中国にも【餅は餅屋】とのことわざ 社員教育にカネをかけすぎという経営音痴

大連の我が社に私が赴任した2000年当時の社員数は90名足らず。それが10年後には300名近くにまでなっていました。事業拡大に伴ううれしい悲鳴。しかし、その喜びは困った問題と背中合わせ…

事業が拡大して問題が…

 急速に組織が拡大していく中で、部長、課長などの中・上級の幹部はさておき、数名の小グループ責任者といった班長レベルの人材需要が高まりつつありました。中国古典の書経には「賢に任じて弐するなかれ」とあります。信頼して仕事を任せたくてもそうするには人材が枯渇状態になりつつあったのです。

 対応策として外部から人材を招聘することも考えましたが、専門性のある現場業務を経験しないでマネジメントをうまくやることは、我が社の性格からしてかなり無理があります。部下との共通点もなく、表面的なマネジメントにしかならないと考えました。

 また、社内におけるリーダーシップやマネジメントに関する教育をするノウハウも持ち合わせてはいませんでした。更にそれを日本本社に求めるのは最も当てにできないことであることは明白。

じゃあ、自力でやろうじゃないか。我々には無いノウハウを持っている人材育成会社に外注する方法を思い立ちました。

行家里手

 もちろん顧客に業務提供する現場の仕事は総経理(社長)一人ではどうしようもありません。顧客に相対する部門のリーダー格の人材に必要なスキルは、専門技能とリーダーシップでありマネジメント力です。我々現地会社にはないその方面の教育ノウハウを補って実行するために、その道の専門家に委託することにしました。「行家里手」という中国のことわざがありますが、いわゆる「餅は餅屋」です。

 そこで大連にある人材教育会社の総経理(社長)に相談しました。事前に、我が社の理念、ビジョン、現状の課題、研修の目的等々について徹底して話し込みました。その結果、すばらしい研修プランができました。その後、約二年間に8テーマ、延べ600人強にわたり教育を実施しました。

 副次的ではありますが、彼ら現地社員達にとっては外部講師による研修が好まれるようです。その分、効果も期待できます。それにいつもの社内研修とアプローチが全く異なり、たいへん新鮮感を感じたようです。加えて、ちょっとした仕掛けをしました。それは、研修の受講者を選抜制にしたことです。選ばれて研修に参加するという自尊心を醸し出し、それによる積極姿勢を呼び覚ましたのです。

用兵攻戦の本は

 中国の荀子はその昔「用兵攻戦の本は、民を一にするに在り」と、戦いに勝利するには心を一つにすることの大切さを教えています。この研修でもそれを訴えました。ちょうど当時、中国の全土で拡大中であった高速鉄道(いわゆる“高鉄”)に喩えてこう問いかけたのです。「高铁は何故速く走れるのか」と。

 従来の機関車が多くの客車を引っ張るという方式ではなく、高铁はそれぞれの車両にモーターがついている。運転手がノッチをコントロールするとそれぞれのモーターは一斉に回転を始める。各モーター(リーダー)が運転手(総経理)の指揮のもと、呼吸を合わせて全力を尽くすからものすごいスピードで列車は走れる。

 この研修はごく普通の社員達しかいなかった我が社の中間層をレベルアップし、もって社業の発展に大きく寄与する所となりました。

終身の計

 「終身の計は人を樹うるに如くは莫し」とは中国古典にある言葉。人を育てるというのは一生をかけてやる大仕事だ、ということでしょうね。とにかく人材を育成するには相当の時間がかかります。人材が足りなくなってから始めたのでは間に合わないのです。業績のよくないときであっても人材教育にはそれなりの投資が必要といえます。

それがわかっていない経営音痴が東方の島国にいました。監査と称してわざわざやってきて「この程度の利益で教育にカネをかけすぎだ」と。本当に残念なことです。

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成功のヒント 中国のことわざ・格言

用兵攻战之本,在乎一民 / 用兵攻戦の本は、民を一にするに在り

◆中国語:用兵攻战之本,在乎一民   [ yòng bīng gōng zhàn zhī běn, zài hū yī mín ]

◆出典:荀子

◆意味:用兵の基本は自国の民の心を一つにまとめることにある、との意。そのためには民からの支持を得て、心をとらえる必要があるということでしょう。

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任贤勿贰 / 賢に任じて弐するなかれ

◆中国語:任贤勿贰   [ rèn xián wù èr ]

◆出典:尚書(書経)

◆原文:儆戒无虞,罔失法度。罔游于逸,罔淫于乐。 任贤勿贰,去邪勿疑。疑谋勿成,百志惟熙。:虞(はか)るなきに儆戒(けいかい)し、法度を失うなく、逸に遊ぶなく、楽に淫するなく、賢に任じて弐するなく、邪を去って疑うなく、疑謀は成すなかれ。

◆意味:優秀な人材を登用し、信頼して仕事を任せるのがよい。

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行家里手 / 行家里手

◆中国語:行家里手    [ háng jiā lǐ shǒu ]

◆出典:清代・吴趼人(二十年目睹之怪现状)

◆意味:その道に秀でた玄人、達人のこと。「行家」、「里手」ともに専門家、玄人の意味。餅は餅屋。

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终身之计莫如树人 / 終身の計は人を樹(う)うるに如(し)くは莫(な)し

◆中国語:终身之计莫如树人   [ zhōng shēn zhī jì mò rú shù rén ]

◆出典:管子

◆原文:一年之计莫如树毂,十年之计莫如树木,终身之计莫如树人(一年の計は穀を樹うるに如くは莫く、十年の計は木を樹うるに如くは莫く、終身の計は人を樹うるに如くは莫し)

◆意味:一年の計画なら穀物を植えて育てるのがよい、十年の計画であれば木を植えて育てるのがよい、一生の計画であれば人を育てる以上のことはない。人を育てると一生の実りが期待できる。

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