韓非子は【人主の患いは…】と 性悪説の効果大 だから社員を信じない

1937年に完成した大連駅 80年以上たった今もモダンです(2018年5月大連)

普段、社員と接する時には、彼らはハイハイと言うことを聞いているけれど、裏で何か企んではいるかもしれません。そんな現実の中で、事業を発展させるために総経理(社長)はどうすべきか。そこに性善説は役に立ちません、残念ですが。

 

成功のヒント 中国のことわざ・格言

人主之患在于信人 / 人主の患いは人を信ずるに在り

  • 中国語:人主之患在于信人   [ rén zhù zhī huàn zài yú xìn rén ]
  • ◆出典:韓非子(備内編)
  • ◆意味:一国を治める責任者であるトップとして、警戒すべきは臣下を信用・信頼してしまうことである。部下の前では絶対に隙を見せないこと。

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进退两难 / 進退両難

  • 中国語:进退两难   [ jìn tuì liǎng nán ]
  • 出典:衛公兵法
  • 意味:前進するも後退するも難しい。にっちもさっちもいかないこと。

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出人意表 / 人の意表に出ず

  • 中国語:出人意表   [ chū rén yì biǎo ]
  • 出典:南史
  • 意味:人々の予測を超えること。人の意表に出ること。

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两面三刀 / 両面三刀

  • 中国語:两面三刀   [ liǎng miàn sān dāo ]
  • 出典:李行道的(灰阑记)
  • 意味:良くない下心で表と裏を使い分けること。二枚舌を使うやり方。

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記事:【人主の患いは…】 性悪説の効果大 だから社員を信じない

▮出人意表

 そこは従業員1000人規模の比較的規模の大きな日系の工場。ある時、日本人管理者が、原材料の出庫量と製品出荷額がアンバランスであることに気がつきました。

 どうも原材料を盗まれたらしい。しかし、社内で調査しても流出量が多く、詳しい状況がどうにもわかりません。そこでやむなく警察に調べを委ねました。すると、担当者にとっても「出人意表」、まったく思いもよらないことが起きていたのです。

 社内組織に不正を働くグループが紛れ込み、原材料を管理する係、生産ラインの担当、等々必要箇所に一味の構成員が配置されていました。管理者が手薄になる夜間の時間帯に、生気の材料を使い生産ラインを動かし、出来上がった製品を外部に横流ししていたのです。

 外部には横流し品を売りさばく「営業部隊」もいたようです。原料も生産ラインも本物を使っていますから、品質は正規ルートで出荷されたものと全く同じで、しかも価格は正規品よりも格安ですからよく売れた、ということです。

 

▮両面三刀

 そうして組織化された不正チーム。何人かの悪徳不良社員が共謀して悪巧みを働いたのではなく、日本製品を横流しして荒稼ぎをすることを目的に、会社内に送り込まれたチームであったのです。

 

 実は、多くの従業員を抱える企業では、少なからず一定の人数が退職し、その補充のために中途採用をしなければならないことが日常化しています。ほぼ年中にわたって採用面接を行っています。

 そこに目を付けた悪巧みチームは、従業員募集の際に正式に応募し、面接に合格して入社したれっきとした社員でした。もちろんたくらみ等は噯びにも出さず、真面目然として面接を受けたのです。下心を持って表裏を使い分ける「両面三刀」ということわざそのもの。

 

 日系企業は中国企業に比べて管理が厳しいといっても、日本人は基本的には性善説。人を容易に信用し信頼もする日本企業が、そのような計画的、且つ周到に組まれた企みの前にはなすすべもなくひとたまりもありません。

 結局、彼らは司直の手に委ねられました。それにしても、真面目な社員を装い会社からは給料をもらい、裏側では製品を横流しすることで不当な利益を得ていたとは何とも腹立たしいことです。

 

▮進退両難

 どの企業でもよく発生するのが、社内の物品が不正に外部に流失するという問題です。トイレットペーパーからその企業の試作品に至るまで、対象になるのは様々です。しかしいずれも笑ってはいられないものばかりなのです。たいした被害ではないからと甘く見ていると、いずれのっぴきならない大問題になる可能性があるからです。

 中国にも「進退両難」と、進退窮まりにっちもさっちもいかくなることを例えることわざがあります。トイレットペーパーを見逃しているとその内、会社のパソコンが無くなったり…
たとえ、「犯人」を特定したとしても社内の秘密をばらすぞと逆切れされるのが落ち。

 一般庶民の生活レベルが上がっては来ていますが、企業にとってはその種の悩み事は昔も今も変わらないようです。

 

▮人主の患いは人を信ずるに在り

 そもそも、社員募集の面接のときには、細心の注意をもってその応募者の人となりを観察しているとは言っても、10分程度の面接ではその応募者が信用できるかどうかを判断することは到底無理です。

 つまり、信用できるかどうかわからない応募者をちょっと見ただけで社員として採用しているわけです。にもかかわらず、性善説を日本人管理者は自社の社員であると言うだけで信頼してしまう。

 韓非子には「人主の患いは人を信ずるに在り」という格言があります。会社でいえばリーダーや責任者は社員を信じてはならないというのです。社員はある意味で身内と同じ。それを信じるなとは、日本人には馴染みにくい考え方です。

 それだけに面接時の経緯を考えると、社員に対する普段のマネジメントがより重要になると言えます。普段、社員と接する時には、彼らはハイハイと言うことを聞いているけれど、裏で何か企んではいるかもしれません。これが韓非子流です。

 それに、社員をむやみに信用しないことは、社員が悪事に手を染める可能性を低くすることになり、結果として、彼らは社員であり続けることができるということです。

 マネジメント層の幹部は一般社員に対して決して隙を見せないことが肝要です。そして社員に対する笑顔の中に、会社として、責任者としての厳しさを周囲に感じさせることが必要です。

 結局は性悪説により簡単には信じないことが自分の身を守り、相手を守ることにもなります。少なくとも此の地では。

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