現地会社運営を門外漢に丸投げ これって【明哲保身】か

どっしりとした構え 大連旧市役所(2015年9月)

 外部招聘によって突如会社にやってきた門外漢に企業理念に裏打ちされた会社運営ができるとは思えません。また、元から仕事をしている現地社員の方がよほど会社業務を理解・精通している。逆転現象にどう対応するというのでしょうか。「現地化」が安易では上手くいくはずもない。

 

成功のヒント 中国のことわざ・格言

▮今回のことわざ(五十音順)

 

一窍不通 / 一竅不通(いっきょうふつう)

  • 中国語:一窍不通   [ yī qiào bù tōng ]
  • 出典:吕氏春秋(过理)
  • 意味:少しもわかっていないこと。ちんぷんかんぷん。

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忍无可忍 / 忍ぶ可き無きを忍ぶ

  • 中国語:忍无可忍   [ rěn wú kě rěn ]
  • 出典:官场维新记
  • 意味:耐えるに耐えられない、これ以上耐えられない、との意。堪忍袋の緒が切れる。

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作法自毙 / 法を作り自ら斃(たお)れる

  • 中国語: 作法自毙   [ zuò fǎ zì bì ]
  • 出典:史記(商君列传)
  • 意味:自ら定めた法によって反対に損害を受けること。自ら決めたことで害を受けること。自縄自縛に陥ること。

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明哲保身 / 明哲保身

  • 中国語: 明哲保身   [ míng zhé bǎo shēn ]
  • 出典:詩経
  • 意味:聡明な人は巧みに身を処して、その結果、自分の地位を守ることができる、という意味の褒め言葉。転じて、自分の身の安全を確保するために要領よく立ち回る、との意味。

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記事:詩経の【明哲保身】 門外漢に丸投げする安易な目論見…

▮切れそうな堪忍袋

 「君を日本に戻せば現地会社は黒字になるよ」と。設立して数年、今だ赤字経営の現地会社を何とか早く収益体制に転換しなければ、と現地で格闘している総経理(社長)に対して言う言葉か。暴言以外の何物でもない。「忍無可忍」、堪忍袋の緒が切れる、と言いたいところだ。しかし、そこはサラリーマン。憤慨はしても、キレてはなりません。笑って受け流す術くらいは身についています。

 冷静に考えると、わからなくもありません。日本人社員を総経理として現地に派遣すると、給与や住居費、車両費等々の負担は年間2000万円にも達するのですから。

 それに何より、経済成長と共に続く現地社員の人件費などの高騰はビジネス環境が変貌し、ベネフィットセンターとしての現地会社の立ち位置も厳しくなる一方。本社がコスト削減を至上命題とするのも理解できます。

 

▮ど素人に…

 コスト削減のひとつの目玉施策は、総経理を日本から派遣することを止めて、現地の人材を抜擢するという手法。

 総経理を日本から派遣するよりも、現地スタッフに変えた方が費用負担は遥かに低減します。いわゆる「現地化」のひとつのパターン。日本人総経理を帰国させ、現地の優秀と思われる人材を総経理に任ずることです。これが本社経営層に「君を戻すと黒字になる」と言わしめる簡単なからくりです。

 例えば合弁パートナーの人脈を使って外部から総経理人材を招聘する、ということが考えられます。或いは、現地から優秀人材を日本本社に送り込み、経営幹部候補として研修させた後、現地会社に総経理として戻す、という手法もあります。

 しかしながら、そういった現地化には落とし穴が待っています。

 現地でヘッドハンティングした人材は、会社業務には「一竅不通」で、まったく通じていないことが大きなハンディ。何もわかっていない門外漢と言わざるを得ません。

 一方、本社で研修を受けた現地社員は日本語がわかるので便利ではあるが、競争の中で揉まれていたわけでもなく、こちらは言わば「マネジメント門外漢」。

 

▮身は守れても

 そういった「門外漢」に事業成功への淡い期待を抱き、現実を見ようとしない本社。コスト削減という大きな手柄を手にした日本の経営層は、自分の身の安全を確保するために要領よく立ち回る「明哲保身」の態度だと言わざるを得ません。

 そして、気がついたころには、「門外漢」に経営を丸投げした現地会社はとんでもないことに。日本本社と同じロゴを使い、看板を掲げてはいるが、中身は似ても似つかぬ会社になってしまった、ということが珍しくないのです。

 表向きは日系企業であるが、しかし、企業内管理や経営手法は国内企業。これで日本本社は満足できるのであろうか。

 

▮自らが苦しむ

 もちろん現地法人の責任者としての資質を備えた人物であれば、その国籍にこだわる必要はありません。それ自体、素晴らしいことですので、外部からの招聘が悪いとは言えません。

 しかし現地化ありき、で安易に走ってしまっては中国での事業は決して成功しない。

 「日系企業のような国内企業」と化した現地会社の実態を目の当たりにして、ため息をついたとしても、それは、安易な姿勢が生んだ結果。史記には「法を作り自ら斃(たお)れる」とあります。自業自得です。

 外部招聘によって突然、会社にやってきた門外漢に十分な企業理念に裏打ちされた会社運営ができるとは思えません。また、元から仕事をしている現地幹部社員の方がよほど会社業務を理解・精通しているという逆転現象にどう対応するというのでしょうか。コスト削減だけが目論見の現地化は成功しないということです。

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