【責人要含蓄】ということわざ 中国でパワハラまがいの叱責をすると…

凍った池の氷を解かすような暖かみを(大連・労働公園 2014年2月)

責人要含蓄

 中国古典の「呻吟語」には「人を責むるには含蓄せんことを要す」との格言があります。叱責するときには、十のすべてを言うのではなく、相手の立場も考えて、七か八ぐらいで止めるのがよい。さらに婉曲な言い方をして、相手が叱責を受け入れやすいようにするのが肝要であるとの格言です。完膚なきまでに叱るのではなく、相手の立場になって叱責することが中国では特に重要です。

 例え叱責されて当然であったとしても、指摘された人が恥ずかしい思いをしたり、反発するようでは、結果的に叱責の効果はなく、ただ叱っただけに終わることが多いからです。

 身内であっても父兄などから責めを受ければ、耐えられない時があります。まして他人ならなおさらです。さらに日本人総経理から見ると“異国の人”である現地社員となると更にややこしくなります。リーダーは「叱り上手」を目指すべきではないでしょうか。

 

虚応故事

 バケツで水を浴びせたり、四つ這いで道路を歩かせたり、と中国では常軌を逸したパワハラが時々話題に上がります。では、現地の日系企業ではどうでしょうか。「何で、これくらいのことがわからないのかっ!」こんな叱責は以前の日本では珍しくなかったことです。

 かく言う私も、朝礼中にあくびをした社員に対して「やる気が無いのならこの場から出ていけ!」と言ってしまったことがありました。また、ある時には、高い能力を持っているにもかかわらず、六割程度の力で適当に仕事をやっている営業員がいました。その「虚応故事(故事に応じて虚しくす)」というお茶を濁したような態度に我慢ができず、つい「こんな成績でどうするんだ!」と皆の前で大声を上げてしまったこともありました。

 

狗急跳墻

 声を大きくして叱責し奮起を促すという、日本でやっていた時と同じような感覚での対応は中国においては誤ったマネジメントであると言わざるを得ません。面子を重んじる社会にあって人前で叱責することは、彼らの面子を潰してしまうことに他ならないからです。

 中国古典には窮地に追い込まれた犬は塀を飛び越える、という意味の「狗急跳墙(狗 急にして墻を跳ぶ)」という格言があります。普段、従順に見える部下社員ですが面子を潰された、それも外国人上司から叱責され面子を無くしたような場合に突如、牙をむいてくるのです。窮鼠猫を噛む、そのものです。そして途端に、総経理(社長)は、周囲の全員を相手にすることになりかねません。如何にタテ社会の中国とはいえ、上からの指示が絶対的ではない場合もあるのです。

 

泰然と之に処す

 中国では頭ごなしに人の面前で叱りつけることは何も得がありません。下手をすると「职权暴力(パワハラ)」だと訴えられかねません。もしこれがストなどに発展すれば最悪です。

 しかしながら、逆襲されることを恐れりあまり、過ちを犯した社員に対して総経理として何も言わないでいると、ますますのさばらすことになり、最終的には制御不能組織になってしまいます。

 失敗をしでかした社員に対して叱責をするときには、先ずは冷静に対応することが絶対条件です。総経理が瞬間湯沸かし器のように、自らカッカしてはならないのです。

 中国の古典には「泰然と之に処す」とあるように、“根気強く冷静に”、という態度が最も重要であると考えます。言ってみれば、怒鳴っている自分を眺めているもう一人の冷静な自分がいたのなら、対応はずいぶん変わってきます。

 「こんな成績でどうするんだ!」と叱った時には、続けて「せっかく素晴らしい能力を持っているのだから、それを発揮してくれ。期待しているよ」と付け加えたら、結果はまったく違ってきますよね。

 

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成功のヒント 中国のことわざ・格言

责人要含蓄 / 人を責むるには含蓄せんことを要す

◆中国語:责人要含蓄   [ zé rén yào hán xù ]

◆出典:呻吟語

◆原文:責人要含蓄、忌太尽。要委婉、忌太直。要疑似、忌太真。

◆意味:人を責めるときは控えめに。直線的ではなく婉曲な言い方で。露骨ではなく譬えでも引いて指摘するのがよい。というのが原文の大意。要は言いたいことのすべてを言わない方がよいとの意。

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泰然处之 / 泰然と之に処す

◆中国語:泰然处之   [ tài rán chǔ zhī ]

◆出典:袁宏(三国名臣序赞)

◆意味:沈着に対処すること。ベースは根気。

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狗急跳墙 / 狗 急にして墻を跳ぶ

◆中国語:狗急跳墙   [ gǒu jí tiào qiáng ]

◆出典:敦煌变文集(燕子赋)

◆意味:追い詰められた犬は塀を飛び越える。転じて悪人は追い詰められると捨てばちな行動に出る。窮鼠猫をかむの意。

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虚应故事 / 故事に応じて虚しくす

◆中国語:虚应故事   [ xū yìng gù shì ]

◆出典:宋史(刘黻传)

◆意味:旧例に倣って申し訳程度に物事をすること。いい加減な仕事。お茶を濁すこと。

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