【千篇一律】という中国のことわざ 真っ先に総経理の頭をイノベーション

上海に赴任し、中国経験ゼロの私が住んだのが古北新区という日本人も結構多く住んでいたエリヤのとあるマンション。すぐ隣にその規模の大きなスーパーがありました。そのスーパーが…

梅を望んで渇きを止む

 平日は仕事に一杯いっぱいで、あれやこれや考える余裕もなく過ぎて行った赴任初期。勢い休みの日は部屋でゆっくりと平日の疲れを癒すことになります。部屋でくつろいでいても頭の中では、意味の分からない上海語や中国普通語が渦巻いていて、疲れが取れたような取れていないような…

それに一日部屋にこもっていたら、返って気が滅入ってしまいそうなります。そこで日曜日はとにかく外に出ようとばかり飛び出すのですが、いざ行けるところは限られています。

 住まいのマンションを出るとすぐ隣に大きなスーパーがありました。そのスーパーはフランス資本の小売り大手で中国には1995年に進出。右も左もわからない、言葉もわからない私でもそこへ行けば買い物ができます。何せスーパーですから言葉は必要ないのです。レジでの無言のやり取りですら人と接する喜びのようなものを感じていました。

 「梅を望んで渇きを止む」という魏の曹操の故事は、元々は一時的に欲望を抑えるという意味です。しかし、中国超初心者である当時の私には、眼前の苦しさの中にも少しの癒しと希望をもたらすという格言のように感じたものです。

千篇一律

 そのフランス系のスーパーが2019年ついに中国から完全撤退するというニュースに接しました。進出して24年の出来事です。その他にも小売りや飲食など日系有名どころでも、せっかく中国に進出したにもかかわらず、そう長くない間に撤退することになった、という例も少なくないようです。先行きの見通しやカントリーリスクなど、それぞれにそれなりの理由があるのでしょうが、寂しい話題です。

 また、中国からは撤退することには至らないまでも、業績の不振や伸び悩みの現状と苦闘している企業もあるようです。ある企業では中国ビジネスのイノベーションの必要性を認識し、上海にイノベーションセンターを開設し、打開策を策定することにしたそうです。

 今後の中国ビジネスをどうやっていくかを考えるためには、現地で首までどっぷりつかることが不可欠だと思います。その意味で日本本社内に中国ビジネスイノベーションセンターを置かなかったことは、それはそれでよかったのですが。

 ただ、上海にセンターを置くことは中国を知らない人が犯しそうな過ちではないかと思います。上海は発展する中国の中で最先端に位置するのは間違いありません。しかし、それはセンター(中心)ではないということでもあります。それに、「上海に置く」と聞いても誰も驚きません。社内でもインパクトがないのです。それが例えば「大連に中国イノベーションセンターを置く」と聞けば誰しも「おっ!」と思うに違いありません。すると同じ結論を出したとしてもその重みや効果はかなり違うはずです。

 極端な都会でもなく発展から取り残されたエリヤでもなく、市場のこなれ具合や発展度、民度などの中国での中心的位置にあるのが大連であるというのが私の考えです。中国古典には変わり映えのしないことを「千篇一律」と言いました。何でもかんでも上海や北京というのは中国音痴の本社の考えそうなことです。やはり、「あっ」と言わせることが必要ではないでしょうか。

舵 無きの舟の如し

 もうひとつ言えることは、自社の商品やスキームなどの技術的なイノベーションもさることながら、現場のマネジメントの携わる例えば総経理(社長)や中国事業に関わる経営上層部など、トップクラスの方々の頭の中をイノベーションすることを真っ先に考えるべきだと思います。

 中国古代の王陽明は「志 立たざるは舵無きの舟の如し」との言葉を残しています。志を持たないマネジャーは舵のない舟のようなものでどこにも欠くのかわからないというのです。
志とは目的意識や何のためにという強い意志とも言えます。今、中国ビジネスをマネジメントしている総経理クラスの方々の多くは日本本社から派遣された、いわばサラリーマン。何年かすれば本社に帰るんだというような気持ちでもし現地にいるとすれば、イノベーションなどとは対極にある薄い存在でしかありませんし、それでは現地での成功は望むべくもありません。

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成功のヒント 中国のことわざ・格言

望梅止渴 / 梅を望んで渇きを止む

◆中国語:望梅止渴   [ wàng méi zhǐ kě ]

◆出典:刘义庆(世说新语·假谲)

◆意味:酸っぱい梅を想像していると唾が出てきて一時的に喉の渇きをいやすこと。転じて、実現できない希望を空想して自分を慰めることの例え。

◆故事:魏の曹操が軍を率いて道に迷い兵が渇きを訴えた時、前方に大きな梅林があるぞと叫び元気づけました。すると兵の口中に唾が湧いてきて渇きをいやした、という故事。

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志不立,如无舵之舟 / 志 立たざるは舵無きの舟の如し

◆中国語:志不立,如无舵之舟   [ zhì bù lì, rú wú duò zhī zhōu ]

◆出典:王陽明(教条示龙场诸生·立志)

◆原文:志不立,如无舵之舟,无衔之马(志 立たざるは舵無きの舟、銜無きの馬の如し)

◆意味:志を持たないということは、舵のない舟やクツワのない馬のようなもので、進むべき方向が定まらない。

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千篇一律 / 千篇一律

◆中国語:千篇一律   [ qiān piān yī lǜ ]

◆出典:诗品

◆意味:千篇の文章が公式化されていて同じような調子であること。物事が一本調子で変化に乏しいこと。

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