孟子は【行いて得ざるもの有らば…】 パワハラ上司も悪いが 実はもっと酷い…

労働公園菊花展

大連・労働公園の菊花(2016年10月)

「行いて得ざるもの有らば、みな反(かえ)りて諸(こ)れを己に求む」とは孟子の言葉。うまくいかないことの原因は自分にある。そう考えると打開策が見えてくる。最も良くないのはただ傍観するだけのマネジャー。手をこまねいて何もしないことはパワハラよりも酷い。

 

成功のヒント 中国のことわざ・格言

行有不得反求诸己 / 行いて得ざるもの有らば、みな反(かえ)りて諸(こ)れを己に求む

  • 中国語:行有不得反求诸己   [ xíng yǒu bù dé fǎn qiú zhū jǐ ]
  • 出典:孟子(离娄上)
  • 意味:物事がうまくいかなかったり、挫折や困難に遭遇した時は、その原因が自分にあると反省するのがよいとの意。

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袖手旁观 / 袖手傍観(しゅうしゅぼうかん)

  • 中国語:袖手旁观   [ xiù shǒu páng guān ]
  • 出典:韓愈(祭柳子厚文)
  • 意味:手を袖に入れてただ見ていること。手をこまねいて見ている。何もせずにただ傍観する。

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上情下达 / 上情下達

  • 中国語:上情下达   [ shàng qíng xià dá ]
  • 出典:管子(明法)
  • 意味:上位の意見を下位の人に徹底させること。上下を疎通させること。上意下達。

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面从后言 / 面従後言

  • 中国語:面从后言   [ miàn cóng hòu yán ]
  • 出典:書経(益稷)
  • 意味:人前では服従しているように見えても、陰ではあれこれと非難すること。面従腹背。

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記事:孟子は【行いて得ざるもの有らば…】 パワハラ上司も悪いが 実はもっと酷い…

▮だんまりには勝てず

 中国現地会社の営業員月例会議。ある社員にその月の個人目標を尋ねると「〇〇です」と、会社の標準値よりも小さな数字。「ずいぶん控えめじゃないか、もう少し増やそうよ」と総経理(社長)が返すと、沈黙状態に。

 どうも、自分の口から宣言した目標を、もし達成できなかった時に、上司から叱責されはしないかと心配が先に立ったようです。上にはそんなつもりは全く無くても、社員にしてみれば、そのことが原因で会社との労働契約を解除されようものなら、家族も路頭に迷うことになるではないか、うかつに口はきけない。そう思うのかもしれません。

 結局、黙りに我慢しきれず、販売予算を人数割して「上情下達」することに。「これだけはやれっ!」と。

 少しばかり声を荒げ、イラついた様子のお達しは、パワハラだと社員に受け取られかねません。実は、これ、失敗の入口です。

 

▮下達の末

 総経理により下達したシーンでは、社員からは「没问题(わかりました、問題ありません)」と。そりゃそうです、中国では上司に盾突くと碌なことにはならないのですから。

 しかし、会議が終わったら、仲間内で「(そんな大きな目標は)できるわけねぇだろが!」と舌を出す。これこそ「面従後言」という古来のことわざにあるとおり。

 そして、達成できなかった場合、今度は「没办法(仕方ねえよ)」とまるで他人事。

 つまり、下達による目標は、社員にとっては、いわば「やらされている」感覚。よほどのラッキーが無ければ達成することは難しい。

 また、ある時は、今ひとつパッとしない社員を、敢えて皆にわかるように叱責。この目的は全体に奮起を促すこと。

 しかし、よくよく考えたら中国では専ら個人主義で、叱咤されている社員以外は、誰も自分のこととして考えていないことに気がつきます。

 むしろ、大勢の前で叱られたことで、面子をつぶされたと感じさせたことの方が大問題。更に、その様子を見ていた社員達が、叱られた社員に同調することになると、これは最悪。総スカンを食らったり山猫ストに繋がったりと、今度は総経理自身にとって碌なことにならないのです。

 

▮うまくいかない原因

 いずれにしても、日本人総経理対現地社員という対立構図に発展してしまうと、これはかなり厄介です。社員が「职权骚扰(パワハラ)だ」と労働仲裁機関に訴え出たら、その対応に四苦八苦し、本業の発展どころの話ではなくなってしまいます。

 総経理が社員達の奮起を期待してプレッシャーをかけても、白けた社員には無力でしかありません。パワハラめいたやり方は稚拙と言わざるを得ず、今の時代の中国で業績が伸びようはずはありません。

 うまく行かない原因はどこに?

 「行いて得ざるもの有らば、みな反(かえ)りて諸(こ)れを己に求む」と孟子は言っています。総経理は自分なりに一生懸命やっているつもりでしょうが、どうも良い結果が出ない。そんな時には、自分に原因があると考えよとの教えです。そう考えれば、改善対策も見えてくるというものです。

 正攻法として、上からの圧力による強制的にやらせるというスタンスを廃し、社員の自主能動的な取り組みによって仕事に励んでもらうこと。その結果、皆がいい仕事ができ、ひいては業績を伸ばすことになる。

 大声で暴言や脅しで押さえつけるような稚拙はやり方ではなく、リーダーとして部下社員に理解させ、納得するまで話し込み、そして共感を得る。

 それは、始めは相当の時間がかかりますが、一旦その思考が社内に出来上がると後は勝手に動いていくはずです。

 

▮不作為の総経理

 実は、もっと気を付けなければならないことがあります。

 日本本社から派遣されて現地で総経理職を張っている人は、二、三年もすれば日本に帰ることになる。その時のために大事なのは、現地で失点しないことだと考える総経理の方への警告です。

 それは、「袖手傍観」という韓愈の言葉にあります。つまり、営業や現場のことを現地の責任者に任せっきりで、自分は何もせずにただ傍観しているだけの総経理。

 その姿勢は、何にも挑戦をしない無風の社内を作り出してしまいます。それでは社員が元気いっぱいに仕事するわけがありません。ピントのボケた会社になり下がってしまう。社員達の活気を奪ってしまう存在になってはならないのです。

 パワハラでは業績は上がらないが、ある意味、総経理は一所懸命にやったとも言えなくもありません。一方、自身の保身だけを考えた総経理の不作為はパワハラするよりもある意味で罪は重い。これ、駐在員が犯しがちな過ちなのです。

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