【塵も積もれば山となる】とのことわざ 中国的競争原理 一捻りするのがツボ

営業成績が上向きの傾向が出てきた。ここは勢いをつけて上昇傾向をしっかりしたものにしなければ。営業員の実績ランキング表を貼り出し、モチベーションを高めたいところだが、彼らは社員間の競争は嫌だという…
はてさてどうしたものか。

 

所詮はひらめき

 中国が計画経済から市場経済に移行したのは1978年ですから、競争社会の中で揉まれ育ったとは言い難いのが現実でした。ですから競争の結果、勝ち負けが白日の下に晒されるようなことは耐えられないと感じるのはやむを得ないと思います。

 しかし競争原理が働いていない組織はぬるま湯でしかなく、会社の一層の活性化は望めません。そこで、そんな彼ら社員にも受け入れられる競争の仕組みの導入と、例え負けた社員であっても面子はつぶさないことをコンセプトとして具体策を考えました。

 中国古来の「冥思苦想」ということわざにあるように思案を巡らし、知恵を絞ったのですが、実際には目の前の状況と自分の頭の中にある構想がリンクして閃いたことばかり。

 

一対一作戦

 社内の競争の原則を「一対一の競争」としました。例えば三人で競争するとした場合、勝ちは一人、負けが二人と負け組の方が多くなりますので、結果としては会社組織の士気は上がらないことになります。そして、大事なのは競争の結果、勝った社員はたとえ放っておいても気持ちよく仕事を続けるでしょうからいいのですが、問題は負けた社員。

 中国の古典である戦国策には「怨みは深浅を期せず」とあります。些細なことであっても、相手のプライドを傷つけるようなことはしないようにしなければなりません。むしろ負けた社員にこそ重きを置き、彼の面子を潰すことの無いような配慮をすべきです。

 

多層競争作戦・同期生作戦

 営業部門の数名の営業社員で構成するチームを複数編成し、チームごとに課長をリーダーとして配置、課長同士で競争する仕組みを作りました。次にいくつかの課で「部」を編成し、責任者である部長間でも競争しました。

つまり、社員同士、チームのリーダーとしての課長同士、それに部長同士という各階層で競争することにしました。こうして社内に幾重にもなる競争関係を作り、各層での競争が始まったというわけです。

 さらに、少し優秀な社員が出現し、例えば彼を「主任」に任命したいときには、あえて別のもう一人を「主任」に任命し、同時期に二人の主任を作り、彼らの間でも競争をしてもらいました。同期に任命されたわけですから、両者ともに相手に負けたくないという気持ちは当然のごとく湧いてきますので、ことさら「競争」を強調しなくても自然と競い合うようになりました。

 

空くじなし作戦

 月単位で競争し、勝利者にはもちろん栄誉を送りますが、非勝利者(敗者とは言わずあえてそう言います)に対しても健闘を讃え、次月の期待を総経理として表明します。面子をつぶすと一巻の終わりですから、むしろこちらの方が大事です。

 時にはセールスキャンペーンも実施しました。よくある、最優秀者賞、敢闘賞などと設定するのですが、これはあまり効果が期待できません。大勢の営業社員の中で賞をもらえるのはせいぜい二人か三人。そうすると大勢が見えてきたころには大半の人があきらめて努力をしなくなり、結果としてトータルの成果はさほど期待できません。

むしろ、成果に応じて全員に何らかの「賞」が行きわたる仕組みの方が全体としての効果が上がります。例えば「目標達成賞」など。

 

競争相手を外に見い出す作戦

 そして、そんな競争の中で極めつけは、「上海のグループ会社に勝とう」という戦略です。上海と大連では市場規模が大きく違います。たとえば新規顧客の獲得実績など、上海の方が良い成績を収めるのは誰が考えても当たり前。上海が大連に勝っても誰も驚きません。

 しかし、もし、大連が上海を上回る成果を出したらどうなるか。もちろん計画対比の達成率ではなく、スクラッチの勝負です。これは誰もが驚くはず。そして、上海は大連に負けたくないですから更に頑張ることでしょう。するとグループ全体としての成果は大きく伸びます。常にトップと自認していた上海を覚醒させ、安閑とはしてはいられない状況を作り出すことで、結果として全体の業績を押し上げることになります。そういう使命が大連にあるのだ、と強烈に社員に訴えました。実際に上海社を脅かすところまで行きました。

 中国の古典にある「積少成多(積むれば少 多と成る)」の格言のように、様々な競争シーンにおける小さな成功体験が、やがては大きな成功の因と成ることは間違いありません。大連の社員にも自信がついたと思います。

 

楽しく競争、大きく成長

 幾重にも重なる競争は、業容拡大にとても大きく貢献する結果となりました。しかし厳しくなる競争環境によって、もし「ぎすぎす」した組織になってしまうのは本意ではありませんので、それを少しでも和らげる社内イベント活動を併用しながら、「楽しく競争する」を旨としたのです。

 多くの素質を持っていなくても、人は環境によっては能力が開花し成長することもあります。荀子の残した言葉である「麻の中の蓬」の例えの如く、環境は人を育むのではないでしょうか。

競争の仕組みを作り、楽しく実行したという環境の中で、努力した社員たちが大きく成長しました。彼らにとって最初はなじめなかった「競争環境」ですが、結果は待遇面の改善を自らの努力で勝ち取り、仕事や人生に自信を持てるようになったことだと思います。

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成功のヒント 中国のことわざ・格言

蓬生麻中,不扶而直 / 蓬(よもぎ)も麻中(まちゅう)に生ずれば、扶(たす)けず

して直し

◆中国語:蓬生麻中,不扶而直   [ péng shēng má zhōng, bù fú ér zhí ]

◆出典:荀子(劝学)

◆意味:蓬は普通は地面に沿うように生えている。しかしまっすぐ上に伸びる麻の中に植えると、支えがなくともまっすぐに育つ。人間も同じで、 環境や良い交友関係に恵まれれば、それに感化されて立派な人間に育つのだという意。  

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冥思苦想 / 冥思苦想

◆中国語:冥思苦想   [ míng sī kǔ xiǎng ]

◆出典:十月

◆意味:思案を巡らし、知恵を絞ること。(実際には自分ではひらめきによるものが多かったように思います)

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怨不期深浅 / 怨みは深浅を期せず

◆中国語:怨不期深浅   [ yuàn bu qī shēn qiǎn ]

◆出典:戦国策

◆原文:怨不期深浅、其于伤心(怨みは深浅を期せず、其れ心を傷うに於いてす)

◆意味:些細な怨みであっても、相手のプライドを傷つけると手ひどい報いを受けることになる、との意。

◆故事:戦国時代の「中山」という小国の王が酒宴を開いた。招待客のうちの一人である「司馬子期」のところまで羊のスープが回ってこなかった。彼は激怒し大国の「楚」に走り、楚王をけしかけて「中山」に攻め込み、中山の王を追っ払った。国を追われた王は「怨みは深浅を期せず、其れ心を傷うに於いてす。吾、一杯の羊スープをもって国を失う」と述懐した。

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积少成多 / 積むれば少 多と成る

◆中国語:积少成多   [ jī shǎo chéng duō ]

◆出典:李商隐(杂纂)

◆意味:絶え間なく積み重ねていけば、少ないものが多くなる。塵も積もれば山となる。

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