孫子は【兵形象水】と 年度末を控えた中国この時期の重要課題とは

大連中山広場には多くの歴史建造物が その多くは銀行(2016年10月)

ある時、現地の部下社員から「顧客を接待したいので許可が欲しい」という申し出がありました。接待の理由を尋ねると「未回収金を回収するため」だというのです。何かおかしい。

 

理屈にかなっていない

 会社がサービス業務を顧客に提供し、その対価としてお金をいただく。ところがどういう訳かそれをお支払いいただけない。明確な理由は無いにもかかわらず、である。

 会社として払っていただいて当然のお金をいただくために接待をする?! 中国の古典には「奇談怪論」との言葉がありますが、まったく理解のできない、理屈にもかなっていない話ではないでしょうか。

 以前から言われているように、中国では売掛金の回収には相当な労力を使わねばならないのが現実です。中には政府機関ですら支払いを滞らせることもあるほどです。

 キャッシュフロー経営が重要な昨今、せっかくの売上金が回収できなければ大問題です。何せ、社員達が汗を流してサービスを提供した対価なのですから、総経理(社長)として看過できません。

 年中未収金の回収には注力しなければなりませんが、特に中国の会計年度末である12月を間近に控えた時期は、キャッシュフローをよくするために極めて重要な課題です。

 

軽重を権衡

 我が社は前払いでいただくのを基本としていましたので、それほど大きな問題にはなりませんでした。それでも現実的には未回収金は発生するのです。

 ある時、地元の著名企業が、かなりの金額の売上金を払ってくれないと、社員から報告がありました。誰でも知っている著名企業でもあり、まあいいかと思っている間にどんどん未収金がたまっていったようです。

 社員の汗の結晶を簡単に損金で処理するわけにもいかず、頭を抱えてしまいました。淮南子は「軽重を権衡(けんこう)す」とあります。この時ばかりは、私の個人人脈を頼って一席を設け、問題を相談、件の著名企業の担当者に目の前で電話をしていただき、全額を一発回収できたことがありました。

 払ってもらって当然の売掛金を回収するために、中国では接待や人脈を活用し、時には法的対応など、あの手この手を使う必要があります。

 

物言わずば先延ばし

 それにしても、何でこうも金払いが悪いのか。別にお金がないわけでもないようです。総経理が出張中で支払い決裁がされないとか、何とか理由をつけては先送りするのが常。会社の経理担当者は少しでも支払いを先に延ばすと、上司から評価されるというのです。

 通常の後払い方式の場合は、売上金の8割は回収不能に陥るともいわれる中国の売上金の回収問題。未収金回収のためには正攻法だけでなく、状況に応じた柔軟な対応が不可欠です。

 孫子曰く「兵の形は水に象る」と。状況によって変幻自在に変化していく水のように柔軟に、とは何も戦場だけの話ではありません。払わないことを評価するのであれば、こちらは回収担当者を配置し、回収金額や回収率を評価することも効果的です。

 

総経理(社長)の強い意志

 未回収金の回収、基本は未収金を出さないようにすること。そして何よりも大事なのは、総経理(社長)の取り組み姿勢ではないでしょうか。

 もしも、多少の未回収金の発生はやむを得ないと総経理が考えると、そういう風潮が社内に緩みとして蔓延してきます。これは非常に厄介です。

 ですから、例え少額の未収金でも断固として回収するという毅然とした姿勢が総経理には求められます。未収金額以上のお金をかけて法的対応をすることだって時には必要だと考えます。計算上では割が合いませんが、会社としての未回収金に対する強い姿勢を知らしめることはたいへん重要であると思います。

 しかし、そんな間尺に合わないことをしてどうするんだ、という現場を知らない日本本社のアホがいるのは残念なことです。中国古典には「本を舎てて末(すえ)を逐(お)う」と、根本が見えず末節にとらわれることほど、苛つくことはありません。

いずれにしても、中国で売上金の回収は日系企業にとって最も苦労をする問題のひとつなのです。

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成功のヒント 中国のことわざ・格言

兵形象水 / 兵の形は水に象る

◆中国語: 兵形象水   [ bīng xíng xiàng shuǐ ]

◆出典:孫子(虚実篇)

◆意味:刻々と変化する状況に応じて、水のように変幻自在に変化していくこと。水は大きなエネルギーを持っているが、柔軟そのものである、との意。

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舍本逐末 / 本を舎てて末(すえ)を逐(お)う

◆中国語: 舍本逐末   [ shě běn zhú mò ]

◆出典:吕不韦(吕氏春秋・上农)

◆意味:事を成す時に根本には注意を払わず、末節にとらわれることの例え。本末転倒。

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奇谈怪论 / 奇談怪論

◆中国語: 奇谈怪论   [ qí tán guài lùn ]

◆出典:履园丛话

◆意味:怪しげな理屈のこと。荒唐で人情にも理屈にもかなっていないこと。

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权衡轻重 / 軽重を権衡(けんこう)す

◆中国語: 权衡轻重   [ quán héng qīng zhòng ]

◆出典:淮南子(泰族训)

◆意味:何が軽いか、重いかをはかりにかけること。利害を比較することの例え。

鄧小平氏は「 权衡利弊  [ quán héng lì bì ]」と様々な問題を処理する際には、「得るものと失うものを比較して」慎重に処理をせよ、と述べています。

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