三国志で孫権【長ずる所を貴ぶ】との格言 過半数のシンパ作りが…

怠け者パンダにも長ずる所あり(2011年4月成都パンダ繁殖研究基地 )

サラリーマンは誰しも同じだろうと思いますが、転勤が決まり新任地には「ようし、やるぞ」という強い意気込み満々で乗り込んで行きます。しかし、必ずしもその気持ちが現地の皆さんに伝わるとは限りません。先頭に立って走り出しても、後ろを振り向くと誰もいなかった、何てことも…

叱咤風雲

 自分はやる気満々、中国古来の「叱咤風雲」と風雲が奮い立たんばかりです。さらに、本社から注がれる目を必要以上に意識し、その結果ますます力んでしまい勝ち。そういった心理はとても理解できます。何せ、かく言う私も中国赴任当初はそうでした。

 滑り出しの一か月目が終わった時に、思ったような成果が出た時はそれで良いのですが、そうではなかったときに問題が起こります。やらんかなという強い気持ちとは裏腹の結果を目の前にして、「何だ、この結果は…!」「前年よりもマイナスじゃないかっ!」などと目くじらを立て、声を荒げるようなことが往々にして有るものです

 力が入るあまりについ大きな声を張り上げるような叱咤激励によって奮起するのは日本国内ぐらいなものです。中国では多くの場合は、かえって社員が萎えてしまい、そこに部下の離反の心が芽生えてきます。

 

否定と認めること

 2000年4月に上海から異動となり大連の総経理(社長)として着任した私は、いろいろとあった迷いは既に払拭し腹は固まっていました。私にとって大連での初出勤後、社員のみんなに集まってもらい、私はみんなに語りかけました。目の前にいるのは、前任者によっていわば全否定された社員達です。

 「皆さんは会社が設立されてからずっと頑張ってきました。その皆さんを守るために私はここに来ました。ですからこれからは安心して仕事をしてください。でも、一つだけ条件があります。それは一生懸命仕事をすることです。そうすれば私は守ります。もしそうではない人がいたら、その人は守りたくても守れません」と。

 人は否定されるとへこんでしまい、逆に認められるとモチベーションが高まると言われています。ならば、相手を認めるマネジメントをすればよい。

 仮に成績が良くなかったとしても、現地社員の彼らは彼らなりに努力したはずです。にもかかわらず、それを叱責されたのでは、面子を重んじる中国ですから、うまくいくわけがありません。

 

長ずる所を貴ぶ

 三国時代、呉の孫権は人使いが上手だったそうです。孫権の言葉に「貴其所長、忘其所短」とあります。部下を使うときには、短所は把握しつつもそれには触れず、長所を伸ばすように仕向けるとよいと言うのです。一般的に人は良くないことを指摘されるよりも、長所を褒められた方が向上心が沸き成長するのだと言われています。

 たとえば、1か月が終わりその月の業績が思わしくなくても、そのことを否定はしない。何故なら、目標は達成できなかったとしても、皆、それなりに努力はしたのだから。その努力を否定されては部下の立つ瀬がなくなってしまいます。まず部下を認めることから始めることにしたらどうでしょうか。

 

時務を識る

 気を付けなければならないことがあります。総経理から否定されなかったことで、十分な努力をしなくてもいいんだという誤解を与えてしまっては元も子もありません。

じゃぁどうすればよいのでしょうか。

 総経理として納得のできない現状であっても、社員を否定せずにどうすれば打開できるのかを考えるのです。三国志に「時務を識るものは俊傑に在り」と書かれています。現状の何が問題よく理解し、そのうえで何をすべきかを知っているのが俊傑だというのです。

 私はこうも言いました。「残念ながら今月の目標は達成できなかったが、みんなはよく努力をしてくれた。そのことに対して感謝している。この次は必ず達成できると私は思っているよ。なぜなら、我々にはそれができる実力があるのだから。私は、それを確信している」と。つまり、「努力が足りなかったから達成できなかった」という意味のことを肯定形で伝え、同時に「だから来月はもっと努力しよう」と訴えたのです。

 そういう、自分の思いを繰り返し話して社員のみんなに伝える。責任者として部下を認めてあげれば、部下はそれに応えてくれるものです。その結果、リーダーとしての思いは社員に理解され、いつかは皆と気持ちが一つになります。そして意思の疎通ができるようになります。その結果、思いどおりの実績が出せる日が必ずやってくる、そう私は信じます。

 リーダーとしては、その組織の過半数の人が自分の思いを理解してくれると、とても仕事がやりやすくなります。そのシンパサイザー作りは相手を認めるところから始まります。

「成功を収めるための重要ポイント 現場目線で見たツボ」 はこちら

 

成功のヒント 中国のことわざ・格言

贵其所长、忘其所短 / その長ずる所を貴び、その短なるところを忘る

◆中国語:贵其所长、忘其所短   [ guì qí suǒ cháng, wàng qí suǒ duǎn ]

◆日本語表記:貴其所長、忘其所短

◆出典:三国志

◆意味:呉の孫権の言葉。部下を使うときには、短所は把握しつつ、しかしそれには触れず、

長所を伸ばすように仕向ける。人は短所を指摘されるよりも、長所を褒められた方がモチベーションが上がるという。(たとえ、日本では褒められたことなど一度もなくても、中国では褒めて育てることを重視すべきです)

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识时务者在乎俊杰 / 時務を識るものは俊傑に在り

◆中国語:识时务者在乎俊杰   [ shí shí wù zhě zài hū jùn jié ]

◆出典:三国志

◆意味:今がどういう時代なのかよく理解し、そのうえで何をすべきかを知っているのが

俊傑である、との意。(具体的に、何をどうするのか、答えを出さなければならないのが総経理です)

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叱咤风云 / 叱咤風雲

◆中国語:叱咤风云   [ chì zhà fēng yún ]

◆出典:梁书(元帝纪)

◆意味:勢いが極めて大きいこと。風雲が奮い立つ。

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