【老馬は途を識る】とのことわざ 挫折からどうして身を守る…

卑譲は徳の基なり 謙虚さが身を助く(2018年9月大阪)

「こんなことも知らないのか!」「こんなこともできないのか!」 と声高に言い放つ新進の日本人管理者。そんな人には「卑譲は徳の基なり」ということわざを知ってもらいたいものです。

 

中国ビジネスの成功を勝ち取る ことわざ・格言

卑让德之基也 / 卑譲は徳の基なり

◆中国語:卑让德之基也   [ bēi ràng dé zhī jī yě ]

◆出典:左傳

◆意味:卑は自分を低いところにいて相手を立てること。譲はゆずること。卑譲はりっぱな人格を作る基本になっている。謙遜して人に譲ることは、徳の基本となることである。リーダーには謙虚さが不可欠である。

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老马识途 / 老馬 途(みち)を識(し)る

◆中国語:老马识途   [ lǎo mǎ shí tú ]

◆日本語表記:老馬識途

◆出典:韩非子(说林上)

◆意味:老馬は道をよく知っているので迷うことは無い。経験が豊かでいつも適切な判断を下すことができることの例え。

◆故事:管仲、隰朋从于桓公伐孤竹,春往冬返,迷惑失道。管仲曰:‘老马之智可用也。’乃放老马而随之。遂得道。(管仲と隰朋は桓公に従って孤竹を征伐した。春に行き帰りは冬であったので、桓公の軍は誤って道を見失った。そこで桓公は老馬の智恵は役に立つと言って馬を放してその後に従った。すると進むべき道が見つかった)

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毋剿说,毋雷同 / 剿説(そうせつ)するなかれ、雷同するなかれ

◆中国語:毋剿说,毋雷同   [ wú chāo shuō, wú léi tóng ]

◆出典:礼记(曲礼上)

◆意味:剿说とは他人の説を自分の説とすること。(「剿」とはかすめ取ること) 雷同とはむやみに同調すること。付和雷同してはならない、との意。

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有其善,丧厥善 / その善を有りとせば、その善を喪う

◆中国語:有其善,丧厥善   [ yǒu qí shàn, sàng jué shàn ]

◆出典:書経

◆原文:有其善,丧厥善;矜其能,丧厥功

◆意味:自分は善いことをしていると、うぬぼれたりすると、せっかくの善行が台無しになってしまう。私は能力が高いと人を見下したりすると、せっかくの功績が帳消しになってします。経営の責任者たる総経理はふんぞり返るような態度では成功しない。

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記事:【老馬は途を識る】とのことわざ 挫折から身を守るもの

▮卑譲は徳の基なり

 中国の現地会社の総経理(社長)という立場にある人は、現地の社員と目線の高さを揃えて指導・マネジメントしなければなりません。現地社員にとって総経理は雲の上の人であって、一般社員にとっては雲の上まで登ることなどできようもないのですから。

 中国古典にある「卑譲は徳の基なり」ということわざは、リーダーにとっては謙虚さが必要であると教えています。相手を尊重し自分は一歩譲るという「卑譲(ひじょう)」の姿勢・態度が求められます。

 

▮新進の管理者

 「こんなことも知らないのか!」「こんなこともできないのか!」 と声高に言い放つ新進の日本人管理者。彼は、日本で社内の誰もが認める実績を上げ、そして選ばれて大きな期待を背に中国現地に送り込まれた。しかし、彼は本社の期待に応えようと頑張れば頑張るほど深みにはまってしまい、失敗のシナリオのとおりに彼は破綻に向かって歩みを運んでいるのです。

 プレーヤーとしては一流の人や高い能力を持つ人が間々犯しがちな誤りが、部下も自分と同じ能力を持っているはずだと誤解してしまうことです。その結果、つい上からの目線で「何で…」と言ってしまう。このことがどれだけ一般社員の心に傷をつける事か。挙句の果てに、うまく事が運ばない責任を部下のせいにする。これでは周囲の理解や部下からの支持が得られるはずがありません。

 

▮老馬 途を識る

 彼はどこでまちがったのでしょうか。

 彼は優秀な社員ではあったが、残念なことに、部下社員や顧客と相対する現場でのマネジメント経験がなかった。つまり優秀なプレーヤーが、突然、中国現地会社の総経理(社長)という高級管理職に就いたということです。

 韓非子は豊富な経験がいかに大事かを「老馬 途を識る」と言う言葉で例えています。日本でマネジメント経験がないと、中国赴任後の大きなハンディになり得るということです。現地に来てからマネジメントを勉強すればいいじゃないか、といっても短時間で結果を出さなければならない立場にある総経理。たった数年の任期中には間に合いかねます。

 何より、日本とは大きく異なる中国というビジネス環境の中で業績を伸ばすには、現地での経営経験が何より必要であろうと思います。しかし、中国経験のない人にとっては中国赴任後に肌で学習する以外にありません。

 

▮剿説するなかれ

 もうひとつ大事なことは、総経理は自分を取り巻く経営幹部を、自分の好みだけでイエスマンばかりを集めてしまうことの危うさを知ることです。

 礼記には「剿説(そうせつ)するなかれ、雷同するなかれ」とあります。他人の説を掠め取るな、むやみに同調するな、という意味です。「イエス」しか答えようとしない幹部では、よりよい戦略の組み立てや会社の運営には心許ない限りです。

 会社を一段大きくしたいのであれば、経営スタッフの中に総経理(社長)に対して敢えて「物言う幹部」を是非加えるべきであると強く思います。時には総経理にも反対意見を出し議論をすることもいいではないですか。日本人には気がつかない現地のことも少なくないからです。その結果、総経理として出した戦略案を修正し、成功に結び付くことになれば経営にずい分貢献したことになります。

 物言う幹部は実は総経理自身の右腕足り得る存在であり名脇役として極めて重要な働きをしてくれるはずです。総経理は意識して、そんなバイプレーヤーを見出し、育成しなければなりません。そのことが事業拡大の鍵を握っているといっても過言ではないのです。

 

▮その善を喪う

 総経理(社長)などの人の上に立つリーダーは、考え方・仕事における基本姿勢は謙虚であるべきです。書経には「その善を有りとせば、その善を喪う」と警鐘を鳴らしています。自分は善いことをしていると自惚れたりすると、せっかくの善行が台無しになってしまうというのです。ですから上から目線では部下社員は喜んでは動かない。

 そして、優秀な人が陥りがちな罠から遠ざけてくれるのが、物言う幹部の存在です。彼は総経理に緊張感を与え、きっともう一段高みに押し上げてくれるに違いがありません。

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