中国の白酒は52度 仕事で堂々と飲めるが【酒は飲むとも…】のことわざ
ある日の午後、自宅のベッドの上で目が覚めました。と、気がつくとベッドの横にはズボン、その先にワイシャツ、ネクタイ、上着・・・と玄関に向かって順番に脱ぎ捨てられた服が落ちているではないですか。
いったい何事が起きたのか…
部屋に散乱する衣服
脱ぎ捨てられた衣服を拾いながら、我に返りました。真っ昼間から白酒を飲んでしまったのでした。
大連の市街地から小一時間のところに旅順口区という街があります。日露戦争の激戦地であったところです。大きな軍港があり、外国人の立ち入りが制限されている場所が今もあります。私が赴任した当時、既に我が社は旅順に営業所を設けていました。ただ、その制限区域の中に営業所があったものですから、私は自社の営業所を訪問することができなかったのです。
しかし、その営業所にも会社の現地のスタッフや所長が毎日頑張っており、私はまず、そのエリヤの政府当局を表敬訪問することにしました。
局内で挨拶をし、営業所への立入りについて了承を取り付け、その後、昼食に招かれました。
真昼の旅順で…
お昼とはいえ、歓迎の会食ですからお酒が…。まして、東北地方のお酒の定番といえば白酒。普通は一口サイズの「小杯」で乾杯するのですが、当時の旅順はまだまだ都会の上品さは感じられず、普通のグラスです。なみなみと白酒を注ぎ、お互いの量が同じくらいであることを確認し合います。歓迎の気持はありがたいのですが、相当きつい!

旅順の中心部 鉄道の駅舎(2016/10/16撮影)
当時はまだまだ「酒を飲まずして仕事にはならない」という雰囲気が強く、得意先や政府機関とは食事と酒が必須でした。私はそんなに飲めるわけではなかったのですが、社業の発展のためにと、かなり無理をして乾杯の誘いに応じました。そして、その結果、やむなく直接自宅に戻り、無意識のうちに着ているものを脱ぎ捨てながら寝てしまったということでした。
その頃は、普段でもお客様や政府機関の方々との宴席を設ける機会が結構あって、酔いつぶれたこともたびたびでした。しかし、中国では昔から酒で事が成功することもあるが失敗することもあるという、「酒能成事,酒能败事」とのことわざがあります。
仕事とはいえ、どの程度まで飲めばよいのか、飲んでもよいのか、その場の自分の立場、相手や周囲との力関係などによってそれを判断しなければならず、新参者の私には簡単ではありませんでした。
酒には量なし、乱に及ばず
酒が飲めない人にとっては、結構辛い時代でしたが、それが一変した出来事がありました。2003年にSARSが流行した折に、狭い場所で大勢が集まることはよくないということが言われ、それを機に酒を飲むことを伴う会食などの機会が激減しました。
実は、当時の経済発展が生活を豊かにし、言わば飽食の時代に入り、ごちそうを振舞う接待よりも、お金の方に需要(?)が移っていったことも背景にあるのかなと思います。
とは言え、お酒を伴う会食が無くなったわけではありません。以前蘆と様子が異なるのは、ワインが好まれるようになり、飲み方もずいぶん品が良くなりました。無理強いされることもなくなりました。車で来た人は飲まないと言いますし、それを皆が了承する時代になりました。飲まなくてもちゃんと仕事ができるようになったのです。
「酒には量なし、乱に及ばず」と、飲む場合にも、ほどほどがよいとの昔の格言を守りたいと思います。いずれにしても、酒に命を懸ける必要はなく、最も大事な健康を最優先に考えるべきだと言えます。今の時代は、「酒を飲まずとも仕事はできる。」ということです。
☛ 「成功を収めるための重要ポイント 現場目線で見たツボ」 はこちら
成功のヒント 中国のことわざ・格言
酒能成事,酒能败事 / 酒は事を成し遂げもするし、失敗もする
◆中国語:酒能成事,酒能败事 [ jiǔ néng chéng shì, jiǔ néng bài shì ]
◆出典:水滸全伝
◆原文:但凡饮酒,不可尽饮。常言:‘酒能成事,酒能败事。
◆意味:酒は事を上手くも運びもするし、駄目にもする。
» 本文に戻る
酒无量,不及乱 / 酒は量なし、乱には及ばず
◆中国語:酒无量,不及乱 [ jiǔ wú liàng, bù jí luàn ]
◆日本語表記:酒無量、不及乱
◆出典:論語(郷党)
◆意味:酒には決まった量はないが、乱れるまでは飲まない、との意。節度ある飲酒を進めた言葉。酒は飲むとも飲まるるな。
» 本文に戻る
白酒 / バイジョウ
◆中国語:白酒 [ bái jiǔ ]
◆概要:中国の穀物を原料とする蒸留酒で、世界の6大蒸留酒(ブランデー、ウイスキー、ウオッカ、ジン、ラム、白酒)のひとつとされる。
アルコール度数が52度に達するものもあります。白酒の“白”は“透明”という意味。乾杯の後で、相手に向かって杯を傾け底を見せたり、逆さにして、飲み干したことを示す習慣があります。
ビールを飲み干す乾杯よりも、白酒の乾杯の方が、酒としての量が少ないのでよい、という日本人強者が結構います。(私はどちらもつらい)
» 本文に戻る
☛「現場目線で読み解く 中国のことわざ・格言」はこちら