【中秋の名月】天空で餅つく兎が警告 中国の総経理はハニートラップで狙われていると

大連に赴任してしばらく経ったころ、中国人の友人が「兎は自分の巣穴の周りの草は食べない、ということわざがある。覚えておいた方がいいよ」と話してくれました。唐突でしたので、ただ、へぇーと答えはしましたが、その意味はよくわかりませんでした。彼が言いたかったこととは…

兔子不吃窝边草

 彼の言う「兎は自分の巣穴の周りの草は食べない」とは中国の古典にある「兔子不吃窝边草」ということわざ。その意味は、悪党は犯行がばれるのを恐れて自分の家の近くでは悪事をはたらかない、というのが本来の意味です。

現代では、そこから転じて、身近の女性に手を出してはならない、という意味で使われているのだそうです。つまり、彼は、決して社内の女性社員には手を出すな、と言いたかったようです。

日本でもそんなことはご法度です。でも、海外に出た際に気を許したりすることも考えられるので、彼はそう忠告したかったのでしょうか。(私がやらかしそうに見えたのでしょうかね?)

色人を迷わさず、人自ら迷う

 中国でも、会社の総経理(社長)や老板(ラオバン)と呼ばれる経営者は、当然のことですが、それなりの権限を持っています。それがゆえに、時として過ちを犯すことがあります。ただ、減収や減益などの経営上の問題とはまったく別のところでの失敗は何としても避けたいものです。たとえばハニートラップに引っかかるような事態です。きっと禍根を残すことになります。

なぜなら、「色 人を迷わさず、人 自ら迷う」と中国古来の格言によれば、トラップにかかる原因は自分自身にあるというのです。いわゆる助べえ根性がその原因であるからです。

 加えて、古代中国の兵法書である「三十六計」には、美女を献上して敵の力を挫くという「美人計」なる作戦があります。外交官でもない一民間人である総経理に、ハニートラップを仕掛けられることは普通は無いとは思います。ですが、商売上の競争相手である中国地元企業が、既得権を脅かすよそ者には出て行ってもらいたいはず。

そんなことで強制帰国の憂き目に会ったのでは、その後のサラリーマン人生に陽は当たりません。決して油断はできないということです。用心するに越したことはありません。

セクハラという落とし穴

絶対に慎むべきは社内での軽率な言動です。中国語でセクシャルハラスメントは「性騒擾  」。昨今、ネット上でも取沙汰されています。

日本人が中国でこれをやってしまうと、場合によっては帰国を余儀なくされたりするなど、中国でビジネスを成功させるという本来の目的は吹っ飛んでしまいます。(我が社ではありませんが、実際にそんな日本人がいました)

 ある一流日系企業の総経理は、秘書は男性社員に限るとの信念(?)を持っていました。会社によっては、スケジュール調整など秘書を必要とする場合もあります。地方出張などにも同行する機会があるでしょうから、無用の誤解を招かないようにとの自衛策であったようです。

 また、総経理には、秘書以外にも通訳をする社員がついている場合もあります。多くは秘書が通訳を兼ねていますが、顧客との会食の場などにも通訳を伴うことがあります。通訳が女性の場合は、その方面にも何かと気を遣わねばなりません。ただ、中国顧客との会食に帯同する通訳は、美人の方が座が盛り上がるようです。ホストである私をそっちのけで通訳と話が盛り上がっていたことがありました。

勘違いする総経理

 社内がダメならと、アフターファイブにカラオケに行って、発散しようとすることがあります。カラオケと言っても、若くてきれいな女性が横に座り、歌はついでみたいなもの。そこでは日本で梲(うだつ)の上がらないおじ様たちも結構モテるんです。

彼女たちの目的は、もちろんおじさまではなくおじさまが持っている財布の中身。そこを誤解してしまうことが間々あります。中国古典の戦国策には「財を以て交わる者は、財尽くれば交わり絶つ」とあります。所詮サラリーマン、自分が使えるお金にも限度があり、枯渇すればそこで終わりなのです。金の切れ目が縁の切れ目。勘違いが原因で、会社の金に手をつけるなんて馬鹿なことにはならないよう自覚したいものです。

警告する天空の兎

 それなりの権限を持ったトップのところには、いろんな人が寄ってきます。誘惑も少なくありません。常に清廉である身を保持するには、自身がよくよく用心し脇を甘くしない姿勢が欠かせません。

 旧暦8月15日は中秋の名月。中国では中秋節です。月では兎が餅をつく、と言われるのは日本。中国では不老不死の薬を作っているのだそうです。ことわざに出てくる兎はなかなかの利口者で、時にはズルいとさえ言われています。満月の中で餅をつく兎を愛でながら、巣のそばの草は食べない地上の兎を見習いご用心あれ!

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中国ビジネスの成功を勝ち取る ことわざ・格言

兔子不吃窝边草 / 兎 窩辺の草は喫せず

◆中国語:兔子不吃窝边草   [ tù zi bù chī wō biān cǎo ]

◆出典:高陽(胡雪岩全传·平步青云)上册

◆意味:兎は巣のそばの草は食べない。転じて、悪党は自分の家の近くでは悪事を働かない。

更に転じて、身近な異性には手を出してはならない、との意。

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美人计 / 美人計

◆中国語:美人计   [ měi rén jì ]

◆出典:三十六計

◆意味:美人計(びじんけい)は兵法三十六計の第三十一計にあたる戦術。

色仕掛けで相手の戦意を蕩かせてしまう計略。勢いのある相手と正面からぶつかり合うのは愚策であり、敵が強いのであれば美人を献上するのが良いという計略。土地や財宝ではなく、美人を献上して敵将をこれに溺れさせれば、その敵将の野心や攻撃心を挫くとともに肉体を衰弱させることができる。また、土地や財物と違い、味方に負担がかからない。春秋時代末期に越が呉に滅ぼされそうになったとき、呉王の夫差に対して越の范蠡が美女西施を送り、やがて逆に呉を滅ぼしてしまったという故事。

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色不迷人、人自迷 / 色 人を迷わさず、人 自ら迷う

◆中国語:色不迷人、人自迷   [ Sè bù mí rén, rén zì mí ]

◆出典:明心宝鉴

◆原文:酒不醉人、人自醉。色不迷人、人自迷

◆意味:色欲が他人を迷わせるのではなく、人が自分で迷うのである。

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以财交者、财尽而交绝 / 財を以て交わる者は、財尽くれば交わり絶える

◆中国語:以财交者,财尽而交绝   [ yǐ cái jiāo zhě, cái jìn ér jiāo jué ]

◆出典:戦国策(楚策)

◆意味:財産目当ての交際をする者は、相手の財産が無くなれば交際が途絶える。実はこの後に、「以色交者,华落而爱渝」という言葉が続きます。この意味は、相手の美しさなどの色欲で交際する者は、相手の美が衰えれば寵愛が他人へ移る、との意。うわべだけの交わりは「財」にしても「色」にしてもはかないものです。

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