中国のことわざ【因禍為福】業績急上昇の立役者は総経理、ではなかった では誰が…

取引先の中国企業に支払いの督促をしたら、先方から「総経理が出張中のため支払いできない」との回答が。部下社員からの報告に、そんなにも多額ではないのにと訝りましたが…

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総経理は権力者

 中国企業では、社長にすべての権限を集中させ、何から何まで社長自身が決裁するパターンの会社が多く見られます。中国では「経理」は部門責任者や担当者の意味で、社長に相当する「総経理」は社内の「経理」を束ねる最高権力者のこと。総経理の指示なしには支払いも何もかもができないのです。「総経理説了算!」(社長が言ったらそれでことは決まる)と言われるほど。言わば「ツルの一声」。

 ご多分にもれず我が社もそれでやってきました。朝から伝票や社内文書を決裁し、社員からの伺いに指示を出し、一日それで仕事をした気になっていたのです。それでは、部門責任者がいる意味はありませんし、彼らが育つわけもありません。

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草木皆兵

 そんなさ中に急に狭心症を発病し総経理である私は入院を余儀なくされたのです。入院、手術を行い無事に快復し退院。しかし身体は大丈夫なはずなのにどうも心臓のあたりが気になります。時折「コトン」と音がしたように感じ、それが気になって気になってしかたがなかったのです。

 その都度、病院へ行きましたが、看護婦さんからは「お帰り、また帰ってきたの?」とひやかされ、主治医からは「異常は何もない」との説明が繰り返されるだけ。挙句の果てには「心臓シンドローム」だと冗談半分に言われてしまい、心配な時にはこれを飲めと精神安定剤を処方してくれました。ありもしないものにびくびくすることを意味する、「草木皆兵」という中国古典のことわざがあります。その気持ちはよくわかります。
出張などで飛行機に搭乗するときには離着陸時の気圧変化が心配で、出発前に精神安定剤を飲んでいました。そんな状態を克服するのにたっぷり1年もかかってしまったのです。人間なんて弱いものだとつくづく思いました。

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弄假成真

 入院し会社を一時的に離れたことでたっぷりと考える時間の余裕ができました。そこで、変化の速い現代において総経理が社員の皆を牽引し、部下社員達は「総経理説了算」とただ傍観している、もうそんな時代ではないということに気づきました。

入院する以前は、「誰よりも早く出勤し、誰よりも遅く退社する。土日に仕事を持ち帰ることも厭わず。自分がいないと会社は停滞してしまう」という考えでやっていましたが、退院後にそれを一変させました。

 会社には総務、営業、業務の三部門があり、そこにはそれぞれ十年選手の現地社員が責任者として配置されていました。仕事上の課題や問題点は管轄するいずれかの該当部門の責任者が責任をもって解決することを原則とした新しい方針を打ち出しました。

復帰後、そのことを何回も言葉を換え、幹部社員の皆に話しました。部下を信頼して任せること、同時に私が彼らのそばに寄り添うことで、彼らが安心して自身の部下をマネジメントができるよう仕向けて行きました。

 すると思いもよらない状況が現出してきたのです。「假を弄し真と成す」という中国のことわざは日本では「瓢箪から駒」に相当しますが、幹部社員達の考え方がみるみる積極的になってきました。そして責任者としての自覚がなされてきた様子がありありと感じられました。

毎月の業績においても“過去最高“を何回となく記録し、その度に彼らとともに喜びあうことになり、その後の業容急拡大の原動力となりました。

 「総経理説了算!」流の考え方では部門責任者がいる意味はありませんし、彼らが育つわけもありません。(尤も部下が育つことはある意味で脅威であるという古い考え方があったのかもしれませんが…)以来、私自分は身を軽くして「定時出社、定時退社、土日は休養」するようにしました。

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因禍為福

 中国現地でビジネスを展開する日系の会社では、部長や課長クラスの幹部職責は中国人社員が担っていることが多くありますが、彼らが単に与えられた権威だけで、部下社員を睥睨するだけでは何をかいわんやですが、彼らが自身の役割期待を理解し自覚したときに、業績は飛躍的に向上します。総経理(社長)としては、そういった現地幹部社員を養成することに注力しなければなりません。

私はずっと 「人の機微に触れるマネジメント」を心がけてきましたが、今回の件でそれを更に一歩進めることができたように感じました。

 それにしても人生は面白いものですね。入院は禍だと思っていましたが、実はその禍によって業績拡大という思ってもみなかった福がもたらされたのです。史記にも「因祸为福」という言葉があります。とすれば難儀なことが起きても悲観することは必要ないということです。長い人生の途上では様々なことが起きますが、そのすべてに何かの意味があり、結果としては無駄なことは何一つないと思います。

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成功のヒント 中国のことわざ・格言 

弄假成真 / 假を弄し真と成す

◆中国語:弄假成真   [ nòng jiǎ chéng zhēn ]

◆出典:宋•邵雍《弄笔吟》

◆本文:弄假像真终是假,将勤补拙总轮勤。

◆意味:思いもよらないことが実際に起こること。実際にはありえないことの例え。日本では「瓢箪から駒」。

◆由来:中国の唐時代に張果老という仙人がいました。いつも白いロバにまたがり一日数千里を行き、休むときは瓢箪の中にロバを収めていました。この話が日本に伝わり室町時代に仙人が瓢箪から白いロバを出している絵が描かれたのだそうです。

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草木皆兵 / 草木皆兵

◆中国語:草木皆兵   [ cǎo mù jiē bīng ]

◆出典:晋書(苻坚载记)

◆意味:敵を恐れるあまりに、草木までが敵兵に見える。転じてありもしないものにびくびくすることの例え。疑心暗鬼を生ず。

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因祸为福 / 禍に因り福とす

◆中国語:因祸为福   [ yīn huò wéi fú ]

◆日本語表記:因禍為福

◆出典:史記(管晏列传)

◆意味:悪いことが善いことに変化すること。

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