【人生意気に感ず】のことわざ 日々自分を磨き高める努力が意味するもの

大連で植樹した桜 (2015年5月)
中国の兵法書である呉子には「国の宝は徳に在りて険に在らず」とあります。一国のリーダーは、自らの徳を磨くことを怠ってはならないというのです。
成功のヒント 中国のことわざ・格言
国之宝在德不在险 / 国の宝は徳に在りて険に在らず
◆中国語:国之宝在德不在险 [ guó zhī bǎo zài dé bù zài xiǎn ] ◆出典:呉子 ◆意味:国の宝は険阻な地形にあるのではなく、君主の徳にある。(険阻な地形に頼ってしまい、自らを磨くことを怠った結果、滅びた国の多いこと) |
士为知己者死 / 士は己を知る者のために死す
◆中国語:士为知己者死 [ shì wéi zhī jǐ zhě sǐ ] ◆出典:史記(刺客列传) ◆原文:士为知己者死,女为悦己者容(士は己を知る者のために死す。女は己を悦ぶ 者の為に容る) ◆意味:男子たる者は、自分を理解してくれる人のためには命を捨てることも厭わない。 |
人生感意气、功名谁复论 / 人生意気に感ず、功名誰か復(ま)た論ぜん
◆中国語:人生感意气、功名谁复论 [rén shēng gǎn yì qì, gong míng shéi fù lùn] ◆日本語表記:人生感意気、功名誰復論 ◆出典:唐詩選 ◆意味:人は心意気に感じて人生を歩むもので、功名などは誰も問題にしない。 |
粗心大意 / 粗心大意
◆中国語:粗心大意 [ cū xīn dà yì ] ◆出典:朱子(读书法・一・熟读精思) ◆意味:大ざっぱでいいかげんである。そそっかしくて不注意であるとの意。 |
記事:【人生意気に感ず】日々自分を磨き高める努力が意味するもの
▮ 国の宝は徳に在り
中国・春秋戦国時代の兵法書である呉子には「国の宝は徳に在りて険に在らず」とあります。一国のリーダーたる君主は、その国の険阻な地形に頼らず、自らの徳を磨くことを怠ってはならないというのです。
中国でビジネスを展開している会社にあってもまったく同様で、代表者である総経理(社長)は、経営の専門性だけではなく自身の人間的魅力を磨かなくてはならないということです。
▮ 粗心大意
一口に総経理と言っても、中には現状を維持するだけでただただ帰国指示を待つ人、また途中で挫折し不本意な帰国に到るケースも少なくありません。いずれも専門性を持った優秀な人材であるにもかかわらず、うまく成功しなかったのは何故か、そして社員のみんなを引っ張っていく有能なリーダーとして何が必要であるのか、考えねばなりません。
本来の持てる能力は高いA。高い能力(専門性)に比べ向上心が十分ではありません。言わば「粗心大意」、自らの高い能力に安住しいい加減にしか仕事をしていない。総経理として努力をしているようには感じられない上司だと部下から思われても仕方ありません。
そんなAに比べ能力や専門性はごく普通のB。しかし自分を少しでも高めるために、懸命に努力をしていることが周囲に伝わってくるような上司。
そのどちらに部下社員は魅力を感じ引き寄せられるか?
生気のない、無気力な感じしかしないAよりも、懸命に努力する誠実な人間性を持った人だと目に映るBの方が部下社員にとってはるかに魅力を感じることができるはずです。そうであるならば、能力的には平凡な人であっても自分を磨いていけば支持を得られ、その先には中国ビジネスの成功という栄誉が待っています。
いずれでも、地位や能力を鼻にかけることなく、知識や技術の習得の努力を怠らず、日夜自分を磨くことで経験の浅深や年齢には関係なく輝くリーダーを目指したいものです。
▮ 士は己を知る者のために死す
組織だって仕事を進める会社にあって自分の高い専門性や能力だけでは組織はうまく機能しません。上からの権威や理屈だけでは人は動かない。人の上に立つには、それなりに人を引き付ける何かがどうしても必要です。言わばその人固有の人間的魅力が不可欠です。
金曜日の夕刻のオフィス。帰省の支度をしている単身赴任の社員に彼の上司が「駅まで送ってやるよ」と上司が自ら運転して駅へ。思いがけないことに面食らったその社員は「この上司のために仕事を頑張ろう!」と心で誓った。
中国の歴史書、史記には「士は己を知る者のために死す」と、自分を理解してくれる人のためには命を捨てることも厭わない、とあります。時代が勝っているようにも思いますが、男子たる者は皆そういう心意気を持っているものです。部下からそう思われるようなリーダーにならねばなりません。
▮ 人生意気に感ず
総経理(社長)として一般的な経営ノウハウの他に中国独特の事情を理解することが欠かせません。しかし、もっと必要なのは部下社員を引き付ける魅力を身につけることです。
リーダーにとって必要な専門性と人間性。その二つのバランスは専門性<人間性あるといえます。但し、人は生まれつき優れた人間性をもっているわけではありません。では、魅力のある人間性はどこから生まれるのでしょうか?
常に自分を磨いている人、弛まぬ努力をしている人、周りにいてその努力がわかる、そういう人に人は惹かれるのです。つまり、理論理屈よりも感情・情緒にポイントがあります。
中国の古典にもある「人生意気に感ず」という仕事ぶりが共感を呼ぶことになります。中国では言葉の問題もあって部下社員には伝わりにくい分、総経理自身の絶え間なく努力している姿を見せることがより重要です。
明治維新の精神的指導者であった吉田松陰は「才あれども勤めずんば、何をもって才を成さんや」と言っています。どんなに素晴らしい才能があろうと、それを発揮しないと何の意味もありません。その才能を活かすのは努力です。努力することで持っている才能が生きてくるのです。大事なのは「才」よりもむしろ「努力」。それによって魅力的な人間性が育まれるというものです。