日本人は楽ちんですねぇ…と羨望する中国人 日夜【兵法三十六計】を駆使

ある時、中国人の友人が私にこう言いました。「日本人は楽だねぇ!」と。

何を言っているのか。日本人は朝から晩までみっちりと仕事をしている。5時定時の10分後には誰一人オフィスに残っていない中国人社員とは違うんだ! それに、気に入らない上司や同僚との人間関係にも負けずにやっている。そのどこが楽ちんなんだ! と反論。彼の真意は…?

グレーゾーンの捌き

 彼の言い分はこうです。日本では規則や社会のルールが細かく整備されていて、やってもいいことや悪いことがはっきりとしている。だから、あれやこれやと考える必要がない。だから日本人は「楽でいいねぇ」。

 そう言われてみれば、日本では一般的には「白黒」がはっきりとしていて、その間の真ん中に少しだけあるグレー部分を判断すれば概ね事足ります。まぁ、言ってみれば高い塀の上を歩いているようなもので、内側或いは外側のどちらに倒すのが良いのか順法精神が旺盛な日本人なら大抵は誰にでも判断できます。

 一方中国では少しの「白」と「黒」の間に大きなグレーゾーンがあります。そのグレーゾーンの中で物事を前に向けて進めて行くためにはどうするのが良いのか、妥当な答えはどこにあるのか、中国人は常にそれを考えています。法治国家とは言っていますが、現実には幅広いグレーゾーンをどう捌くかが大きな問題となります。

でこぼこ道を走るたいへんさ

 いわば日本では舗装された道路を走るので何の心配もない。しかし中国では地道を走るようなもの。「坎坷不平」と漢代に言われているようにでこぼこで平ではない道路。水たまりや穴ぼこを避けながら、目を見開き神経を尖らせていないと転んでしまいます。

 そこで中国人は、常に人間関係作りを行い、活用し、歴史の中で自然と身体に染みついた兵法三十六計などの交渉術を駆使して、自身が有利になるように思いを巡らせているということです。

そうしなければ闘いに勝てません。だから中国人は大変なんですよと彼は溜め息交じりにそう言います。彼はそういうことを言いたかったようです。

 考えてみれば、中国現地で事業を展開している日系企業も中国企業と同じ土俵で戦っているわけです。その中国土俵で「日本の白黒がはっきりとした尺度」で運営しようとした場合は、その事業はたいして伸びません。しかも時間がかかります。

ですから日系企業に勤務する日本人社員も、中国土俵で戦いに勝とうとするのならば、「グレーゾーンの捌き」を学ばないと、現地ローカル企業とは勝負になりません。舗装された道路を歩くには革靴で問題ありませんが、でこぼこ道を歩くには革靴では似合わないということです。

任ずれば則ち疑う勿れ

 ところが、そうしようとすると、今度は日本本社がそれをよしとはしないという困った問題が発生します。日本本社は何よりコンプライアンスが大事のようです。旺盛な順法精神を背景として、コンプライアンスを錦の御旗のごとく掲げて立ちはだかってきます。

 現地企業で采配を振るう日本人総経理(社長)にとっては、明代の名言である「此れを顧みれば彼を失う」という悩ましい問題が出現します。この悩ましい問題をどうやって切り開くか、そのハードルを越えないと業容拡大は望めません。

 そこで日本本社が考えるべきは「任ずれば則ち疑う勿れ」です。本社は自分で人選をして総経理として現地に送り込んでいるのですから、運命共同体であるはずです。勿論、現地で総経理(社長)を張っている日本人社員は、グレーゾーンの中で経験により「越えてはならない一線」を肌感覚で理解しているはずです。ですから、日本本社も現地のことは現地に委ね、口は出さないのが唯一の解決策ではないかと思います。

同時に総経理は日本本社に対して腹をくくることができるか、が最後の決め手になるように思います。同じ日本人でも、中国でビジネスを展開する日本人は楽ちんではなさそうです。

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成功のヒント 中国のことわざ・格言

兵法三十六计 / 兵法三十六計

◆中国語:兵法三十六计  [ bīng fǎ sān shí liù jì ]

◆中世頃の中国の兵法書。兵法における戦術を六段階の三十六通りに分けてまとめた書物。武力ではなく策略で勝つ、力ではなく頭で勝つ、そのための智略の集大成です。私個人的には、如何に相手を欺き見方を有利に導くか、を説いたもので、そこには「正々堂々」と戦うというようなこととは無縁のように思います。

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坎坷不平 / 坎坷(かんか)にして平ならず

◆中国語:坎坷不平   [ kǎn kě bù píng ]

◆出典:漢·扬雄(河乐赋)

◆意味:坎坷とはでこぼことしていること。地面がでこぼこで平ではない。行く手には多くの困難があり順調ではないことを形容している。

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顾此失彼 /  此れを顧みれば彼を失う

◆中国語:顾此失彼   [ gù cǐ shī bǐ ]

◆日本語表記:顧此失彼

◆出典:明•冯梦龙(东周列国志)

◆意味:一方に気を取られると他方がおろそかになる。事柄が多くてとても一度に手が回らないこと。こちらを立てればあちらが立たず、の意。

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疑则勿任、任则勿疑 / 疑えば則ち任ずる勿れ、任ずれば則ち疑う勿れ

◆中国語:疑则勿任、任则勿疑   [ yí zé wù rèn, rèn zé wù yí ]

◆出典:資治通鑑

◆意味:疑いがある人は任用してはならない。任用したなら、その人を疑ってはならない。

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