中国のことわざ【樹大招風】とは 出る杭は打たれる 競争で何が変わる…

大連に赴任して九カ月、一年一度の給与改定の時期になったときのこと。私にとっては初めてでしたので幹部たちに聞いてみると「ずっと全社員一律の金額で改定していた。今年はいくら上げますか」と。それではちょっと…

樹大招風

 1992年以降、中国では改革開放政策が推し進められ、社会は市場競争経済に変化しました。私が大連に赴任したのは市場が開放され8年ほどが経った頃です。しかし、わずかそれだけの時間で計画経済時代の習慣が払拭されるなんてありえないことです。見様見真似の競争状態の一方で、大きな鍋でみんな平等に飯を食べる「大鍋飯」の意識が社員達の中にもまだまだ色濃く残っていました。

 当時の大連では、まるで皆が手をつないで横一列になって一歩一歩前進するというような感じでした。それを「公平である」といい、頭一つ前に出ることは秩序を乱すことと思われていたようです。中国の古典には「樹大招風」と、大きな木は人から妬まれるということわざもあります。日本の「出る杭は打たれる」といったところでしょうか。

安于现状

 ということですから、努力し会社に貢献した社員もそうではなかった社員も、評価や給与に差がないのが現実でした。とにかくそこそこの仕事をしていればそこそこの給料がもらえるという何ともぬるい会社でした。「現状に安んず」ということわざのように。

 しかしながら、そんな状態では、会社にも活力が生まれませんし、事業展開のスピードにも影響し、経済発展が急速に進展しつつある社会の変化についていけなくなることを危惧しました。それに結果としては社員達自身の生活の向上には繋がらないことになります。

 当時の「横一列」という状況の中にあっても、能力の高い社員や人よりも豊かになりたいと考えている社員は、少なからずいるはずで、彼らは他よりも二歩三歩前に出たいと思っているに違いない。私はそう考えました。
そこで、つないでいる手を一旦放し、お互いに競争しようと説得しました。社員間で競争することは、お互いの幸福を産むことになると繰り返し説明、説得をしました。

しかし、当時は社内で同僚と競争するなんてことは経験もなく、社員の多くは及び腰でした。中には競争すると同僚との関係がまずくなるという社員も。

水滴石を穿つ

 社員の中から競争の考え方を理解し、他の社員以上に努力をしようとする社員が少しずつ出てきました。たとえ、その月の目標が達成できなくても、懸命の努力を続けるならば、いつかは達成できるようになる。毎日のコツコツとした努力を続けるならば、必ず成功することができるはずと彼らを励まし、同時に彼らの持つ前向きな可能性を信じることにしました。

 「水滴石を穿つ」ということわざがありますが、わずかであっても努力を続ければ、どんなことでもできるはずです。何よりも社員は自分が総経理から信じられていることを感じると、一層の努力をすることになりました。ようやく社員間に競争意識が芽生えてきたのです。

鍥む、而して舎せず

 当初は社員に対して評価を行い「差」をつけること自体が、幹部社員にとって煩わしいことであったのかもしれません。評価をする側が避けていたのだと思います。「ぬるま湯」のような考え方が、私はとても気になり、どうにかしたいと強く思い競争意識を少しずつ植え込んでいったのです。

 並行して総経理などの経営幹部は、如何にして部下社員達に、「懸命の努力」を継続させることができるかが、管理者としての能力であると考えました。

 荀子は「鍥む、而して舎せず」と、粘り強く根気強く行うことの重要さを説いています。結局のところ、部下が自身の目標を達成できるか否かはひとえに管理者にかかっています。部下に可能性を自覚させ、管理者はそれを信じ、共に努力を重ねていけば必ず実現できる。その時には総経理も社員も共に成功を勝ち取ることができるということです。

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成功のヒント 中国のことわざ・格言

水滴石穿 / 水 石に滴りて穿つ

◆中国語:水滴石穿   [ shuǐ dī shí chuān ]

◆出典:南宋、羅大経

◆原文:一日一钱、千日一千、绳锯木断、水滴石穿

◆意味:一日に一銭というわずかなお金でも千日で一千銭という大金になる。縄で作ったのこぎりでも木を切ることができる。水滴でも石に穴をあけることができる。わずかずつでも努力を続ければどんなことでもできる、との意。

※もともとは金庫のわずか一銭を盗んだ官吏が、少額だから死刑になることはないだろうと開き直ったところ、長官が戒めとして説いたもの。結局この官吏は斬首されました。

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大锅饭 / 大鍋の飯本語表記:大鍋飯)

◆中国語:大锅饭   [ dà guō fàn ]

◆意味:すべての人が同じ待遇を受けること。

◆背景:1950年代末、人民公社には食堂が設けられ、そこでは誰もが平等に食事を供されたそうです。(働いても働かなくても飯にありつけるということになった)

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安于现状 / 現状に安んず

◆中国語:安于现状   [ ān yú xiàn zhuàng ]

◆出典:论凤姐

◆意味:眼前の状況や習慣を変える気持ちがなく、努力向上も求めない。ぬるま湯につかる。

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树大招风 / 樹 大ならば風招く

◆中国語:树大招风   [ shù dà zhāo fēng ]

◆出典:西游记

◆意味:樹が大きくなれば風を招く。能力が目立ったり、仕事が順調に推移すると、妬まれたりして風あたりも強くなる。出る杭は打たれる。

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锲而不舍 / 鍥む、而して舎せず

◆中国語:锲而不舍   [ qiè ér bù shě ]

◆出典:荀子(劝学)

◆意味:锲は彫刻のこと。舍は放り出すこと。止めること。途中で投げず一心に彫刻すること。転じて物事を根気よく,粘り強くすること。

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