説苑の【螳螂捕蝉】という仕掛け ロックオンしたはずなのに実は…

大連・英歌石植物園(2015年4月)

事業が好調に推移していれば、一方ではそのことを好ましく思っていない人が必ずいるものです。彼らは背後から虎視眈々と狙っているかもしれません。いや、狙っているのです。中国での戦は「正正堂堂」といったきれいごとは言っていられません。

 

成功のヒント 中国のことわざ・格言

▮今回のことわざ(五十音順)

 

感激涕零 / 感激涕零(かんげき ていれい)

  • 中国語:感激涕零   [ gǎn jī tì líng ]
  • 出典:唐・刘禹锡(平蔡行)
  • 意味:感激して涙を流す。非常に感激、感動することの例え。

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轻而易举 / 軽而易挙

  • 中国語:轻而易举   [ qīng ér yì jǔ ]
  • 出典:詩経(大雅·烝民)
  • 意味:造作なく容易にできること。赤子の手をひねる。

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束手无策 / 束手無策

  • 中国語:束手无策   [ shù shǒu wú cè ]
  • 出典:宋季三朝政要
  • 意味:手が縛られ抜け出すことができない。なす術がない、手の施しようがないこと。

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螳螂捕蝉,黄雀在后 / 蟷螂 蝉を捕え、黄雀 後に在り

  • 中国語:螳螂捕蝉,黄雀在后   [ tang láng bǔ chán, huáng què zài hòu ]
  • 出典:説苑(ぜいえん)
  • 意味:蟷螂(カマキリ)がセミを捕えようとしているが、その後ろには黄雀(鶸=ひわ)がいてカマキリを狙っている。目の前の利益に夢中になって、後ろから近づく災いに気がつかないことの例え。

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堂堂之阵,正正之旗 / 堂堂の陣、正正の旗 

  • 中国語:堂堂之阵,正正之旗   [ táng táng zhī zhèn,zhèng zhèng zhī qí ]
  • 出典:孫子(軍争)
  • 意味:軍の陣容が整い勢いが盛んなこと。「正々堂々」の語源。(原文の最後に、敵の行動に応じて変化せよ、と言っています)

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記事:【螳螂捕蝉】の仕掛け ロックオンしたはずなのに実は…

▮束手無策

 ごたついていた社内の整備が一段落し、さあ、打って出るぞ、と思った矢先、管掌当局から一枚の通知文書が…

 そこにあるは「外国資本100%の企業は許可された範囲以外の業種企業を開拓してはならない」という内容。更に「もし同業種企業との契約を保有しているのであれば、その契約を更新してはならない」と。つまり部分的であるとはいえ業務停止命令ではないですか。

 これでは事業範囲が極端に制限されることになり、企業としての存続にも関わってきます。

 寝耳に水の当局からの通知。設立して僅か数年の小さな会社にとっては絶対機関からの通知に対して「束手無策」、なす術がありません。

 

▮軽而易挙

 そもそも地元当局傘下の国営企業と日本との合弁企業として設立され、その約5年後に中央政府からの決定により当該合弁の相手側企業が合弁を維持できなくなり、やむを得ず合弁を解消。つまり中国側の一方的な都合により合弁が解消され、同時に外資100%の企業に変更登記することになったのです。

 そして次は一部業務停止とは如何にも無理無体。抗議をしたものの受け入れられず従わざるを得ないことに。

 実は、その管掌機関は業界の監督官庁として許認可権を持ち、一方で自ら子会社を設立していました。

 とても分かりにくい構図です。監督官庁とは右手で握手しながら友好関係を築き、市場では左手の拳を振り上げながら、その監督官庁の子会社と競争していたのです。

 そんなことですから、ちっぽけな会社をひねりつぶすことなど彼らにとっては赤子の手をひねるようなもの。詩経にある「軽而易挙」ということわざのように…

いずれにしても、当時は既に市場競争社会になっていたとはいえ、現実には正当な競争とは程遠い状態でした。

 

▮堂堂の陣、正正の旗

 事ここに至った状況を見ると、どうも競争相手の影がちらついていました。規模は大きくはないけれど、なかなか手強そうな競争相手の出現に、安閑としていられなくなった件の子会社が、出資者である当局にねじ込んで手足をもぎ取ろうとしたのではないかと思われます。

 マーケットの中でガチンコ勝負をするのならまだしも、自らの営業努力の不足を棚に上げて…

 孫子は「堂堂の陣、正正の旗」という言葉を残しています。「正正堂堂」の語源であり、卑劣な手段を取らないことを意味するのですが、孫子はその言葉の後に続けて「整然とした軍と真正面からは争わずに、敵の行動に応じて変化せよ」とも言っています。

 実はここには元から「正正堂堂」なんて無い。実際には、如何に相手を陥れ、自軍を有利に導くか、要は勝てばいいのだ。これは現場で仕事をして得た実感です。

 

▮感激涕零

 外国資本100%であっても企業として存続することは問題なかったのですが、大口顧客の維持、新規顧客の開拓など大きく制限され、会社の業績にも多大な影響が避けられない状況でした。

 そんな状態が何か月か続くと社員達も「うちの会社、大丈夫か?」という不安感が増幅してきたのも理解できます。彼らにとっても死活問題であったのですが、心配するなということしか言えないことに歯がゆい思いも。

 嬉しいことに半年後に、新しい現地パートナーを見つけることができ、改めて合弁を組むことができました。辛かった苦境を脱することができたのです。そして新体制のもと事業の急拡大にひた走ることになりました。

 それにしても、この問題が表面化した後も、このことが原因で不安を感じ退職した社員は誰一人無く、また、契約を解約したユーザーもごく一部に止まり、大半は取引を維持してくれました。それどころか、以前にも増して拡大していただいた顧客も。

 中国古来の、感激して涙を流すとの意の「感激涕零」ということわざ。大きな支持を得られたことに感動、本当にありがたい限りでした。

 

▮螳螂捕蝉,黄雀在后

 中国で会社を積極的に経営するには「幹部社員の取り組み姿勢」と「社外の協力者」の二つのファクターが欠かせない。しかし、それだけでは発展できない場合もあるということです。

 「螳螂捕蝉,黄雀在后」ということわざ。カマキリが目の前のセミを捕まえようとしたその時、背後から鶸が迫っていた。マーケットの拡大にばかり目が向いてしい、後ろの備えが疎かになる、との警告です。

 その「事件」は後方の備えに当たるチャネルが欠け落ちていたことを気付かせてくれました。

 事業が好調に推移していれば、一方ではそのことを好ましく思っていない人が必ずいるものです。彼らは背後から虎視眈々と狙っているかもしれません。いや、狙っているのです。中国での戦は「正正堂堂」などときれいごとは言っていられないのです。好調な時ほど、背後に細心の注意を払うべきだと言えます。敵から身を守らなければならないのに、前ばかり見ていたのでは命取りになりかねません。

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