貴方は【益者三友】か? 総経理が自分ファーストでは行き詰るかも…
先日、足掛け七年ぶりに中国で再会を果たしたその人。
その人とは、中国・大連を拠点に中国全土で日系企業向けに社員教育を行うスペシャリスト。同時に、自らの人材教育会社の経営者・総経理でもあります。私にとっては中国市場で共に戦った大尊敬する戦友です。
推心置腹
大連に赴任後、数年を経過したころから目に見えて業績が右肩上がりに。業容が拡大するに合わせて社員数もぐんと増えて、リーダークラスの人材の枯渇が最大の心配事になってきました。
業務上の専門的な教育は社内で十分できますが、マネジメントやリーダーシップと言った教育は社内では手に負えず、日本本社にも支援要請をしましたが梨の礫。
ならば、と意を決して外部講師に依頼する方法を取りました。以前から商工会活動などを通じて面識のあったその人材教育会社の総経理に相談しました。
そして、私は会社を発展させるために困っていることや自分の考え方を忌憚なく話しました。
やる限りは中身の濃い社内研修に、そして自社のビジョンに合ったカスタマイズしたものにしたかったので、本音でその講師の方と語り合いました。中国・後漢書の「心 推して腹に置く」とあります。私もそのように自ら胸襟を開きました。
志同道合
それに対し、講師である総経理も私の思いに最大限の理解を示し、自らが研修の講師として臨んでいただきました。事前の話し込みで我が社の理念やビジョンも共有していただきました。
三国志にある「志同道合」とは志と信念を同じくするという意味です。人材教育の会社と我が社とは業種はまったく異なりますが、我々は会社発展の思いや考え方は同じであることがわかりました。そのおかげで、約三年間に八回にわたりマネジメント、リーダーシップ、人間力などをテーマにして選抜された社員に対して社内研修を思いどおりの内容で実施することができました。もちろん以後のリーダーたる人材育成に寄与したことは言うまでもありません。
益者三友
この5月、再会をしたその総経理とは時間の経つのも忘れて会社経営や人の育成などについて議論をしました。
自分の会社の発展、自身の利益などを優先して考えるといずれ行き詰まる。まず人のことを考えるべきである。そうすれば結果的に自分も一緒に成長し利益を得ることができる。
そういう結論に達しました。
論語にはこういう格言があります。「己立たんと欲して人を立て、己達せんと欲して人を達す」と。○○ファーストといった考え方が目立つ昨今ですが、実は永遠の発展の原理は「自分よりも人」にあると深く思いました。
私は中国での駐在生活の間にその人材会社の総経理(社長)をはじめとして多くの友に恵まれました。このことが私にとって最も喜ばしく生涯の宝であると思います。孔子は「益者三友」(付き合ってためになる友人は、正直な人、誠実な人、見聞の広い人の三種類)との言葉を残しています。
ひとつの会社を経営する総経理(社長)は、本社から派遣されたサラリーマン社長であれ、自分がオーナーであれ、その会社が発展するか否かは総経理の人間性にかかっていると確信します。人から「益者三友」と言われるように日々精進するのが総経理です!
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成功のヒント 中国のことわざ・格言
推心置腹 / 心 推して腹に置く
◆中国語:推心置腹 [ tuī xīn zhì fù ]
◆出典:後漢書(光武帝纪)
◆意味:自分の真心を人の腹に入れる、つまり誠意をもって人と接すること。胸襟を開く、気が置けないなどの意。
◆語源:中国・西漢の末期、劉秀の軍と戦い降参した敵軍のリーダーたちは、敗軍であるがゆえに殺害されはしないかと不安と疑心の日々を過ごしていた。
劉秀も彼らの内心の不安を察し、彼らの軍営を僅かな兵だけを伴って巡察した。敗軍の将たちは自分たちを全く警戒しない上、信用してくれた劉秀に対して「自らの誠心を他人の腹に置いてくれている以上、わが身を顧みずに尽力するほかならぬ」と思い、全員が安心して劉秀に服従するようになった。後世これが「推心置腹」と言い伝えられるようになった。なお、劉秀は後漢時代の混乱を統一し漢の王朝を再興、後漢王朝を建て漢光武帝になった。
志同道合 / 志同道合
◆中国語:志同道合 [ zhì tóng dào hé ]
◆出典:三国志
◆意味:志と信念を同じくするとの意。転じて意気投合することを意味する。
益者三友 / 益者三友(えきしゃさんゆう)
◆中国語:益者三友 [ yì zhě sān yǒu ]
◆出典:論語
◆原文:益者三友、损者三友
◆意味:付き合ってためになる友人は、正直な人、誠実な人、見聞の広い人の三種類。続けてためにならない人は、その場限りのことを言う人、誠実さがない愛想だけの人、口のうまい人だと言っています。
己欲立而立人,己欲达而达人 / 己立たんと欲して人を立て、己達せんと欲して人を達す
◆中国語:己欲立而立人,己欲达而达人 [ jǐ yù lì ér lì rén, jǐ yù dá ér dá rén ]
◆出典:論語
◆意味:自分がしっかりと立ちたいのであれば、人にまず立たせる、自分が出世したいのであれば、人をまず先に出世させることである。(孔子の弟子の子貢が「仁」について質問した際の孔子の答え)