個人主義が色濃い中国なのに【人の和に如かず】 異体同心と溢れるスピード感で
中国では会社内の権限を総経理(社長)に集中させる。それによって、様々な事が「即決」できて、スピーディーな会社運営ができる、といえるであろうか、この現代に…
成功のヒント 中国ことわざ・格言
一馬当先
- 中国語:一马当先 [ yī mǎ dāng xiān ]
- 出典:水滸伝
- 意味:戦闘の際に、馬に乗って突撃すること。先頭を行く、率先して事に当たることの例え。
因循守旧(いんじゅんしゅきゅう)
- 中国語:因循守旧 [ yīn xún shǒu jiù ]
- 出典:漢書(循吏传序)
- 意味:旧習を守って改めようとしないこと。古くさく融通がきかないさま。
天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず
- 中国語:天时不如地利、地利不如人和 [ tiān shí bù rú dì lì, dì lì bù rú rén hé ]
- 出典:孟子(公孫丑・下)
- 意味:事を為すとき、自然現象の状態がよくても、地勢が優位でなければうまくいかない。しかし、地の利があったとしても、人の和が無ければうまくいかない。(人心の和合がもっとも大切である)
歩人後塵
- 中国語:步人后尘 [ bù rén hòu chén ]
- 出典:杜甫(戏为六绝句)
- 意味:他人に先んじられること。人の下風に立つ。後塵を拝す。
万死一生を顧みず
- 中国語:万死不顾一生 [ wàn sǐ bù gù yī sheng ]
- 出典:史记(张耳陈余列传)
- 意味:生き延びることを考えずに必死の覚悟で当たること。
記事:個人主義が色濃い中国なのに【人の和に如かず】 異体同心と溢れるスピード感で
悪いのは誰
現地に設立されて10年近くにもなると、継続取引を行っている顧客も増加の一途。顧客管理を担当する社員は、「顧客台帳」として紙資料の作成を続けていました。両手を広げても抱えきれないほどの何冊ものぶ厚いファイルを宝物のように…
今どき、パソコンを活用し、事務の簡素化、効率化をするのが当たり前。
そんな時世の中で「因循守旧」を続ける件の社員に、何故古臭いやり方を続けるのかと聞いてみたら、「総経理(社長)から改めるよう何の指示も無いから」とのこと。(悪いのは、総経理のこの俺だったのか…)
総経理の役割
中国において社長に相当する総経理は、会計や財務より広い経営全般を取り扱うこととされており、会社内の権限を集中して経営管理を行う。言わば、列車の先頭にあって客車を牽引する機関車のようなもの。
その結果、社員達は「一馬当先」たる総経理から言われたことだけやっていれば給料がもらえる、単なるルーティンワーカーということになってしまいます。
例えば総経理が出張などで不在になると、業者への支払いや社員の業務交通費の精算すらできなくなり、会社の一部であっても機能不全に陥ってしまいます。
良くも悪くも組織の先頭に立って引っ張っていた総経理は会社の頭脳であり、エンジンでもあったのです。
時代遅れ
昔はなかった携帯電話が出現して以来、仕事上でも電話、メールが一般的に使われていました。その後、あっという間にスマホが普及し、返事が届くのに時間がかかるEメールはスピードが足りないようで、仕事にもSNSのチャットがよく使われるようになりました。
高度成長期を経た中国は社会全体のスピードが速く、総経理が機関車のように牽引する会社組織運営は既に時代遅れ。
総経理が如何に怪力であったとしても、組織を一人で引っ張る旧来のやり方では、現代の変化速度にはついていけそうにありません。「歩人後塵」のようではこの激しい競争社会で勝ち目はないのです。
今求められるもの
では、如何にして会社運営のスピードを上げるか。ヒントは、高鉄(新幹線型の高速鉄道)にあります。
とえば、大連~瀋陽間(約380キロ)は高鉄では所用時間約2時間半。従来の特急では4時間も要しました。
高鉄は何故に速く走ることができるのか。
運転手の号令のもと、車両ごと備えられたモーターが一斉にうなりを上げて回り出すことで高速走行を実現した。
会社組織にあっては、総経理の指揮の元、社員達が気持を揃えて走ることで高速運営ができるはずです。
つまり、「個」の力に加えて、「人の和」や「意思の疎通力」が重要になってきているのです。「天の時は地の利にしかず、地の利は人の和に如かず」なのです。
言わば「異体同心」の組織作りのために、「人の和」が最も大事であると言えます。では「人の和」はどうすれば実現できるか? 総経理はそこにこそ腐心すべきなのです。
総経理自身の課題
時にはモーターが故障したり調子が悪くなることもあるでしょう。総経理は保守点検や修理も行う運転士なのです。
号令を出せばすぐにモーターが反応する、それを下支えするのは、実は、総経理が自らの感性を研ぎ澄まし、更に高める努力を続けることに他なりません。
とにかく、他よりも速く走らねば競争には勝てない。会社組織として速く走るためには、社員同士の「和」つまり団結が不可欠なのです。
そしてもうひとつ大事なことは、「万死一生を顧みず」、総経理は覚悟を決めねばならないということです。何かをやろうとして、いちいち日本本社にお伺いを立て稟議していたのでは、スピードも何もあったものではない。無茶はできないものの自分で責任を持つという、どっしりとした覚悟が求められます。業績さえ上げておけば本社もそうそう文句は言えないはずです。