【羽翼已成】との中国のことわざ 突然の出来事で気づく大事

いつの間にか立派な羽翼が(2019年大阪)

大連に赴任して5年。

朝は誰よりも早く出社し、社員が出社する前の静かな時間に、前日にたまっていた事務処理を行い、夜は誰よりも遅く会社を出る。土日はゴルフの予定でもない限り自宅で資料作り。そんな仕事漬け状態をずっと続けていました。そんな最中の突然の発病…

 

太く短くは

 仕事もだんだん面白くなり、「もっと上」を目指そうという思いが強くありました。一方では自分が会社を引っ張っている…と信じて疑いもしていませんでした。仕事にやりがいを実感し充実した毎日を過ごしていたのです。

 そして突然、狭心症を発病。20日余りの入院生活を余儀なくされ、その間に様々なことを考えました。入院前は「人生は太く短く」をもって良しとする考え方でずっと生きてきました。しかし、ここで人生を終わらすわけにはいかないと思い、「細くていいから長く生きたい」と考え方をがらっと変えました。

 入院先の中国の主治医からは「煙草と命のどちらか一つを選んでください」と言われ、迷わず「命」を選択。それまで一日に二箱吸っていた煙草をきっぱりとやめました。

 健康であれば、もちろん仕事ができるし遊ぶこともできます。仲間や友人との交流もいっぱいできます。体を壊したら何もできません。優先して考えるのは「健康」です。こんな簡単なことに入院してやっと気がつきました。

 

羽翼已に成る

 赴任以来5年、自分がいるから会社は徐々にであったとしても発展している、と何の疑いもなく思っていました。しかし、入院中もいつもと同じ業績が上がっていたのです。私が不在であったにもかかわらず、案に相違して会社は何も変わらず動いていました。

 自分一人で会社を切り盛りし牽引している、と思っていたのですがそれは自身の自惚れでしかなかったのです。中国古典には「自らの力を量らず」とあります。自分の能力をわきまえていなかったことに気がつきました。

 考えてみたら、私が大連に来て5年目といえば、会社自体は設立から10年が経っていました。中国人の古い社員達はその時点で皆10年選手になっていたのです。史記にある「羽翼已成」と言うことわざように、間違いなく一人前の幹部社員として成長していたのです。部門責任者たちのローカル社員が間違いなく力をつけてきていることを、入院中の時間が教えてくれました。

 

怪我の功名

 自らの健康をおろそかにしたこと、社員の成長に気がつかなかったことは、毎日懸命に努力していたつもりで、実は「何もわかっちゃいない」と言われそうです。韓愈は「井に坐して天を観る」と見識の狭さを注意しています。

 先頭に立って引っ張っていたつもりでしたが、実は古参の社員達に後ろから背中を押されていたのではないでしょうか。もし突然の発病がなかったら入院することもなく、社員達の成長に気づくこともなかったと思います。その結果は恐らく「短命」の駐在で終わっていたことでしょう。

 病気になったことの深い意味を感じ、そして感謝しこのことを仕事に活かさねばと思いました。彼らの力を存分に引き出し、会社としての実力を増大させることにこそが経営者として腐心すべきです。

 退院してからは、可能な限り定時で出勤、退社し、どんどん幹部社員をはじめとする各責任者に権限を委譲し、自分は身軽にして会社責任者としてしかできない仕事をするようにしたのです。

 病気と入院は会社運営と私自身の生活習慣の両方を大きく方向転換させる、きっかけになりました。それが12年半にもわたる長期駐在を可能にしたのではないかと思います。

 中国古典にある「歪打正着(わいだせいちゃく)」とのことわざは日本での「怪我の功名」に相当します。思ってもみなかった病気がトリガーとなって、見えていなかったことが見えてきたのです。

 仕事に対する姿勢も変わりました。社員のみなさんとの接し方も変化しました。会社の大発展の新しいステージはこの入院から始まったと確信しました。大切なことを気付かせてくれた入院に感謝しなければなりません。

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成功のヒント 中国のことわざ・格言 

羽翼已成 / 羽翼已に成る

◆中国語:羽翼已成   [ yǔ yì yǐ chéng ]

◆出典:史記(留侯世家)

◆原文:多欲易之,彼四人辅之。羽翼已成,难动也。

◆故事:漢の高祖が皇太子を廃しようとしたが、四人の賢者が太子の補佐をしている様子を見て、「太子にはもう羽も翼も出来上がっている。もう廃することはできないと言って、皇太子の廃位はなくなった。

◆意味:補佐をするものが従い付いていて、既に一人前に成長している、との意。「羽翼」は転じて「補佐」の意。

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歪打正着 / 歪打正着(わいだせいちゃく)

◆中国語:歪打正着   [ wāi dǎ zhèng zháo ]

◆出典:清·西周生(醒世姻缘传)

◆意味:本来は適当ではない方法であるが、幸運にも満足できる結果に恵まれたことの例え。怪我の功名。

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坐井观天 / 井に坐して天を観る

◆中国語:坐井观天   [ zuò jǐng guān tiān ]

◆日本語表記:坐井観天

◆出典:韓愈(原道)

◆意味:井戸の中に坐って天を観る。見識見聞が狭いことの例え。(何にもわかっちゃいない)

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不自量力 / 自らの力を量らず

◆中国語:不自量力   [ bù zì liàng lì ]

◆出典:左傳(隐公十一年)

◆意味:自分の能力をわきまえないこと。自惚れること。

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