中国・菜根譚には【花は半開を、酒は微酔に】と 大連の所自慢はアカシア それに…
何年か前、大連の私の友人が上海旅行から帰った時のこと。上海は如何でしたか、と尋ねた際に彼は開口一番「浦東空港はとても不便だ」と。中国を代表する空港のひとつである浦東空港で何があった…?
長鞭馬腹
浦東空港ができるまでは上海虹橋空港が中心空港。私が上海に赴任した際によく利用した思い出の空港です。市街地に近く便利だったのですが、建物は古く、何より規模が小さく国際空港としては見劣りのする玄関口だったのです。その後、1999年に開港したのが上海浦東空港で、成田空港の4倍にも及ぶ巨大空港です。
その新鋭空港を「不便だ」と評する彼は規模がデカすぎて迷子になりそうだ、というのです。「長鞭馬腹に及ばず」と中国古来の言葉があります。せっかくの鞭が長すぎて、馬の腹に当たらず役に立たない、というのです。さらに、「こじんまりとした大連空港の方がよっぽどいい」と彼は胸を張っていました。我が町が一番と自慢するのです。
頭を低れて故郷を思う
その彼に限らず、中国人は自分の出身地を愛する気持ちが強いのか、俺は上海人だ、大連人だなどと言っているのをよく耳にします。まあ、これだけ広い国ですから一口に中国人と言っても実際には多くの民族で構成されていますから、自分のアイデンティティを示すためにもそういう風になるのかもしれません。
大連から更なる都会へ行く人、農村からやってくる人、さまざまな思いを背負い故郷を離れて生活している人も少なくありません。年に一度の春節や家族が揃う中秋節が重んじられるのも理解できます。唐代の詩人である李白の「静夜思」と題された詩には「頭を低れて故郷を思う」と望郷の念を込めた詩があります。今でこそ、電話や新幹線網、飛行機などが発達し、以前のように何十時間もかけて汽車で故郷に帰る苦労はやわらいできていますが、故郷を思う気持ちは昔も今も何も変わってはいないのだろうと思います。
花の大連
そんな気持ちを抱いて大連で暮らしている人、根っからの大連人の人、また、中国全土から憧れの念を抱かれている大連。街はいつも花に囲まれています。

大連の街路に咲くアカシアの花(2018/5)
大連で花と言えばもちろんアカシア。実は本当の名は「ニセアカシア」。和名は「ハリエンジュ(針槐)」、中国では「槐花 」。花言葉は「慕情」、「親睦」、「優雅」等だそうです。私は清楚なアカシアの花には「優雅」が最も似合うように思います。
また、アカシアの花には食用や止血などの薬用の効能もあるそうです。在任中はゆっくりとアカシアの花を愛でることはできませんでしたが、リタイア後には5月のアカシアの季節の訪連が楽しみです。

労働公園のふじ棚(2019/5)
大連市街地の中心部、随一の商業街に隣接して労働公園と命名されたとても立派な公園があります。早朝から太極拳やダンスなどを楽しむ市民の憩いの場となっています。1899年、帝政ロシア時代に竣工し120年の歴史が刻まれた公園です。面積が東京ドーム20個分と、とにかくデカい。園内の周回道路ではジョギングやウオーキングをする人も多く、日本統治時代の名残かどうか、園内に見事なふじ棚があります。この日は若いカップルが自撮りしていました。

大連中山路の路辺(2019/5)
大連の市街地を歩くと、ちょっとした空間をお花畑のように飾ったり、歩道に置いたプランターに四季折々の花を咲かせたり、手入れも行き届いています。うがった見方かも知れませんが、表通りや目立つ場所をきれいな花で飾るのがとても上手です。確かに以前は路地や裏通りに入るとう~んと言いたくなる光景がありましたが、少なくとも大連ではあまり見かけなくなりました。経済発展が進み、世界第二位の経済大国となり、心にも余裕が生まれたのでしょうか。大連はきれいな街作りがされています。

大連・人民広場前の歩道(2019/5)
花は半開
中国古典の菜根譚には「花は半開を看、酒は微酔に飲む」ということわざがあります。満開、つまり傲慢になることなく、ほどほどにせよとの箴言です。あまり飲めない私は「微酔」には自信がありますが、アカシアの花は清楚であっても満開の方が見ごたえがあっていいですよね。
我田引水であるにせよ、「自ら賣り自ら誇る」と大連の所自慢に納得しながら、満開の槐花を愛でることを毎年の楽しみにしたいと思います。
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成功のヒント 中国のことわざ・格言
低头思故乡 / 頭を低(た)れて故郷を思う
◆中国語:低头思故乡 [ dī tóu sī gù xiāng ]
◆日本語表記:低頭思故郷
◆出典:静夜思 (唐代の詩人・李白の诗)
◆原文:床前明月光 疑是地上霜 举头望明月 低头思故乡
◆意味:牀前月光を看る。疑うらくは是地上の霜かと。頭を挙げて山月を望み、頭を低(た)れて故郷を思う。
长鞭不及马腹 / 長鞭馬腹に及ばず
◆中国語:长鞭不及马腹 [ zhǎng biān bùjí mǎ fù ]
◆出典:左传·宣公十五年
◆意味:鞭が長すぎると馬の腹に当たらないとの意。大きすぎたり、長すぎたりすると逆に役に立たないということの例え。
花看半开,酒饮微醉 / 花は半開を看、酒は微酔に飲む
◆中国語:花看半开,酒饮微醉 [ huā kàn bàn kāi, jiǔ yǐn wēi zuì ]
◆出典:菜根譚
◆意味:花を見るなら五分咲きのころがよい。酒を飲むならほろ酔い加減のあたりでやめておく。傲慢になったりしないようにほどほどがよいとのと例え。
自卖自夸 / 自ら賣り自ら誇る
◆中国語:自卖自夸 [ zì mài zì kuā ]
◆日本語表記:自賣自誇
◆出典:毛沢東(评国民党十一中全会和三届二次国民参政会)
◆意味:自ら売って自ら褒め誇る。自画自賛する.手前味噌。