【堅忍不抜】という中国のことわざ 歯車を回さない総経理って…

大樹の下はとても涼しいのだ(ハワイ・オアフ島モアナルア・ガーデンのモンキーポッド 2012年1月)

日本本社から派遣されて中国の現地会社のトップを務めている日本人。その中には、まったく何もしようとしないバカ総経理が…

 

寄らば大樹

 サラリーマンとしては上から何の指示もないのに、何かの新しいことをやってもし失敗したら怒られる。それに将来の自分の出世にも影響が出ては一大事。そうならば指示されたこと以外は何もしないことの方が得策。

 日本ではそんな考え方の社員がいつの間にかとても多くなりました。本社も口では「加点主義だから失敗を恐れずに…」なんて言いながら、実は減点主義で社員評価をしている現実も。大きな歯車からくるくる回される小さな歯車として、ちまちまとした仕事を当然のこととしている日本人。

 そんな日本人が突然、現地会社の総経理に任じられ、日本時代と同じ考え方で経営しようとする。子会社とはいえ総経理(社長)は経営トップです。日本時代とは違って、自分が大きな歯車となり他の小さな歯車を回す立場なのです。

 ところが、赴任後も相変わらず自身は小さな歯車のままで、本社という大きな歯車に依存しようとしている。その姿は「大樹底下好乗涼」という格言にほかならない。総経理が大樹の下で涼んでいては何もなしえない。

 

不作為の罪

 自分はそれでいいかもしれません。しかし、仲間の事や部下社員たちの事、社会の事などを何も考えない、寂しい考え方と言わざるを得ません。

 それに、そんな総経理の考え方は現地社員からはいとも簡単に見透かされてしまい、気のは言っていない適当な仕事しかしなくなり、結果としては彼らにとっても不幸なことでしかないのです。

 渋沢栄一翁はこう言っています。「事なかれ主義で何もしないで暮らすことは、実は罪悪な行為であることに気づくべきである」と。

 本社への帰任指示が出るまで何もしない不作為は現地会社経営にとって罪であると言わざるを得ません。

 

巧遅は拙速に如かずとは

 男子たる者、現地会社の総経理として経営を成功させることに果敢に挑戦すべきです。そのためにはどうしても不作為から脱し、大きな歯車として現地会社の組織を回さねばなりません。その際の考え方として孫子の言う「巧遅は拙速に如かず」がよいと考えます。

 「巧」と「拙」、それに「遅」と「速」の相反する問題で総経理にとって悩ましい限りです。中国のような変化スピードの速い環境では、スピード第一、「拙」でもいいから「速」を追いかける。すると、いつのまにか「巧」が置いて行かれて、何とも粗削りな組織になってしまいます。

 私が考えるに、実際の仕事の上では速さと出来栄えの両方を同時に追究するのがよいと考えます。しかし、それは簡単ではないので、状況を見てスピードを重視する、巧を重視する、という采配を総経理が振るうのです。孫子が言っている格言は、そういうことではないかと私は思います。

 総経理が懸命に、そして真剣にやれば、きっと総経理の思いは周囲に伝わるはず。そして、結果が出たら良否の如何を問わず寛大な態度で社員を評価すること。それを続けていれば、いずれ思いもしない成果が出ると私は思います。二つの内どちらか一つを取るのは誰にでもできることであり、挑戦すべきはその両方を狙うことです。

 

恕とは

 「組織であれ企業であれ、そこに生活する人々に、指導者が平等と尊厳の心で接するならば、人々は自発的な献身に目覚めて立つ。そのとき、社会や組織、企業は真の繁栄へと向かう。」とは米国ハーバード大学ヒックス博士の言。責任者たる総経理が、社員を見下したり威張ったりしていては、会社の発展はおぼつきません。

 加えて、論理的であるだけでなく、相手の「感情」に訴える説得力を持つことが求められます。論理よりもむしろ社員の感情に訴えかけることにウエイトを置くのが良いといえます。「身に蔵する所 恕ならず」とは中国・古典の「大学」にある言葉です。恕とは相手を思いやることです。

 社員を思いやることによって、社内に一体感が芽生え強い組織に成長していくということです。そんな総経理は周囲から尊敬される魅力的なリーダーだと言えるのではないでしょうか。

 経営陣と社員が一体感を持った会社は、業績も右肩上がり、日本本社も文句が言えなくなります。すると、自分がイメージした通りの運営ができるというものです。好循環の出発点は総経理自身にあると私は考えます。

 

堅忍不抜

 経営学者のドラッカー(Drucker)は、リーダーシップは賢さに支えられるものではなく、一貫性に支えられるものである、と言いました。

 「一貫性」とはすなわち「ぶれない心」だと思います。その「ぶれない心」を生み出すのはその人の持つ「信念」であり、信念に裏打ちされた「努力」、そして「忍耐」であるということを学びました。

 「堅忍不抜(けんにんふばつ)」とは、古くからの中国のことわざ。意志堅固でぐらつかないことを意味する言葉です。少々のことではぶれない総経理に対し、社員達はきっと安心感を持ち、総経理を信頼していい仕事をしてくれるはず。

「成功を収めるための重要ポイント 現場目線で見たツボ」 はこちら

 

成功のヒント 中国のことわざ・格言

巧迟不如拙速 / 巧遅は拙速に如かず

◆中国語:巧迟不如拙速   [ qiǎo chí bù rú zhuō sù ]

◆出典:孫子(作戦)

◆意味:いかに上手であっても遅いのは、たとえ下手でも速いのにはかなわない。私は巧且つ速を求めることに挑戦すべきと考えます。

»本文に戻る

 

坚忍不拔 / 堅忍不抜

◆中国語:坚忍不拔   [ jiān rěn bù bá ]

◆出典:宋·苏轼(晁错论)

◆意味:意志堅固でぐらつかないこと。困難を耐え忍び信念を貫くこと。

»本文に戻る

 

所藏乎身不恕 / 身に蔵する所 恕ならず

◆中国語:所藏乎身不恕   [ suǒ cáng hū shēn bù shù ]

◆原文:所藏乎身不恕,而能喻诸人者,未之有也(身に藏する所恕(じょ)ならずして、而も能(よ)く諸を人に喻(さと)す者は、未だ之れ有らざるなり)

◆出典:大学

◆意味:身に備えている所の徳を、他人に真心から及ぼさずして、人に道を諭すことのできる人はいない。他人を思いやる心とは、相手の立場で考えるということ。すなわち自他共の精神で接するのが良い。

»本文に戻る

 

大树底下好乘凉 / 寄らば大樹の陰

◆中国語:大树底下好乘凉   [ dà shù dǐ xià hǎo chéng liáng ]

◆日本語表記:大樹底下好乗涼

◆出典:元·刘弘嫁婢

◆意味:大樹の下は涼を取るのに適している。転じて、他を頼み、事をうまく運ぶ。自分では労せずに成果を得ること。寄らば大樹の陰。

»本文に戻る

「現場目線で読み解く 中国のことわざ・格言」はこちら

 

Follow me!