を増大し、大目標をも達成することにつながるのです。

 

いいじゃないか大体で

 一生懸命に努力した社員に対して、例えば「できばえは多少不恰好だけど、形はだいたいできているんだから、いいじゃないか、御苦労さま」「目標は達成できなかったけど、できたのと同じくらいだ、みんな一所懸命努力したんだからいいじゃないか。この努力を続けていけば次は達成できると思うよ」等々。

 総経理の口から、そういう「寛宏大量」の言葉を聞いた社員達はどれだけ救われることか。結果は別として社員達はとにかく懸命の努力をしたのですから、総経理としてそれを認めて寛大な対応をすることはきっと「次につながる」ことでありましょう。

 実はもう一つの側面があります。総経理と言っても所詮は一人の人間。がちがちに自らを追い込んでいくと、しんどくなって下手すれば孤立無援になりかねないのです。

 そこで「大体でいいじゃないか」という考え方。自分に甘いように見えるかもしれませんが、その余裕があればこそ次につながるというものです。中国で完璧を求めると、時として挫折してしまいます。

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