【満身是胆】と三国志の趙雲 突然のSARS大事件 脅威を前に総経理は…

総経理たる者は事に臨んで動じてはならない(大阪府2019年12月)

2003年3月頃の大連。急に周囲から日本人がいなくなってきました。大連に進出する日系企業がどんどん増えているというのに…

成功のヒント 中国のことわざ・格言

满身是胆 / 満身これ胆なり

 

◆中国語:满身是胆   [ mǎn shēn shì dǎn ]

◆出典:三国志(蜀书•赵云传)

◆背景:蜀の将軍の趙雲(字は子龍)は、曹操軍が本陣まで追撃してくると、その陣門を開き、たった一騎で曹操軍と対峙した。曹操軍は微動だにしない趙雲に恐れをなして撤退した。このことから劉備は「子龍は満身これ胆である」と感嘆した。

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乱七八糟 / 乱七 八糟

 

◆中国語:乱七八糟   [ luàn qī bā zāo ]

◆出典:曾朴(孽海花)

◆意味:毛先ほどの秩序もなく、ひどい様子。めちゃくちゃとの意。

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惴惴不安 / 惴惴不安

 

◆中国語:惴惴不安   [ zhuì zhuì bù ān ]

◆出典:詩経(秦风・黄鸟)

◆意味:怖くてびくびくすること。不安でおずおずする。「惴惴」とはびくびくするさま。

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喃喃自语 / 喃喃(なんなん)と自ら語る

 

◆中国語:喃喃自语   [ nán nán zì yǔ ]

◆出典:八仙全传

◆意味:ぶつぶつと独り言を言うこと。

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明知山有虎偏向虎山行 / 山に虎有ることを明知し、虎の山に行くことを偏向す

 

◆中国語:明知山有虎偏向虎山行   [ míng zhī shān yǒu hǔ piān xiàng hǔ shān xíng ]

◆出典:清代・纪昀(阅微草堂笔记)

◆意味:山に虎がいると知って、虎の山に行く。困難で危険であることを畏れず、勇往邁進することの例え。

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記事:【満身是胆】突然のSARS大事件 脅威を前に総経理は…

▮惴惴不安

 2002年11月に広東省でSARS(重症急性呼吸器症候群)が勃発し、あろうことか翌年の3月には大連に飛び火したのです。

 SARSは当時の中国では「非典=非典型肺炎」と呼ばれ、誰もが経験したことのない疾患であっただけに、皆が「惴惴不安」、怖くてびくびくし不安であったのもやむを得ません。もし社内で発生しようものなら会社は閉鎖されてしまいます。そうなると顧客にサービスを提供することを生業としている我が社としては致命的。毎朝出勤してきた社員の体温検査を実施、客先訪問時の対策など何としても防がねばならないという強い思いがありました。

 現地に進出していた多くの日系企業では駐在員が帯同していた家族を安全のために一時帰国させ、また、中には駐在員自身も避難、帰国するところも。その結果、周囲から日本人が少なくなってきたのでした。

 

▮乱七八糟

  一時的に帰国することになった日本人社員の帯同家族は、帰国後一定期間は会社の保養所に“隔離”され、「まるで、ばい菌扱いだ」と憤慨していました。

 一方、本社は社員に対し中国への出張を禁止する指示を出したため、出張者は皆無。まるで「危険地域」扱いです。でも駐在社員はその「まるで危険地域」のようなところの最前線で仕事をし、生活をしていたのです。本社からはマスクを送ってきた以外には、残念ながら特に何もありませんでした。当るところが無いもどかしさに、「喃喃自語」。こんな時にこそ現地に入って仲間を激励するのがリーダーというものではないのか…、とブツブツ独り言。

 政府からは狭い部屋で多人数が集まる会議等は避けるように、との指示も出され。屋外で幹部会議を開催したことも。そんな中で想定外であったのは、顧客との会食機会が激減したこと。狭い個室での会食による感染を恐れたのでしょうが、変わり身の早さに感心させられました。

 当時、マスク着用の習慣がなかった現地の社員達。マスクをつけて仕事をしている日本人を見て、奇異に映ったことだと思います。大した動きのない本社や現地テレビによるSARS関連の報道の中で、会社経営者として社員やその家族を守り、会社を守るためにどうすればよいのか、頭の中はしっちゃかめっちゃか。「乱七八糟」でありました。

 

▮満身是胆

 現地会社において社員とともに仕事をしている日本人は、このようないざという時には一時的に帰国したり安全な国外に退避したりできますが、現地社員にはそのような逃げ場はありません。

 そんな彼らを残して敵前逃亡のように帰国していいものでしょうか。事態が収束し現地に戻った際に、どの面を下げて彼らに接するというのか。

 SARSのような感染症が蔓延する以外にも、例えば地震や台風などの自然災害、政情不安、その他にもカントリーリスクなど、大きな出来事に見舞われることがあります。現地に駐在をし、会社を運営していてそんな事態に遭遇した時にどうすればよいか。

 我が身の安全を第一とする他方、何があろうと一歩も退かないという心も持たねばならないと思います。それでなくても、とかく現地社員からは「日本人駐在員はどうせ腰掛だ」と思われがちです。日頃の行動はもちろんですが、特に「いざ」という場面での駐在員の態度・姿勢は強烈に印象に残るはずです。「勇将の下に弱卒無し」です。強いリーダーを認識した部下社員達は、その後には大きな力を発揮してくれるに違いありません。

 三国志の中に、たった一騎で曹操軍と対峙し微動だにしなかった趙雲をさして「満身是胆」と感嘆したというくだりがあります。駐在員としてどのような事態が起ころうとも決して動じない、胆が据わった態度が必要ではないでしょうか。

 

▮虎の山に行く

 現地社員の仲間達、多くの顧客に対応する責任者として、現場から退避することなど私には考えられませんでした。たとえ、日本本社から支援がなくても、自分の周囲から日本人がいなくなってもここで頑張るぞ、と意気込んでいました。

 中国古典にある「山に虎有ることを明知し、虎の山に行くことを偏向す」とのことわざは、困難で危険であることを畏れず、勇往邁進することの例えです。本社から派遣された日本人がSARSなどの非常時に、現地にとどまるということは犬死になりかねないという意見もあろうかと思います。しかし、どのような困難にぶつかっても、総経理たる者は会社を守る、社員を守る、顧客を守るという決意に立つべきだと考えます。それが総経理の責任ではないでしょうか。

 そう腹をくくると、不思議と心が落ち着き、打つ手が見えてきます。そして、その姿は社員にどれほど頼もしく、また誇らしく映ったのではないかと思います。

※重症急性呼吸器症候群(SARS: severe acute respiratory syndrome)

SARSは2002年11月16日に、中国南部広東省で非定型性肺炎の患者が発生。その後、32の地域や国々へ拡大した。2003年3月15日にWHOは、原因不明の重症呼吸器疾患としてsevere acute respiratory syndrome(SARS)と名づけ、「世界規模の健康上の脅威」と位置づけ、異例の旅行勧告も発表しました。

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