【旧態依然】と【莫逆の友】ということわざ 中国で会社内の活力は…

ある時、浮かぬ顔の営業員が。聞いてみると、総経理(私のことです)が言うとおりに、社内で営業員同士が競争すると大事な友人を無くしてしまう、と心配しているのだと言います。何を寝ぼけたことを…

旧貫に仍る

 海外で仕事をしていると、時に自分の想定外のことを社員から聞かされ面食らうことがあります。その時も「こいつ何を…」と思ったのです。

 会社が拡大していくためにエンジンの働きをするのが営業部門。そこで、社内で競争をすることで今以上に活力を持って会社を牽引することができる。営業会議で彼らの前でそう訴えた時の反応がそれでした。

 中国が計画経済から市場経済に移行したのは1978年。以来、改革開放政策を推し進め中国経済は目を見張る発展を遂げてきました。私が大連に赴任したのは市場経済体制となって20年余り後のことです。

 しかし、現実には市場での競争はまだまだ「緒に就いたばかり」という状況でした。当時は競争の真似事のような状態であったのです。論語にある「旧貫に仍る」という言葉のように、古臭い考え方に囚われていたのでは、いずれ変化についていけなくなってしまう。そんな危機感もありました。

莫逆の友

 いつまでも計画経済時代の旧習を引きずっていたのではどうしようもありません。そこで社内で競争をしようと訴えたのでした。

 営業社員達は競合する他の会社との競争など、市場競争経済に少しずつ慣れてはきていましたが、それでも社内で、しかも同僚でもある社員間で競争するなどということは考えられないことであったようです。

社員ごとの業績評価もしないで、個人の成果に関係なく一律のベースアップという「大鍋飯」の運営をしていたのですから無理もないことです。

しかし、そのままでは生ぬるい会社にしかなり得ず、スピード豊かな発展は望めません。どうしても、社員間で競争し会社を活性化させなければ…

手始めに社員のみんなにこう語りかけました。

「改革開放が進み、すでに“大锅饭”の時代ではなくなった。今までは、手をつないで横一列に並んでみんなで歩を進めてきた。しかし、それではついて歩くのがつらい人もいるだろうし、他の人よりも早く歩きたい人もいるだろう。だから一旦その手を放してみようよ」と。

更に、「競争は向上心をもたらし自分も競争相手も共に成長できる。競争の結果、各人の生活は今よりもっと豊かで幸せにすることができる」と競争の必要性を説いたのです。

 しかし、社員達からは芳しい反応は得られませんでした。中には、そんなことをしたら友達を無くす。だから友達とは競争できないと訴える社員が目立ちました。

 そういう社員からの訴えに対し、「お互いに幸せになれるのが競争なのだから、友情と競争が共存できるはずだ。また、そうすることが真の友人ではないのか」と口酸っぱく訴えたのです。社員同士で競争してもし離れていく同僚がいたとすれば、それは決して真の友人ではない。正々堂々と競争して勝負がつけば握手してお互いが相手を讃える。サッカーの試合と同じだ。それが「莫逆の友」ではないのか、とも話しました。

耳が濡れ目が染まる

 浮かぬ顔をしていた営業社員もそろりと動き出しました。社内で競争を始めてみると、人よりも少しばかり気の利いた社員も現れ、少しずつ変わって行きました。競争するということがどんなものか、知らず知らず理解され肯定されるようになったのです。唐代の韓愈の言葉に「耳が濡れ目が染まる」とあります。毎日見聞きしているうちに、徐々に影響を受けるようになるというのです。成功しそうな営業社員の姿を身近で目にしたとき、自分も後れを取っては…と考えるようになったのではないでしょうか。

 ほんの少し前までは、中国で仲間同士としての社員同士が競争をするなどとは、考えられなかったことです。社員達を「その気」にさせるのは簡単ではありませんし、根気強く話し込み動機づけをすることが必要です。しかし、成功すればその苦労は消えてしまいます。むしろ、その苦労があってこそ成功の喜びを享受できるというものです。

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成功のヒント 中国のことわざ・格言

耳濡目染 / 耳が濡れ目が染まる

◆中国語:耳濡目染   [ ěr rú mù rǎn ]

◆出典:唐·韩愈(清河郡公房公墓碣铭)

◆意味:日頃から耳にしたり目で見たりしているうちに、知らず知らず影響を受けるようになる、との意。

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莫逆之交 / 莫逆(ばくぎゃく)の交わり

◆中国語:莫逆之交   [ mò nì zhī jiāo ]

◆出典:庄子(大宗师)                                                                                              

◆原文:“四人相视而笑,莫逆于心,遂相与为友。”(四人相見て笑い、心に逆らうこと莫く、遂に相与に友と為る)

◆意味:非常に親しい付き合い、との意。意気投合した友のこと。莫逆の友。

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一仍旧贯 / 旧貫に仍る

◆中国語:一仍旧贯   [ yī réng jiù guàn ]

◆出典:論語(先进)

◆意味:旧貫は旧制度、旧習のこと。一切を旧例のとおりに行うとの意。旧態依然。

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