【酒は天の美禄】 酒は同じでも美味い時もそうでないことも 心得るべきは
「酒は天の美禄」とは漢書にある言葉。酒は天から与えられたすばらしい贈り物であるとの意。確かに、様々なシーンで酒が活躍する。
成功のヒント 中国ことわざ・格言
雲消霧散
- 中国語:云消雾散 [ yún xiāo wù sàn ]
- 出典:授长孙无忌尚书右仆射诏
- 意味:物事がきれいに消えること。雲散霧消。
坐享其成(ざきょうきせい)
- 中国語:坐享其成 [ zuò xiǎng qí chéng ]
- 出典:叶廷琯(鸥陂渔话・葛苍公传)
- 意味:自分は何もしないで他人の努力の成果を享受する。労せずしてよい思いをする。濡れ手で粟。
酒は猶(なお)兵の如し
- 中国語:酒犹兵也 [ jiǔ yóu bīng yě ]
- 出典:南史(陈暄传)
- 原文:酒犹兵也,兵可千日而不用,不可一日而不备,酒可千日而不饮,不可一饮而不醉。(酒は猶兵の如し、武器は千日使わなくても、一日たりとも備えのない日があってはならない。酒は千日飲まなくてもよいが一度飲めば酔わない訳にはいかない)
- 意味:ここでいう「兵」は武器のこと。酒も武器と同じ。飲み方を間違えると我が身を損なうことになり得る。
酒は天の美禄
- 中国語:酒者,天之美禄 [ jiǔ zhě, tiān zhī měi lù ]
- 出典:漢書(食貨志)
- 意味:酒は天から与えられたすばらしい贈り物である、との意。酒を称賛した言葉。酒の別名は「天之美禄」ともいう。
人の斉聖なる、酒を飲み温克(こく)す
- 中国語:人之齐圣,饮酒温克 [ rén zhī qí shèng, yǐnjiǔ wēn kè ]
- 出典:詩経(小雅·小宛)
- 意味:慎み深く智慧のある人は、自制心をもって酒を飲む。(だから乱れない)
記事:【酒は天の美禄】 酒は同じでも美味い時もそうでないことも 心得るべきは
人脈の威力
中国人の実業家でもある友人から突然の連絡。今夜、何人かで食事をするから君も来ないかとのこと。事前に予定を組んだりすることもなく、人の都合も考えずに誘ってくることは珍しいことではありません。
しかし、何の脈絡も無く誘ってはこないはずだからと、とにかく指定されたレストランに急ぎました。
実は、当時、相当額の未回収金を抱えた大口顧客への対応に苦慮していました。担当の社員は、相手が大きすぎて督促できないとお手上げ状態。
しかし、社員が汗を流して得た大事な多額の売り上げ、もし回収できないと会社としても大変な問題です。止むを得ず、訴訟を考えました。
そんなあるとき、懇意にしていた件の友人と面談する機会があり、そのことを相談しました。彼はそんなことで訴訟するより、俺に任せろ、ということになったのです。
そして、何日か経過し、突然の呼び出しに至った次第。
会食のレストランの個室に入ると、何と、問題の未収金顧客のトップがそこにいたのです。聞くと友人の実業家は、その「未回収金」顧客の得意先でもあったのです。彼はその場で、何故、代金を払ってやらないのか、と詰問。
すると、その顧客はその場で財務担当者に電話をかけ、すぐに支払うように、と目の前で指示を出しました。
中国企業のトップの指示は絶対。このひと言でお手上げ状態であった問題は一瞬で「雲消霧散」。人脈の威力に感嘆することとなりました。
魔法のよう
そして、その後は会食に移りお決まりの白酒を酌み交わすことになりました。問題が問題であったために、少々気まずいその場の雰囲気は、今度は、お酒の力によってたちまち和みました。
「酒は天の美禄」とは古来から言われている言葉ですが、まるで魔法のようなその効用をもたらす酒はすばらしき俸禄ですね。
苦い酒
瀋陽市に支店を設けた時のこと。支店の設立登記が終わっているのに、なかなか事業の開始ができずに膠着状態に陥っていました。
瀋陽市場において、先発企業が牛耳っていた業界の中に、突然に外資企業が入り込むことになり、彼らが持つ既得権益が犯されることを懸念したのであろうと思われました。
そこで北京から業界関係のトップに来てもらい、関係者で会食をセット。先発企業も誘いに応じたのですから、これで障壁は取り払われることになり、きっとうまくいくはず…
と、思いきや、席上で瀋陽の関係者から窮状が訴えられ、そう急ぐこともないだろう、環境が整うまで待ってはどうか、と逆に説得されてしまい、画策は見事に失敗。
「坐享其成」と、北京の人脈に頼り過ぎたことが反省点でした。
結局、その時は苦い酒になってしまい、この時ばかりは相手方が「酒は天の美禄」であることを享受したことでありましょう。
酒との付き合い
仕事の場合であってもそうでなくても、酒は主体ではなく、相手との距離を縮め、ある時は潤滑油となり、物事を成功へと導く、正に「天の美禄」の存在であると言えます。
但し、会社組織のリーダーたる立場の人は、飲み方には十分気を付ける必要があります。中国古典の詩経には「酒を飲み温克す」とあります。どんな場面であっても酒を飲む際にも自制心を忘れず臨みたいものです。
更に、南史には「酒は猶兵の如し」と、飲み方を間違うと我が身を損なうことになり得るというのが酒。その意味では、酒も武器と同じだと。
それにしても、仕事の宴席では酔っぱらっている中国人を見かけることはありません。かと言って、お、古来の格言が身についているのではなく、きっと、もともと酒に強いのでしょうね…
ということで、酒豪たちの中での酒には重々気をつけたいものです。