中国・宋書の【漱石枕流】 言い訳上手に負けるわけにはいかない

日本では性善説に依拠。しかし海外においては圧倒的に性悪説が幅を利かせる。そんななかで現場を知ることが漱石枕流に勝つ方法でもあります。現場重視の姿勢は、日本よりも実は中国現地の方が求められます。

 

中国ビジネスの成功を勝ち取る ことわざ・格言

漱石枕流 / 石に漱(くちすす)ぎ流れに枕す

  • 中国語:漱石枕流   [ shù shí zhěn liú ]
  • 出典:宋书(宋書)
  • 意味:自分の誤りを認めずに、負け惜しみから理屈の通らない言い逃れをすること。こじつけて自らを正当化すること。俗世のくだらないことを聞いたときには耳を洗う(枕流)、歯を磨くための石(漱石)であると言い逃れた故事による。

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强人所难 / 強人所難

  • 中国語:强人所难   [ qiǎng rén suǒ nán ]
  • 出典:唐・白居易(赠友诗五首)
  • 意味:難しいことを人に強いる。無理難題を押しつけるようなことをしてはならない、との意。

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耳闻不如目见 / 耳聞(じぶん)は目見(もくけん)に如かず

  • 中国語:耳闻不如目见   [ ěr wén bù rú mù jiàn ]
  • 出典:劉向(说苑·政理)
  • 意味:耳で聞くより目で見た方が間違いがない、との意。百聞は一見に如かず。

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記事:【漱石枕流】 言い訳上手に負けるわけにはいかない

▮堂々と言い逃れする社員

 中国・大連のある日系の工場。規模はかなり大きい。正面ゲートの横には警備室があり警備員が来客の対応などを行っているのは一般的。ところが、警備室に設置されている監視カメラシステムのモニターの電源が入っていないのか画面が真っ黒。なんじゃこりゃ…

 その警備員さん(もちろん中国人)にその訳を尋ねると、「カメラが壊れているので電源を入れても映らない」と。続けて、いつ頃からこうなっているのか聞くと、「ずっと前から」とのこと。これでは、多額の費用を投入して取付けた設備が全く活用されていないし、もったいないことです。

 この警備員さんは、「故障した時には報告するようにとは総務部長から言われていない。だから私たちにはミスはない」と言うのです。悪いのは具体的な指示をしない管理者の方だと主張しています。自分たちの任務を果たすために使う設備が壊れたら直属上司に報告するのは当たり前のことです。それをしないのは無責任ではないか。しかし、警備員さんは平然とそう言ってのけるのです。

 それはどう見ても「漱石枕流」、こじつけの正当化でしかありません。現代社会にあっても理屈の通らない言い逃れがまかり通っているのが現実。

 

▮現場に無関心な経営者

 実はもっと気にしなければならないのは、その工場の経営層が警備室のそのような実態を、まったく知らなかったことです。現場からは故障したという報告は上がってきていないと言うに至っては何をかいわんや、あきれて言う言葉もありません。

 きっと、自社の安全や防犯について会議や朝礼で強調していると思われますが、それはただ口先だけの言葉で社員の心には響いていないと言わざるを得ません。

 会社の経営層が現場のことに無関心であると、社員の目に映るようなことになったのでは、さまざまな場面で影響が出ることを知るべきです。

 もし現場のことに無関心であるとすれば、現地会社の経営を任された総経理として無責任この上ないということになります。

 

▮強人所難

 日本国内ではごく普通の中堅社員が、総経理(社長)や総務部長などの肩書をもって中国現地会社に派遣された日本人社員。日本では保安業務は一般的に総務部や管財部門の職掌で、企業としての経営ファクターの中でそれほどの重きは置かれていません。

 しかし、欧米やアジア、それに中国などでは、各企業がセキュリティオフィサーと言う名の専門家を配置し、自社の安全面に目を配っています。それだけ会社として安全を重要視しているといえます。

 これは、日本は性善説依拠しているのに対し、海外では性悪説がよく用いられていることによるのかもしれません。さすれば日本こそが特殊であるということに他なりません。

 そういう環境で育ち、さらに保安業務の何たるかを理解していない素人が、現地の警備員を管理するのはそもそも無理な話です。

 専門家であっても簡単ではないのに、知識も経験もない社員に無理難題を押し付ける、「強人所難」。日本本社のそのような対応では、いい結果は得られないと解釈すべきでありましょう。どちらかと言えば性悪説で臨んだ方が良い結果が得られることの多い海外では、保安業務のウエイトは極めて重いということです。

 

▮耳聞は目見に如かず

 言い訳上手な彼らに対して、もし皆の面前で大きな声を上げ、それを咎めるようなことをしたとしたら、どうなるでしょう。周囲の社員達の心は総経理(社長)から遠ざかる事になり、結局業績の拡大は夢と化します。かと言って彼らの言い訳を聞き流してしまうと、ますます増長することは疑う余地はありません。

 「自分に非はない」と主張する現地社員に舐められないようにするにはどうすればいいのでしょうか。その大事なポイントのひとつが総経理(社長)自ら現場に出向き自分の目で実態を見る、ということです。

 その際には問題意識を研ぎ澄まして現場を見るのです。いつもは閉まっているドアが開いている、監視カメラのモニターテレビの電源が入っていない、等々本来あるべき状態になっていないことを疑問視すること。

 現場の実態を見ると是正すべきところはどこか、またどういう策を以て行えばよいのか、と色々なことが見えてきます。

 「耳聞は目見に如かず」と古来言われているとおりです。静かなオフィスにいて、部下社員から報告を受けているだけでは、わからないことが現場に出ると見えてくるのです。

 部下の言い逃れを防止するためにもまずは、総経理や日本人経営幹部は自らを正すことから始めなければなりません。現場重視の姿勢は、日本よりも実は中国現地の方が求められます。

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