【不陰不陽】ということわざ そんな曖昧な態度では信用されない

円卓を囲んで楽しい会食(2017年11月 中国・大連)
中国で会食。〇〇は食べますかと聞かれて、どっちつかずの態度でいると、曖昧な奴だと思われます。即答をすべき時に曖昧な態度でいるといずれ信用されなくなってしまう。
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今回のことわざ
君子之交淡如水 / 君子の交わりは淡きこと水の如し
- 中国語:君子之交淡如水 [ jūn zǐ zhī jiāo dàn rú shuǐ ]
- 出典:庄子(山木)
- 意味:立派な人物同士の交際は水の様に淡々としている。
高不成低不就 / 高ければ成らず、低ければ就かず
- 中国語:高不成低不就 [ gāo bù chéng dī bù jiù ]
- 出典:宋・陈师道(宿柴城)
- 意味:高いと手に入らない、低くても折り合うことに値しない。元々は、求職や結婚の時の二つの相反する苦しい状況の例え。
直言不讳 / 直言不諱(ふき)
- 中国語:直言不讳 [ zhí yán bù huì ]
- 出典:晋書(刘波传)
- 意味:「直言」は遠慮なくありのままに言うこと。「不諱」はいみはばからずに言うこと。歯に衣を着せぬ。
不阴不阳 / 不陰不陽
- 中国語:不阴不阳 [ bù yīn bù yang ]
- 出典:续孽海花
- 意味:態度があいまいでとらえがたいこと。態度がはっきりしないこと。
模棱两可 / 模棱両可(もりょうりょうか)
- 中国語:模棱两可 [ mó léng liǎng kě ]
- 出典:旧唐書(くとうじょ)苏味道传
- 意味:曖昧でどちらにでも取れる、どっちつかずではっきりしないこと。「模棱」は、はっきりしない、曖昧、ぼかすなどの意。「两可」は、こんなのもいい、あんなのもいい、というように態度が不明確なこと。或いははっきりとした主張がないこと。
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記事:【不陰不陽】ということわざ そんな曖昧な態度では信用されない
▮淡きこと水の如し
人と話をするときは、相手の立場に立って考え発言し、相手の意見を否定する場合は、婉曲な言い回しであまりストレートには言わないことが多いのが日本人。彼はなかなか上品で奥ゆかしい人だ、というような評価です。
同じような感覚で中国人と会話すると、曖昧で何を考えているのか分からん奴だ、とばかりに切り捨てられてしまいます。婉曲表現では意思が伝わらないばかりか、信用にも影響することだってあるのです。
中国・戦国時代の思想家である庄子は「君子の交わりは淡きこと水の如し」と言っています。立派な人物同士の交際は水の様に淡々としている、というのですが、お互いに言いたいことをさらっと言うのがよいという教えが根付いているのかもしれません。
▮高ければ成らず、低ければ就かず
婉曲な言い回しでも、日本人同士ならなんとか自分の意志は相手に伝わります。日本人のはっきりと言わない態度は、中国人にとっては理解し難いもののようです。まるで「高不成低不就(高ければ成らず、低ければ就かず)」、いったいどっちなんだと。相反する二つの間でイラついてくるようです。
面と向かってはっきりと言わないこと、これこそが相手への配慮であり日本人の美学だ、という思いは恐らくは日本人だけの感覚でしかないのです。
環境も考え方も日本とは異なる中国では、そんな態度では自分の意思は伝わりません。相手を気遣う「あいまいな意思表示」は中国では多くの場合、理解されませんし役には立ちません。むしろ、「日本人は曖昧で、どっちつかずの態度で信用できない」などと言われてしまいかねません。中国人との会話は「はっきりと意思表示する」ことが基本です。
▮不陰不陽
「要るのか要らないのか」「売るのか売らないのか」などと聞いているのに、はっきりしないのは、せっかちな中国人には、まどろっこしいだけにしか映らないようです。
「不陰不陽」は、日陰、日向のどっち? 「模棱両可」はあれもいいけどこれもいい、いったいどっちがいい? 中国語にも、「曖昧である」、「どっちつかず」、という意味の言葉があるのに…。ひょっとしたら昔の中国には「曖昧」表現が少なくなかったのかもしれません。
今の中国でそんな曖昧なことでは、現地の中国ビジネスのスピードについていけなくなってしまいます。そうこうしている間に、どんどんチャンスが通り過ぎ、手元には何も残らないことになりかねません。
▮直言不諱
相手の立場を慮る言葉より「Yes」「No」をはっきり意思表示したほうが、自分の気持ちがよく伝わります。それに、相手の中国人にも妙なわだかまりは残ったりはしません。相手が自社の社員であっても顧客であっても同じです。もちろん相手もはっきりとモノを言ってきます。
最初は少し勇気が要りますが、「No」を思い切って自分の思いとして言うと、相手は意外なほどさっぱりと受け止めてくれます。
中国・晋の歴史書である晋書には、遠慮なくありのままに言うことを意味する「直言不諱(ふき)」と言うことわざがあります。歯に衣を着せぬ方が気が楽です。
注意すべきは相手のメンツを壊さないことです。
例えば、顧客から「安くしてほしい」と要求されたら言われたらどう返すか? 大抵はダメ元で値引きを要求してくるので、それに乗ってOKを出せば相手にとって与し易い奴だということになり馬鹿らしい限りです。もし、「No」と即答した場合は、相手の面子をつぶすことになり、以後の商機に影響することは必至です。
そこで無難な答えは 「考えておきます」。ある意味で曖昧な言葉ですが、相手の面子を留保する言葉なのです。
一方で、例えば、顧客と会食をしたときなど、相手から「〇〇は食べますか?」と聞かれて、どっちつかずの態度でいると、「曖昧な日本人だ」ということになります。そのような即答すべき場面で曖昧な態度でいることが、結局その後信用されなくなってしまう。相手の面子を潰さないように気をつけて、はっきりとした意思表示をする、ということが大事だということです。