中国で【運否天賦】では成功しない とは言え完璧主義では挫折を招く…

どの企業でも目標や計画を立てます。これは中国でも同じです。しかし、達成できなかったときに社員達の前で、「何だこりゃぁ!」「どうなってんだ!」とやったとしたらこれはアウト! 

听天由命

 日本ではパワハラまがいの叱責、同じようなことを中国でやると話はややこしいことになりかねません。なぜなら、ほぼ間違いなく中国人社員達の士気が低下し、その後の仕事に繋がってはいかないのです。面子を潰されてなにくそと頑張る人はここにはいないということです。

 そもそも計画だった仕事が苦手で不慣れな今の中国人社員達。頑張って仕事をしていると言っても所詮は「听天由命」と運を天に任せている状態。日本では「運否天賦」といいますがどこに行っても運任せという人がいるものです。月によって成績が良かったりそうでなかったりと安定してはいませんでした。そんなことで経営上も多くの問題を抱えていたのです。

 そこで幹部会議などで、“P-D-C-Aのサイクル”の絵を書きながら、計画を立て目標達成の努力することの重要性を説きました。しかし、実際には計画どおり仕事を進めるのはそう簡単ではありません。

窮寇には迫ること勿れ

 「計画どおりうまく行ってるかい?」と社員に問いかけたら、「うん、まあだいたいね」と。とても曖昧な答えがかえってきます。日本で仕事を経験してきた私としては、達成率とかあとこれだけで達成できるなど数字で答えてくれよと言いたくなります。

 そこで苛ついて「何故、達成できなかったんだ!」と攻め立てたら、最後は自身の努力が足りなかったというところに行きつきます。それを自分ではわかっていても周りの目がありますからそうは認めませんし、周囲もわかっているのでそこまで攻めなくてもと思います。結局、総経理にとっては周りの社員達のみんなを敵に回すことになってしまいます。

 ということでゴリゴリ攻め立てることは中国には似合いません。孫子の兵法には「囲師には必ず闕き、窮寇には迫ること勿れ」という一項があります。敵を追い詰めても、必ず逃げ道を開けておき、窮地に追い込んだ敵には攻撃をしてはならない、という意味です。窮鼠猫を噛むの例えのとおり思わぬ反撃をくらうことになってしまいます。

差不多

 ところでこの「まあ、だいたいね」という言葉。中国語では「差不多  」と。差は多くない、つまり似たようなものだ、大体同じだ、という意味でよく使われます。聞きようによっては腹の立つ言葉に聞こえます

 中国に赴任し、上海で1年余り中国語をゼロから勉強。その後大連に転勤し3~4年が過ぎたころ、結構しゃべれるようになっていました。日常会話は特に問題なく、仕事は基本的に中国語で行い、通訳がいなくても社員とコミュニケーションできる状態にまでなっていました。

 そんな中国語でのやり取りの中でイラっと来る「差不多」の言葉に、心のゆとりのようなものを感じるようになりました。一生懸命に努力した社員に対して例えば「できばえが多少不恰好だけど、形はだいたいできているんだから、いいじゃないか、御苦労さま」「目標は達成できなかったけど、できたのと同じくらい。みんな一所懸命努力したんだからいいじゃないか、この努力を続けていけば次は達成できると思うよ」

 総経理の口からそういう言葉を聞いた社員達はどれだけ救われることか。結果は別として社員達はとにかく懸命の努力をしたのですから、総経理としてそれを認めて寛大な対応をすることはきっと「次につながる」と私は思います。

太(はなは)だ厳なること勿れ

 日本的に考えると目標未達成の結果を認めることには抵抗があります。またそれを口に出すことにも勇気が必要です。中国の古典には「人の悪を攻むるには、太(はなは)だ厳なること勿れ」とあります。人を叱るときにはあまり厳しい態度で臨んではならないというのです。社員のことを思って日本では思いきり叱ることがありますが、中国では厳格すぎるのはよくないのです。

 もちろん仕事を始めるに際して立てる計画は緻密でないと話になりません。そして実行に際しては厳格に、結果に対しては寛大に。この繰り返しが会社組織としての力を増大し、大目標をも達成することにつながるのです。これこそが「大体」「差不多」の効用なのです。未達成の場合であっても「差不多」の考え方で一旦終わらせて、次の挑戦につなげる事を考えた方が皆にとっても自分にとっても良いはずです。

 実はもう一つの側面があります。総経理と言っても所詮は一人の人間。がちがちに自らを追い込んでいくと、しんどくなって下手すれば孤立無援になりかねないのです。そこで登場するのが「大体でいいじゃないか」という考え方。自分に甘くなるように見えるかもしれませんが、その余裕があればこそ次につながるというものです。中国で完璧を求めると時として挫折してしまいます。

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成功のヒント 中国のことわざ・格言

围师必阙,穷寇勿迫 / 囲師には必ず闕き、窮寇には迫ること勿れ

◆中国語:围师必阙,穷寇勿迫   [ wéi shī bì quē, qióng kòu wù pò ]

◆日本語表記:囲師必闕、窮寇勿追

◆出典:孫子

◆注釈:敵を追い詰めても、必ず逃げ道を開けておくこと、窮地に追い込んだ敵には攻撃をしかけてはならない。という意味の孫子の兵法のひとつです。数に劣る敵軍を包囲したとしても、「窮鼠猫をかむ」と言われるように、死を覚悟した相手は死に物狂いに反撃してくる恐れがあるので、敵の逃げ道を作っておけとの意。「寇」とは敵のこと。

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攻人之恶勿太严 / 人の悪を攻むるには、太(はなは)だ厳なること勿れ

◆中国語:攻人之恶勿太严   [ gōng rén zhī è wù tài yán ]

◆出典:菜根谭

◆意味:人を叱るときにはあまり厳しい態度で臨んではならない、との意。厳しすぎるとかえって相手やその周囲からの反発を招くし、効果もあまり期待できない。大声で怒鳴ったりするのは最悪。

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听天由命 / 天を聴き命に由(よ)る

◆中国語:听天由命   [ tīng tiān yóu mìng ]

◆出典:清(说唐)

◆意味:自然の変化に任せて自主的な努力をしないこと。天命に任せる。運に任せる。運否天賦。(これでは自分の未来は開けませんよね)

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